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バングラデシュ
(公開日:2021.05.20)

【バングラデシュ】 子どもの保護システム強化事業を開始しました

 
2021年3月31日より、バングラデシュ・コックスバザール県おける子どもの保護システム強化事業を開始しましたので、ご紹介します。子どもの保護とは、暴力や虐待、搾取から子どもたちを守ったり、それらの被害を受けた子どもたちを支援する活動です。


コックスバザール県の難民キャンプで子どもたちの様子を確認する
セーブ・ザ・チルドレンのケースワーカーのタニア(左)
 

バングラデシュの人口は日本の約1.3倍の1億6,305万人であり 、そのうち約40%が18歳未満の子どもです。バングラデシュは1990年に子どもの権利条約に批准し、2013年には国内法となる「子ども法(Children’s Act 2013)」を制定しました。それにもかかわらず、1歳から14歳の子どもたちのうち、過去1ヶ月に、養育者による身体的・精神的暴力を受けた子どもの割合は全体の88.8%にのぼるほか*1、20歳から24歳の女性のうち初婚年齢が18歳未満である女性が51.4%である*2など、子どもたちは虐待や児童婚などのリスクに晒されています。

特に、セーブ・ザ・チルドレンが事業を実施しているコックスバザール県は、隣国ミャンマーから避難してくる人を多く受け入れており、難民キャンプだけでなく、ホストコミュニティにおいても子ども虐待や搾取に関わる問題が存在しています。


バングラデシュの地図、赤い部分がコックスバザール県

例えば、ホストコミュニティにおいて実施した調査によれば、児童労働に従事している子どもや、主たる養育者と離ればなれになった子どもなど、さまざまなリスクに晒された子どもがいる世帯は16%にのぼるとされています*3。子どもたちをさまざまな暴力から守るためには、難民キャンプ内での支援のみならず、ホストコミュニティへの支援も強化する必要があります。

虐待や児童婚、児童労働といった子どもの安全を脅かす課題は多岐にわたり、課題同士が関連していることが多いほか、一人の子どもが複数の課題やリスクに直面していることもあります。そのため、特定の課題への対応だけではなく、包括的に支援する体制、すなわち子どもの保護システムの構築が必要となっています。

こうした状況を受けて、セーブ・ザ・チルドレンは、バングラデシュの社会福祉局とともにコックスバザール県における子どもの保護システムの実態を調査しました。その結果、支援を必要とする子どもが見つかった場合の対応方法が確立していないこと、また、子どもの保護に関わる人員の拡充や能力強化の必要性が高いことが判明しました。

これらの課題に取り組むため、本事業では、主に3つの柱で活動を実施します。
【1:地域の子どもの保護システムの強化】
地域で子ども支援に中心的に取り組む住民が、周りの子どもや養育者に対し、子ども虐待や搾取に関わる問題について伝える活動を企画・実施できるようサポートします。また、各地域で支援が必要な子どもを特定し、支援機関につなげる役割を果たす「子どもの保護委員会」の形成や、委員の能力強化を行います。

【2:行政の子どもの保護システムの強化】
行政職員が子どもを支援する際の手順を確立します。また、支援を実施する行政職員の能力強化を行うとともに、教育や保健、福祉といったさまざまな分野の職員が協働して子どもたちを支援する仕組みを整えます。

【3:政策提言活動】
実施した活動から得た学び・教訓を取りまとめ、本事業の活動が他地域にも展開されるモデルとして確立するよう、政策提言を行います。

本事業の実施にあたっては、社会福祉局や現地のNGOと連携するとともに、関連機関と緊密な調整を行います。また、子どもたちをはじめとする地域住民の意見を取り入れながら、一つひとつの活動を着実に実施していきます。

本事業は皆様からのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

(報告:海外事業部 渡邊紗世)

*1 Bangladesh Bureau of Statistics, UNICEF, “Multiple Indicator Cluster Survey 2019”, p.18
*2 Bangladesh Bureau of Statistics, UNICEF, “Multiple Indicator Cluster Survey 2019”, p.18
*3 ISCG, Multi-Sector Needs Assessment - Host Community, Ukhia and Teknaf Upazilas, Cox’s Bazar, Bangladesh, April 2019, p.7

 

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