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企業連携
(公開日:2021.04.27)

【セミナー開催報告】「広告とマーケティング〜子どもに与える影響をリスクの視点から考える」ビジネスと人権シリーズ第2回

 

セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利とビジネスの関わりについて考える機会を提供することを目的として、昨年末から、ビジネスと人権3つのキーワード【職場環境】【マーケティング】【サプライチェーン】から考えるセミナーシリーズを実施しています(第1回目の開催報告はこちらをご覧ください)。

2021329日に、【広告とマーケティング】の分野に焦点をあてたセミナーシリーズ第2回目「広告とマーケティング〜子どもに与える影響をリスクの視点から考える」を開催しました。

インターネット普及により社会の情報化が進み、新型コロナウイルス感染症の影響で在宅を余儀なくされる子どもたちが、さまざまな媒体で発信される広告に接する時間が増えるなか、「消費者」としての子どもに着目し、子どもたちの健全な成長と発達の観点から広告とマーケティングを考える機会として、本セミナーを企画しました。


■子どもたち自身の行動変容を目指して

今回のセミナーでは、企業による取り組みの紹介として、ヤフー株式会社メディア統括本部トラスト&セーフティ本部 ポリシー室 室長の中村茜氏と、同社政策企画統括本部 政策企画部 参事の佐川英美氏を講師にお招きしました。同社は、子ども向けサービスを展開するにあたり、子どもに配慮した広告掲載や、ポジティブなインターネット利用の可能性を目指しています。両氏は、「ヤフーにおける子ども向けサービスでの取り組みについて」と題して講演をしました。

【講演ポイント】
ヤフーは「未来を担う子どもたちにインターネットの楽しさを!」という思いから、1997年に子ども向けポータルサイト「Yahoo!きっず」を誕生させた。(1)子ども向け専用の検索エンジン、(2)情報技術の変化に対応するコンテンツ、(3)子どもたちの「知りたい」に答える、という3つの特徴を持っている。


・ ・「Yahoo!っず」子どもたち自身が利用・活用できる情報を厳選して掲載するサービス。子ども本人が主役の場である」そして「ユーザーはあくまで子ども本人」という考えのもとに立ち上げられた。

同・同サイトに掲載される広告について、子どもたちに何を「見せたくないか」ではなく、何を「見せたいか」をポイントにしている。
・上記の考えを基盤に、その一方で、子どもは人格形成の途上であることを配慮し、Yahoo!きっず」への広告掲載基準2010年に検討開始・現在も運用継続中。
・インターネットを使う力は「使いながら身に着けていく」必要がある。インターネットを使いこなせる大人になるためには、技術と相手を思いやる気持ちが両軸で発達し、ステップアップしていかなければならない。
・子どもたちが適切に情報を判断し、取捨選択できる力を身に着けていくことは、賢い消費者を育成していくことでもあり、未来への投資でもある。安心安全なインターネット環境が発達醸成されていくことは、ビジネスチャンスの拡大にもつながる。ヤフーは今後も、子ども達自身の行動変容を目指した取り組みを推進していきたい。



■広告によるネガティブな影響の最小化と、ポジティブなコミュニケーションの促進
続いて、子どもの権利の視点から、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのアドボカシーヘッド堀江由美子が、「その広告は、子どもたちへの影響を考えていますか?」と題して講演しました。

【講演ポイント】
・すべての子どもは、子どもの権利条約によって守られる権利を保障されている。企業は幅広い分野で子どもとの直接的・間接的な接点を持ち、こうした接点と子どもの権利リスクに関する認識を深める必要がある。
こうした背景から、2012年、セーブ・ザ・チルドレンは、ユニセフと国連グローバル・コンパクトとともに「子どもの権利とビジネス原則」を策定した。今回のセミナーのテーマである「マーケティング」には、「原則6.子どもの権利を尊重し、推進するようなマーケティングや広告活動を行う」が主に関連する。
子どもは広告やマーケティングの影響を大人よりも受けやすく、信じやすい、目的を十分に理解できないといった特徴があることから、海外では子どもへのマーケティングに対して多くの法律や規制があるが、日本では業界ごとの自主規制にとどまっている。
近年のデジタルマーケティングの影響を考慮すると、子どもたちは多くの広告に晒されている状況にあり、必ずしも年齢に配慮されているものではないものも目にして、日々その影響を受けている。
セーブ・ザ・チルドレンは、企業やNGO、有識者などで構成される「子どもの権利とマーケティング・広告検討委員会」を立ち上げ、業界横断的な指針となることを目指した「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」を策定した。企業の自主基準につながることも期待される。
子どもの権利と広告・マーケティングに関する企業の事例として、ユニリーバは「食品・飲料の責任ある子ども向け広告とマーケティング原則」を策定しており、子どもに対するネガティブな影響の最小化を図っている。一方、若い女性の自己肯定感を高める「ダヴ」ブランドの広告など、ポジティブなコミュニケーションを活用している。


