バングラデシュ(公開日:2024.10.22)
【ロヒンギャ難民支援】生活環境改善事業の完了報告
〜安全な水と衛生、住まいを自らの力でつくっていけるように
2023年9月1日から2024年6月30日まで、バングラデシュ・コックスバザール県の4ヶ所のロヒンギャ難民キャンプにて、水・衛生支援とシェルター(住居)支援を実施しました。この事業は、それぞれの活動で難民がホストコミュニティの住民とも協力しながら、自身の能力を活かして生活環境の改善を目指したものです。10ヶ月間にわたり実施した活動結果を報告します。(事業の背景や活動の詳細は、事業開始時の記事をご覧ください。)
<水・衛生支援>
キャンプにある給水施設や深井戸、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設は、2017年の大規模な難民流入時またはそれ以前に設置されたものが多いため、老朽化と度重なる故障が課題になっています。
そこで、これらの施設の機能が充分に利用可能な状態にするため、難民の人たちとホストコミュニティが主体となって、給水施設3ヶ所、深井戸135ヶ所、トイレ900ヶ所、水浴び場180ヶ所を修繕し、難民の女性が中心となって、スロープや手すりなど水・衛生施設の周辺環境の整備も行いました。トイレについては清潔な状態で継続して利用ができるよう2,081ヶ所のトイレの汲み取りを行い、施設の維持管理にも努めました。
これらの施設の管理および水質の維持を難民の人たちとホストコミュニティが主体的に行えるよう、双方から選ばれた水・衛生委員会のメンバー290人に能力強化のためのリフレッシャー研修を実施し、定期的な定例会合の運営など活動維持のフォローアップも実施しました。
また、地域の衛生環境の改善を主な役割とする衛生促進ボランティアとともに、ごみの分別や収集、2週間に1度キャンプの清掃を行いました。また、堆肥に利用できるごみとそれ以外のごみを区別し保管できるよう、ごみの分別小屋を1ヶ所設置し、適切なごみの管理を通じた資源の有効利用の促進にも貢献しました。
さらに、地域全体で衛生環境を維持するために、難民1万4,972人とホストコミュニティの学校の6年生から8年生の生徒1,010人を対象に、衛生促進ボランティアが手洗いの方法やタイミング、世帯でのごみの管理方法などの基本的な衛生習慣を学ぶ衛生啓発セッションを行いました。
このほか、思春期の女子300人を対象に月経衛生管理セッションも実施しました。セッションでは、月経衛生管理に関する正しい知識の共有や、自宅や周辺地域で入手可能な材料で作成できる布ナプキンおよび再利用可能な生理用パッドの作成方法を共有し、実際に作成しました。
<シェルター(住居)支援>
継続的に発生するシェルターの課題には難民自身で対応できることが望ましいですが、これまで難民の間ではシェルターの作業は通常男性の仕事であると考えられ、難民女性の能力強化および就労の機会が乏しい状況でした。事業では、難民の女性が自らシェルターの設置・修繕が行えるように、女性40人を対象に能力強化研修を行いました。さらに、上記の女性40人に加えて20人の男性に対して、気候変動や災害リスク軽減に関する啓発セッションも行いました。
研修・啓発セッションの参加者は、シェルターの修繕に必要な材料である竹の扱い方、ロープの結び方、これまで設置してきたシェルターをモデルに、災害時のシナリオの作成や実践的な災害リスク軽減策などの検討を行いました。
また、研修・啓発セッションを修了した難民女性・男性によって、災害に強く安全に過ごせるように97ヶ所のシェルターが修繕されました。
活動を通じて女性が学び働く姿を目の当たりにし、女性も効果的にシェルターの修繕作業ができることが難民男性からも認知され、社会参画を果たす女性に対して尊敬の気持ちを示す難民男性も見られました。また、この活動を通じて、研修に参加したロヒンギャ難民の女性は、未来をよりよく生きるために必要なスキルを身に着け、収入を得ることができるようになりました。
能力強化研修に参加したカリマさん(37歳)は、次のように話します。
「収入のない私たちは、食料配布が十分ではないので家の周りの野菜を収穫したり、近所の人と食料を融通し合ったりして、子どもたちに食べさせるだけでやっとです。私たちの社会では、女性が外で働くことを否定的に見られます。しかし、(夫は心臓病を患っており、長男は障害があるため)家族の中で私以外働ける人が誰もいないので、仕事を探していました。」
カリマさんの娘(6歳、女子)は、働くお母さんについて次のように話します。
「毎日お母さんは仕事に出かけています。どこに行くのかと聞くと、『仕事に行ってくる』と言います。母が帰ってくると、私は母に駆け寄ってギュッと抱きしめています。それがすごくうれしいです。」
この事業を通して、多くのロヒンギャ難民に、安全な水を充分に供給し、水・衛生施設のインフラ環境を改善しました。さらに、安心・安全な住居の提供とともに、難民の女性の社会参画や生計向上にも寄与することができました。
ロヒンギャ難民は年々過酷な避難生活を余儀なくされ、暴力や先行きの見えない不安にさらされています。ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還の目途は立たず、持続的な解決への道筋が見えない中で、難民キャンプでは安心・安全な住居や充分な栄養のある食事など、生存に必要な基本的なサービスが限られている状況です。
また、ミャンマーでの情勢悪化により、バングラデシュとの国境には5 万人近くのロヒンギャの人たちが押し寄せているとの情報もあります。今後も継続した支援が必要な一方で、ロヒンギャ難民に関する日本での報道や国際社会の関心は薄れており、支援も年々縮小しています。
