企業連携(公開日:2019.05.22)
セミナー「企業の社会的活動が生み出す価値〜SDGs時代を一歩先に進むための新たな視点」を開催
5月13日、セーブ・ザ・チルドレンは、企業を対象としたセミナー「企業の社会的活動が生み出す価値~SDGs時代を一歩先に進むための新たな視点」を、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンと共同で開催しました。
■企業の社会的活動がもたらす価値・効果を可視化するには
昨今、「持続可能な開発目標(SDGs)」やESG投資(環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資)に関する取り組み事例が増加しています。今回のセミナーでは、企業の社会的活動が実際に企業の経営および社会にもたらす価値・効果を可視化するための最新情報を共有するとともに、企業が社会課題を解決し、子どもたちの権利を守っていくことでどのような成果をもたらすことができるのか、約150人の参加者とともに考える機会となりました。
セミナーでは、冒頭、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの専務理事・事務局⻑千賀邦夫より、SDGs時代における企業とNGOとの連携の重要性について事例を交えて紹介しました。セーブ・ザ・チルドレンは、国連グローバル・コンパクト、ユニセフとともに、2012年に「⼦どもの権利とビジネス原則(CRBP)」を発表しました。以来、セーブ・ザ・チルドレンでは、ビジネスにおける子どもの権利の尊重と推進に取り組んできており、今後もこれをベースに新たな価値創造を企業とともに行っていきたいと話しました。
■自社の活動を4つの観点で見直し:「株主価値向上」から「社会的価値向上」へ
ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの北沢真紀夫氏は、「株主価値向上(TSR:Total Shareholders Return)から社会的価値向上(TSI:Total Societal Impact)へ」と題して講演を行いました。
TSIとは、製品・サービス、オペレーション、中核的な組織能力やさまざまな活動を通じ、企業が社会やコミュニティ、環境に与える影響をすべて統合した概念で、北沢氏は以下のような要素が含まれると説明しました。
1) 企業の製品やサービスが社会に与える本質的なベネフィット
2) 倫理的ビジネスルールの厳格な順守など、
経営の実践において企業が国や地域社会に与える直接・間接の影響
3) 調達やその企業のサプライチェーンに関連するサービスにより生じる仕事
4) 環境への影響
また、TSIとTSRは両立しがたいものではなく、TSIの観点で優れている会社はTSRの面でも高いパフォーマンスを得られる例が多いこと、ほとんどの企業は本業の製品・サービスにより社会にプラスの価値をもたらしているが、経営にTSIを取り入れてさらに大きな社会的価値を生んでいる企業があることを解説し、医薬品企業や消費財企業の事例を紹介しました。
同社ではTSIの測定において、現状、ESG(環境・社会・統治)評価機関の評価データを活用しています。ただ、難しく考える必要はなく、自社の活動を例えば上記の4つの観点で見直し、継続的にビジネスや組織体制を整えていくことが社会的価値の向上に繋がるとの指摘もありました。
■協働を促進するインパクト評価:インドネシア交通安全事業のSROIを算出
続いて、損害保険ジャパン日本興亜株式会社CSR室長の越川志穂氏が「SOMPOホールディングスグループの社会的価値創造の取組み―インドネシア交通安全事業の例を通して―」と題して講演を行いました。
同社は、2014年4月〜2018年3月にかけて、セーブ・ザ・チルドレンとともに実施したインドネシアでの交通安全事業について、社会的投資収益率(SROI:Social Return on Investment)を用いて社会的価値のインパクト評価を実施。SROIとは、総便益(プロジェクトがもたらす社会的価値)/総費用(プロジェクトに投入した費用)によって社会的価値を貨幣価値に換算するものです。インドネシアの事業では4つの成果目標に基づいて、測定する指標を定め、算出した結果、費用に対して約3倍の価値を創出しているとの結果になったことが紹介されました。社会貢献活動の効果測定は難しく、事例も少ないものの、プロジェクトのパートナーの協力や専門家の知見があってこそ成し遂げられ、また本プロジェクトを通じて、定量化には以下の3つの効果があることを実感することができたとのことです。
1) プロジェクトの継続的な改善
2) 数値という共通言語によりパートナーとの協働が促進され、より大きな
社会的価値を生み出せる
3) ステークホルダーへの説明責任
また、さまざまなステークホルダーとの連携の重要性が説かれ、企業の目線だけでは課題解決のための知見や情報が少ない中、各分野のプロフェッショナルとの連携で得られるものも多く、社会課題の解決のためにはNGOとの連携が欠かせないこと、グローバルな意見交換やルール作りの場に積極的に参加していくことの重要性も強調されました。
■機関投資家の観点:CSRからESGへの大きな潮流の変化
後半は、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社スチュワードシップ責任推進部長の小野塚惠美氏による機関投資家の観点からの発表がありました。
