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〜安全な水環境と住まいを自らの力でつくっていけるように

バングラデシュ
(公開日:2023.12.04)

【ロヒンギャ難民支援】生活環境改善事業の開始
〜安全な水環境と住まいを自らの力でつくっていけるように

 
2017年8月25日以降、多くのロヒンギャ難民がバングラデシュに避難してきました。
6年が経った2023年10月末時点でも、難民キャンプには96万7,842人 1が暮らしており、ミャンマーへの帰還の目途は立っていません。 

 
バック1つの所持品を抱えて移動する難民の様子

ロヒンギャ難民は、就労やキャンプ外への移動の自由が認められておらず、教育や医療など生きるために必要な基本的なサービスは、国際社会からの支援に頼らざるを得ない状況です。

また、耐久性の低い住居(シェルター)で生活しているため、大規模な火災やサイクロンなどの自然災害の被害を受けやすいです。ロヒンギャ難民が自力で生活を営んでくことは難しく、継続的な支援を必要とする中、年々、国際社会からの関心は薄れ、支援の規模は縮小傾向にあります。

セーブ・ザ・チルドレンは、2017年以降バングラデシュでロヒンギャ難民への支援を継続的に実施しています。2023年9月1日より、生活に欠かせない水・衛生支援とシェルター支援事業を開始しました。

この活動の特徴は、長期化する避難生活を念頭に置き、ロヒンギャ難民と地域住民が主体となって生活環境の改善に取り組む体制づくりと活動への参加促進に注力している点です。

加えて、このプロジェクトは2022年以降実施している事業の後続事業として位置づけられており、これまでの事業からの知見を活かして、引き続きロヒンギャ難民と地域住民の能力強化を中心に据えています。
(左)シェルターの設置・修繕に関する能力強化研修に参加するロヒンギャ難民 
(右) 能力強化研修後にシェルターの修繕を行うロヒンギャ難民


水・衛生支援
キャンプと地域住民が暮らす周辺地域では、水・衛生施設の数の不足、故障などを理由に、現在も3分の1の世帯が飲食や生活のために必要十分な量の水が得られず、水の節約や遠くまでの水汲みを余儀なくされています。

また、男女共用の水・衛生施設やアクセスの悪さなどは、特に女性や障害のある人たちにとって大きな課題です。さらに、キャンプ内では下痢などを引き起こす感染症のまん延が深刻で、正しい衛生習慣の促進も求められています。

そこで、キャンプにおける給水システムや深井戸、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設の修繕・維持管理を行います。

そして、ロヒンギャ難民とキャンプに隣接する地域の学校の生徒を対象に、手洗いやごみの管理など基本的な衛生習慣を学ぶ衛生啓発セッションを実施し、思春期の女子を対象とした月経衛生管理セッションも行います。
 

ロヒンギャ難民および地域住民自らがトイレの汲み取りを行う様子 

これらの活動は、ロヒンギャ難民および地域住民で構成されている「水・衛生委員会」や「衛生促進ボランティア」が主体となって活動を運営します。

2022年9月から2023年9月の成果として、能力強化を通じて水・衛生委員会と衛生促進ボランティアが主体的に活動を実施する体制の素地が形成されつつあります。

水・衛生委員会と衛生促進ボランティアが、水・衛生施設の修繕・維持管理と地域の衛生啓発の活動に主体的かつ自発的に関わっていくことを期待しています。 

(左) 給水ポイントで水汲み時間のルールを紹介するセーブ・ザ・チルドレンのスタッフ
(右) 水・衛生委員会と衛生促進ボランティア中心となって開催した清掃キャンペーン


シェルター支援
キャンプでは、シェルター設置に使用できる材料が制限されており、老朽化や頻発する火災による被害から、シェルター設置や修繕の必要性が継続的に発生しています。

しかし、シェルターに関する知識や技術が不足しており、特に女性は能力強化の機会がありません。また、女性は安全面から遠い場所まで外出することが家族から許可されづらく、特に女性の世帯主は社会とのつながりが持ちにくく、自身で生計を立てることが非常に困難です。加えて、キャンプは自然災害の多い地域にあるため、災害への備えも求められています。

そこで、特にロヒンギャ難民の女性を対象にシェルターの設置・修繕に関する能力強化を行います。従来、これらの作業は、男性の仕事と考えられてきましたが、2022年9月から2023年9月の活動では、女性の働きについて男性や地域から前向きに受容されている様子が確認されました。

この事業でも、脆弱な立場に置かれやすい女性への能力強化を引き続き実施します。キャンプにおいて女性が能力を発揮できる機会を促進し、特に女性が世帯主である世帯の生計向上が期待できます。  
          (左)修繕前のシェルター                                           (右)修繕後のシェルター

さらに、近年増加傾向にある自然災害への対策として、気候変動や災害リスク軽減に関するセッションを開催し、ロヒンギャ難民自身が災害に強いシェルターの設置・補強方法を考え、管理する技術を習得できるよう支援します。

セッション後は、気候変動に適応させたシェルターの修繕を実際に行い、ロヒンギャ難民自らが安心・安全な居住環境を維持できるような取り組みを促進します。



 修繕されたシェルターの前で笑顔の家族 

これらの活動を通して、ロヒンギャ難民が生活に必要な基本的なサービスを受けられるとともに、地域住民とともに可能な限り自らの力で生活環境を改善していけることを目指していきます。

本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォーム、株式会社東京ユニフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 松田友美)

UNHCR, Joint Government ofBangladesh – UNHCR Population Factsheet

 

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