自由な移動や就労もできないロヒンギャ難民は、国際社会からの支援がなければ生きていくことができません。そのため、セーブ・ザ・チルドレンは、ロヒンギャ難民の命と生活を守るために、ロヒンギャ難民とホストコミュニティの地域住民が中心となって、限られた資源の中でもキャンプ内の水・衛生施設やシェルターを管理・維持し、生活環境を継続して改善していけるよう、引き続き支援を行っていきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
(海外事業部 松田友美)
<水・衛生支援>
キャンプにある給水施設や深井戸、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設は、2017年の大規模な難民流入時またはそれ以前に設置されたものが多いため、老朽化と度重なる故障が課題になっています。
そこで、これらの施設の機能が充分に利用可能な状態にするため、難民の人たちとホストコミュニティが主体となって、給水施設3ヶ所、深井戸135ヶ所、トイレ900ヶ所、水浴び場180ヶ所を修繕し、難民の女性が中心となって、スロープや手すりなど水・衛生施設の周辺環境の整備も行いました。トイレについては清潔な状態で継続して利用ができるよう2,081ヶ所のトイレの汲み取りを行い、施設の維持管理にも努めました。
これらの施設の管理および水質の維持を難民の人たちとホストコミュニティが主体的に行えるよう、双方から選ばれた水・衛生委員会のメンバー290人に能力強化のためのリフレッシャー研修を実施し、定期的な定例会合の運営など活動維持のフォローアップも実施しました。
また、地域の衛生環境の改善を主な役割とする衛生促進ボランティアとともに、ごみの分別や収集、2週間に1度キャンプの清掃を行いました。また、堆肥に利用できるごみとそれ以外のごみを区別し保管できるよう、ごみの分別小屋を1ヶ所設置し、適切なごみの管理を通じた資源の有効利用の促進にも貢献しました。
さらに、地域全体で衛生環境を維持するために、難民1万4,972人とホストコミュニティの学校の6年生から8年生の生徒1,010人を対象に、衛生促進ボランティアが手洗いの方法やタイミング、世帯でのごみの管理方法などの基本的な衛生習慣を学ぶ衛生啓発セッションを行いました。
このほか、思春期の女子300人を対象に月経衛生管理セッションも実施しました。セッションでは、月経衛生管理に関する正しい知識の共有や、自宅や周辺地域で入手可能な材料で作成できる布ナプキンおよび再利用可能な生理用パッドの作成方法を共有し、実際に作成しました。
<シェルター(住居)支援>
継続的に発生するシェルターの課題には難民自身で対応できることが望ましいですが、これまで難民の間ではシェルターの作業は通常男性の仕事であると考えられ、難民女性の能力強化および就労の機会が乏しい状況でした。事業では、難民の女性が自らシェルターの設置・修繕が行えるように、女性40人を対象に能力強化研修を行いました。さらに、上記の女性40人に加えて20人の男性に対して、気候変動や災害リスク軽減に関する啓発セッションも行いました。
研修・啓発セッションの参加者は、シェルターの修繕に必要な材料である竹の扱い方、ロープの結び方、これまで設置してきたシェルターをモデルに、災害時のシナリオの作成や実践的な災害リスク軽減策などの検討を行いました。
また、研修・啓発セッションを修了した難民女性・男性によって、災害に強く安全に過ごせるように97ヶ所のシェルターが修繕されました。
活動を通じて女性が学び働く姿を目の当たりにし、女性も効果的にシェルターの修繕作業ができることが難民男性からも認知され、社会参画を果たす女性に対して尊敬の気持ちを示す難民男性も見られました。また、この活動を通じて、研修に参加したロヒンギャ難民の女性は、未来をよりよく生きるために必要なスキルを身に着け、収入を得ることができるようになりました。
能力強化研修に参加したカリマさん(37歳)は、次のように話します。
「収入のない私たちは、食料配布が十分ではないので家の周りの野菜を収穫したり、近所の人と食料を融通し合ったりして、子どもたちに食べさせるだけでやっとです。私たちの社会では、女性が外で働くことを否定的に見られます。しかし、(夫は心臓病を患っており、長男は障害があるため)家族の中で私以外働ける人が誰もいないので、仕事を探していました。」
カリマさんの娘(6歳、女子)は、働くお母さんについて次のように話します。
「毎日お母さんは仕事に出かけています。どこに行くのかと聞くと、『仕事に行ってくる』と言います。母が帰ってくると、私は母に駆け寄ってギュッと抱きしめています。それがすごくうれしいです。」
この事業を通して、多くのロヒンギャ難民に、安全な水を充分に供給し、水・衛生施設のインフラ環境を改善しました。さらに、安心・安全な住居の提供とともに、難民の女性の社会参画や生計向上にも寄与することができました。
ロヒンギャ難民は年々過酷な避難生活を余儀なくされ、暴力や先行きの見えない不安にさらされています。ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還の目途は立たず、持続的な解決への道筋が見えない中で、難民キャンプでは安心・安全な住居や充分な栄養のある食事など、生存に必要な基本的なサービスが限られている状況です。
また、ミャンマーでの情勢悪化により、バングラデシュとの国境には5 万人近くのロヒンギャの人たちが押し寄せているとの情報もあります。今後も継続した支援が必要な一方で、ロヒンギャ難民に関する日本での報道や国際社会の関心は薄れており、支援も年々縮小しています。
自由な移動や就労もできないロヒンギャ難民は、国際社会からの支援がなければ生きていくことができません。そのため、セーブ・ザ・チルドレンは、ロヒンギャ難民の命と生活を守るために、ロヒンギャ難民とホストコミュニティの地域住民が中心となって、限られた資源の中でもキャンプ内の水・衛生施設やシェルターを管理・維持し、生活環境を継続して改善していけるよう、引き続き支援を行っていきます。
本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
(海外事業部 松田友美)