現在の投資環境、日本における潮流に大きな変化が起きており、これまでの「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」時代では企業の倫理的観点やガバナンスが前提で、社会的責任の当事者が企業のみであったのに対し、ESG時代においては「このままでは持続不可能」という危機感が前提となり、社会的責任の当事者に機関投資家も加わっていることの説明がありました。同社も資産運用のための基礎分析にESGの視点を取り入れていることや、社内で持続可能なファイナンスの考え方が広まってきており、株主リターンを向上させるためには、社会課題を本業で解決する点が重要であることの紹介がありました。
■ディスカッション「これから求められる社会的価値とその評価とは」
その後のパネルディスカッションでは、モデレーターの一般財団法人CSOネットワーク 事務局長・理事の黒田かをり氏の進行により、「これから求められる社会的価値とその評価」について、会場からの質疑応答も交えながら、活発な議論が交わされました。
経営者がTSIやTSIの利益貢献・企業価値貢献について理解を深め、本業の企業活動そのものでどう社会に貢献していけるかを考えていくことの重要性、SROIなどの手法には限界もあるが、数値化の枠組みを用いることで事業の効果を大きくすることができ、そのプロセスにも意義があることなどが強調されました。
■SDGs時代を一歩先に進むために
参加者からは「企業、コンサルティング会社、NGO、投資家、それぞれの立場からのESG投資と社会価値のコミュニケーションについてのリアルな意見を聞くことができて参考になった」、「今後念頭に置いておくべき考え方・指標を提示していただき、SDGsの取り組みへの課題の洗い出し、推進手法へのヒントが得られた」「SROI評価手法の説明が具体的だった」「現在の事業と社会的意義の相関性を理解することの重要性を再確認することができた」「もっと話を聞きたかった」など、前向きなコメントが寄せられました。
さまざまな社会課題が長期化、複雑化した現在、一つのセクターの活動によって解決できることは限られている中、互いの強みを生かして、共感する者同士が連携する必要が高まっています。セーブ・ザ・チルドレンは、その中でNGOとしての役割・強みを活かしつつ、今後も⼦どもの権利の尊重・推進に関する知⾒を共有し、CRBPの実践をはじめ、SDGs時代の社会課題解決に向けた企業との関わりをより⼀層強めて子ども支援活動を⾏っていきます。
※会場のグランドハイアット東京には特別協力をいただきました。
【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 法人連携担当
japan.corporatepartner@savethechildren.org
または下記までお電話でお問い合わせください。
TEL:03-6859-0010(東京:平日9:30~18:00)/06-6232-7000(大阪:平日9:00~17:00)
■企業の社会的活動がもたらす価値・効果を可視化するには
昨今、「持続可能な開発目標(SDGs)」やESG投資(環境、社会、企業統治に配慮している企業を重視・選別して行う投資)に関する取り組み事例が増加しています。今回のセミナーでは、企業の社会的活動が実際に企業の経営および社会にもたらす価値・効果を可視化するための最新情報を共有するとともに、企業が社会課題を解決し、子どもたちの権利を守っていくことでどのような成果をもたらすことができるのか、約150人の参加者とともに考える機会となりました。
セミナーでは、冒頭、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの専務理事・事務局⻑千賀邦夫より、SDGs時代における企業とNGOとの連携の重要性について事例を交えて紹介しました。セーブ・ザ・チルドレンは、国連グローバル・コンパクト、ユニセフとともに、2012年に「⼦どもの権利とビジネス原則(CRBP)」を発表しました。以来、セーブ・ザ・チルドレンでは、ビジネスにおける子どもの権利の尊重と推進に取り組んできており、今後もこれをベースに新たな価値創造を企業とともに行っていきたいと話しました。
■自社の活動を4つの観点で見直し:「株主価値向上」から「社会的価値向上」へ
ボストン コンサルティング グループ シニア・パートナー&マネージング・ディレクターの北沢真紀夫氏は、「株主価値向上(TSR:Total Shareholders Return)から社会的価値向上(TSI:Total Societal Impact)へ」と題して講演を行いました。
TSIとは、製品・サービス、オペレーション、中核的な組織能力やさまざまな活動を通じ、企業が社会やコミュニティ、環境に与える影響をすべて統合した概念で、北沢氏は以下のような要素が含まれると説明しました。
1) 企業の製品やサービスが社会に与える本質的なベネフィット
2) 倫理的ビジネスルールの厳格な順守など、
経営の実践において企業が国や地域社会に与える直接・間接の影響
3) 調達やその企業のサプライチェーンに関連するサービスにより生じる仕事
4) 環境への影響
また、TSIとTSRは両立しがたいものではなく、TSIの観点で優れている会社はTSRの面でも高いパフォーマンスを得られる例が多いこと、ほとんどの企業は本業の製品・サービスにより社会にプラスの価値をもたらしているが、経営にTSIを取り入れてさらに大きな社会的価値を生んでいる企業があることを解説し、医薬品企業や消費財企業の事例を紹介しました。
