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〜持続可能な水・衛生と居住環境の改善を目指して

バングラデシュ
(公開日:2025.01.20)

【ロヒンギャ難民支援】生活環境改善事業の開始
〜持続可能な水・衛生と居住環境の改善を目指して

 
2017年8月25日以降、多くのロヒンギャ難民がバングラデシュに避難してきました。7年が経った2024年11月末時点でも、難民キャンプには100万6,670人1が暮らしており、その半数以上が子どもです。隣国ミャンマーでの紛争の激化にともない、最近ではバングラデシュにさらに5万人の難民が避難して来ているとの報道もあります2

ロヒンギャ難民は、バングラデシュにおいて就労やキャンプ外への移動の自由が認められておらず、教育や医療など生きるために必要な基本的サービスは、国際社会からの支援に頼らざるを得ない状況です。ロヒンギャ難民が自力で生活を営んでくことは難しく、継続的な支援を必要とする中で、国際社会からの関心は年々薄れており、支援の規模は縮小傾向にあります。

セーブ・ザ・チルドレンは、2017年以降バングラデシュでロヒンギャ難民への支援を継続しており、2024年10月11日より、生活に欠かせない水・衛生支援とシェルター(簡易住居)支援の事業を開始しました。



セーブ・ザ・チルドレンが支援した給水施設で水くみをする難民の様子 

この事業の特徴は、長期化する避難生活を念頭に置き、ロヒンギャ難民とキャンプ周辺に暮らすホストコミュニティの地域住民が主体となって生活環境の改善に取り組めるよう支援している点です。また、2022年以降実施している事業の後続事業として位置づけられ、3年目を迎えます。これまでの事業の実績、知見を活かして、引き続きロヒンギャ難民と地域住民の能力強化と知識やスキルの定着を中心に据えています。


シェルターの修繕活動に従事する難民の女性 


水・衛生支援
キャンプに暮らすロヒンギャ難民の4分の1の世帯は、住居、庭、住居周辺に手洗い場が存在せず3 、未だ遠くまでの水くみや季節的な水不足による水の節約などを余儀なくされています。

また、トイレや水浴び場などの衛生施設は、男女共用でアクセスが悪く、特に女性や障害者にとって大きな課題です。さらに、難民キャンプにある3分の1のごみは適切に処理されていないとの報告もあります4 。過密状態の難民キャンプでは、自然災害や不衛生な環境が要因となり、下痢などを引き起こす感染症のまん延が懸念され、コミュニティ参加型の正しい衛生習慣の促進も求められています。

     
(修繕前)水・衛生施設周辺の階段     (修繕後)水・衛生施設周辺の階段

そこでこの事業では、キャンプにおける給水システム、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設の修繕・維持管理を行います。さらに、ロヒンギャ難民とホストコミュニティの学校の中高生を対象に、手洗いやごみの管理など基本的な衛生習慣を学ぶ衛生啓発セッションや思春期の女子を対象とした月経衛生管理セッションを行います。





 (上) 月経衛生管理セッションで再利用可能な生理用ナプキンを作成する様子
       (下)ロヒンギャ難民に衛生啓発セッションを行う様子


事業では、近隣のホストコミュニティの深井戸およびトイレの修繕活動も実施します。ホストコミュニティにおいても、42%の世帯しか安全な水にアクセスできず、23%の世帯が住居などに手洗い場がありません5 。ロヒンギャ難民との摩擦を予防し共存を促進するためにも、ホストコミュニティへの安全で十分な水へのアクセスの確保を支援します。


    
         (左)ロヒンギャ難民と地域住民が給水施設を修繕する様子 
(右)難民の女性がトイレの周辺環境を修繕する様子 


これらの活動は、ロヒンギャ難民と地域住民で構成されている「水・衛生委員会」や「衛生促進ボランティア」が主体となって活動を運営します。これまでの事業の成果として、能力強化を通じて水・衛生委員会と衛生促進ボランティアが主体的に活動を実施する体制の素地が形成されつつあります。

活動を通して、水・衛生委員会と衛生促進ボランティアが、水・衛生施設の修繕・維持管理と地域の衛生啓発の活動に主体的かつ自発的に関わっていくことが期待されます。

   
(右)水・衛生委員会の定期会議の様子                                        
(左)ロヒンギャ難民と衛生促進ボランティアが清掃をしている様子 


シェルター支援
キャンプでは、シェルターの設置や修繕の必要性が継続的に発生しています。シェルターに使える材料は、ビニールや竹といった耐久性の低い材料のみに制限されており、大規模な火災や自然災害で深刻な被害を頻繁に受けています。2024年12月24日にも火災が発生し、少なくとも子ども1人が亡くなり、約3,500人が住まいを失いました6 。キャンプでは72%の世帯がシェルターに何らかの問題を抱えているとされ、難民自身がシェルターの問題に迅速に対処し、安全な居住環境を確保できることが求められています。


 
(左)修繕前のシェルター                    (右)修繕後のシェルター 


また、難民の女性は能力強化の機会が少なく、安全面から遠い場所への外出について家族や地域住民から否定的に見られる傾向にあります。このような環境下では社会とのつながりを持ちにくく、特に女性の世帯主は生計を立てることが非常に困難です。セーブ・ザ・チルドレンは、特に脆弱な立場に置かれやすい難民の女性を対象に、シェルターの設置・修繕に関する能力強化研修を実施し、実践の場として難民によるシェルターの修繕活動を支援してきました。また、修繕作業を実施することで、難民女性がいくらか収入を得ることにもつながりました。

この事業では、これまでの研修で提供した知識・スキルの定着を図るため、難民女性のリードのもと、引き続き災害や気候変動に適応したシェルターの修繕を行います。さらに、世帯生計を一層向上させることを目的に、シェルター設置・修繕の際に発生するコストの削減方法や生計管理を目的とした収支管理などに関する研修も実施します。

これらの活動を通じて、ロヒンギャ難民自らが安心・安全な居住環境を維持できるようになるとともに、女性の地域参加の促進を目指します。さらに、女性が能力を発揮できる機会を獲得し、特に女性が世帯主の世帯の更なる生計向上が期待されます。

 


            (上)シェルターに関する能力強化研修に参加する難民の男性の様子       (下)シェルター修繕に必要な材料を作製する難民の女性の様子

これらの水・衛生およびシェルターの活動支援を通じて、ロヒンギャ難民が生活に必要な基本的なサービスを受けられるとともに、地域住民とともに可能な限り自らの力で生活環境を改善していけることを目指していきます。

本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォーム、株式会社東京ユニフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 松田友美)

1 UNHCR, Joint Government ofBangladesh – UNHCR Population Factsheet, November30, 2024
2 The Daily Star, Newlyarrived Rohingya refugees in Cox's Bazar face dire conditions”, September 3, 2024
ISCG Bangladesh, JointMulti-Sector Needs Assessments (J-MSNA) Factsheet - Refugee Camp-level findings, p.5
4 ISCG Bangladesh, JointResponse Plan2024, p.37
ISCG Bangladesh, Joint Multi-Sector NeedsAssessments (J-MSNA) Factsheet - Host Community findings, p.4
6 Voice of America, Callfor safety in Bangladesh Rohingya refugee camps after fatal fire”, December 25, 2024


 

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