同社ではTSIの測定において、現状、ESG(環境・社会・統治)評価機関の評価データを活用しています。ただ、難しく考える必要はなく、自社の活動を例えば上記の4つの観点で見直し、継続的にビジネスや組織体制を整えていくことが社会的価値の向上に繋がるとの指摘もありました。
■協働を促進するインパクト評価:インドネシア交通安全事業のSROIを算出
続いて、損害保険ジャパン日本興亜株式会社CSR室長の越川志穂氏が「SOMPOホールディングスグループの社会的価値創造の取組み―インドネシア交通安全事業の例を通して―」と題して講演を行いました。
同社は、2014年4月〜2018年3月にかけて、セーブ・ザ・チルドレンとともに実施したインドネシアでの交通安全事業について、社会的投資収益率(SROI:Social Return on Investment)を用いて社会的価値のインパクト評価を実施。SROIとは、総便益(プロジェクトがもたらす社会的価値)/総費用(プロジェクトに投入した費用)によって社会的価値を貨幣価値に換算するものです。インドネシアの事業では4つの成果目標に基づいて、測定する指標を定め、算出した結果、費用に対して約3倍の価値を創出しているとの結果になったことが紹介されました。社会貢献活動の効果測定は難しく、事例も少ないものの、プロジェクトのパートナーの協力や専門家の知見があってこそ成し遂げられ、また本プロジェクトを通じて、定量化には以下の3つの効果があることを実感することができたとのことです。
1) プロジェクトの継続的な改善
2) 数値という共通言語によりパートナーとの協働が促進され、より大きな
社会的価値を生み出せる
3) ステークホルダーへの説明責任
また、さまざまなステークホルダーとの連携の重要性が説かれ、企業の目線だけでは課題解決のための知見や情報が少ない中、各分野のプロフェッショナルとの連携で得られるものも多く、社会課題の解決のためにはNGOとの連携が欠かせないこと、グローバルな意見交換やルール作りの場に積極的に参加していくことの重要性も強調されました。
■機関投資家の観点:CSRからESGへの大きな潮流の変化
後半は、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント株式会社スチュワードシップ責任推進部長の小野塚惠美氏による機関投資家の観点からの発表がありました。
現在の投資環境、日本における潮流に大きな変化が起きており、これまでの「企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)」時代では企業の倫理的観点やガバナンスが前提で、社会的責任の当事者が企業のみであったのに対し、ESG時代においては「このままでは持続不可能」という危機感が前提となり、社会的責任の当事者に機関投資家も加わっていることの説明がありました。同社も資産運用のための基礎分析にESGの視点を取り入れていることや、社内で持続可能なファイナンスの考え方が広まってきており、株主リターンを向上させるためには、社会課題を本業で解決する点が重要であることの紹介がありました。
■ディスカッション「これから求められる社会的価値とその評価とは」
その後のパネルディスカッションでは、モデレーターの一般財団法人CSOネットワーク 事務局長・理事の黒田かをり氏の進行により、「これから求められる社会的価値とその評価」について、会場からの質疑応答も交えながら、活発な議論が交わされました。
経営者がTSIやTSIの利益貢献・企業価値貢献について理解を深め、本業の企業活動そのものでどう社会に貢献していけるかを考えていくことの重要性、SROIなどの手法には限界もあるが、数値化の枠組みを用いることで事業の効果を大きくすることができ、そのプロセスにも意義があることなどが強調されました。
■SDGs時代を一歩先に進むために
参加者からは「企業、コンサルティング会社、NGO、投資家、それぞれの立場からのESG投資と社会価値のコミュニケーションについてのリアルな意見を聞くことができて参考になった」、「今後念頭に置いておくべき考え方・指標を提示していただき、SDGsの取り組みへの課題の洗い出し、推進手法へのヒントが得られた」「SROI評価手法の説明が具体的だった」「現在の事業と社会的意義の相関性を理解することの重要性を再確認することができた」「もっと話を聞きたかった」など、前向きなコメントが寄せられました。
さまざまな社会課題が長期化、複雑化した現在、一つのセクターの活動によって解決できることは限られている中、互いの強みを生かして、共感する者同士が連携する必要が高まっています。セーブ・ザ・チルドレンは、その中でNGOとしての役割・強みを活かしつつ、今後も⼦どもの権利の尊重・推進に関する知⾒を共有し、CRBPの実践をはじめ、SDGs時代の社会課題解決に向けた企業との関わりをより⼀層強めて子ども支援活動を⾏っていきます。
※会場のグランドハイアット東京には特別協力をいただきました。
【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 法人連携担当
japan.corporatepartner@savethechildren.org
または下記までお電話でお問い合わせください。
TEL:03-6859-0010(東京:平日9:30~18:00)/06-6232-7000(大阪:平日9:00~17:00)