■変化を読み解く3つのポイント
企業発表と子どもの権利の視点での講演を受け、関東学院大学准教授の天野 恵美子氏から、「広告・マーケティングと子どもをめぐる国内外の動向」と題してアカデミアからの視点から講演しました。

【講演ポイント】
現代の子どもの生活は、PCやスマホ利用の低年齢化と利用機会の増加によって高度にデジタル化している。子どもは、広告の意図やマーケティングのターゲットになっていることに無自覚であり、経験や警戒心、判断力や理解力が不足した「成長途上の消費者」と言える。デジタル化した世界の中で、脆弱な子どもを保護するかが、国際的に重要なテーマとなっている。
子どもの保護に関しては、とりわけオンライン上の個人情報をめぐる問題が課題になってきている。ビジネスにおける子どもへの対応を一歩間違えると、訴訟リスクにもなり得る。さまざまな国際機関や団体が、デジタル商取引における子どもの保護を呼び掛けるべく、ガイドラインの作成を急いでいる。
一方で、リスク回避という側面だけでなく、広告やマーケティングにより、ポジティブな影響をもたらす試みも行われている。セーブ・ザ・チルドレンの講演でも取り上げられたユニリーバは、ステレオタイプを取り除く広告を掲げ、広告から「ノーマル」という表現の排除や、モデル写真の肌色修正を行わないなど、本気の対応を実施している。
バービー人形で有名なマテル社は、さまざまな背丈や体形、車いすや義足の人形のラインナップに加えて、LGBTに配慮し、ガールフレンドを登場させるなど、バービー人形を通じて、多様性を実現することを実践している。その一方で、2015年には、AIを搭載したバービー人形を作り、子どもの個人情報を子ども部屋から抜き取っているという批判も受けている。
今後、広告・マーケティングと子どもをめぐる環境の変化を読み解いていくための、3つのポイントを紹介する。(1)子どもの個人情報やプライバシーの保護については、以前より一層強く関心が向けられるようになっていること、(2)広告やマーケティングを、ポジティブな力として利用する流れがあること、(3)ネイティブ広告、アドバゲーム、インフルエンサー広告など、新しい手法、サービスを子どもに向けて行う際には一層の配慮が必要なこと。総じて、マイナスを最小化し、プラスを最大化する責任ある広告とマーケティングが推奨されている。


■対談と質疑応答
その後の対談と質疑応答では、講演の内容を補足、深掘りしていきました。

<「Yahoo!きっず」広告掲載基準運用の影響や、ヤフーの事業全体としての子どもへの影響>
Yahoo!きっず」への広告掲載基準には、社として大切にしていることを反映しており、広告主に理解いただいていると感じている。その一方で、メディア・プラットフォームの立場からすると、こうした基準は、表現の自由を奪いかねないが、表現の自由を奪いすぎずに、広告主や広告会社、プラットフォームがそれぞれの立場で配慮できるポイントがあると考えている。この点については、今後も配慮を続けていきたい。

プラットフォーマーという立場からすると、子どもへの影響を考えることは、新しいビジネスを行う土壌であるインターネットを健全に発達させていくために必要不可欠なものであり、必要な投資でもある。

<今後子どもの視点から広告マーケティングをとらえるために、まず社内でできること>
(1)
個人情報の保護・管理、(2)子どもにポジティブな影響を与える広告・マーケティング志向、(3)子どもに対する新しい広告・マーケティング手法に細心の注意を払うこと、この3点について、自社サイトや広告上での表現や手法を再度点検していくことが肝要である。
子どもへのポジティブなインパクトを与えるという点について、良い悪いの価値判断に絶対的なものはなく、子どもに何を提供するのが望ましいかは、都度悩むものである。目指すイメージを最初に関係者で共有し、積み重ねていくことが大切である。
・さまざま
な立場の人がみて、不快に思う人がいないか、というのが基準になり得るため、幅広くコンサルテーションしていくのが大切。人権や共生社会への価値観を深めていくことが大切と考える。
加えて、子どもの意見をあらゆるプロセスで入れていくことも重要。
子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」はチェックシートとして活用が可能。

■参加企業の声
当日は、およそ70人が参加し、以下のような感想が寄せられました。
子ども向け製品の配慮にも気を付けなければ、ビジネスにおける大変なリスクになる旨、改めて気づかされた
ビジネスにおいて、子どもと関わるサステナブルな視点を学べると、SDGsが推進されるのではないかと感じた
企業は「あるべき姿」と「企業がおかれた現実」の間で葛藤することが多くあるため、具体的な企業の対応例が大変参考になった

3回目は5月以降に【サプライチェーン】をテーマに開催する予定です。参加を希望される法人の方は、メールで申込フォームをお送りしますので、japan.corporatepartner@savethechildren.org までご連絡ください。

(報告:パートナーリレーションズ部 法人連携チーム
吉田克弥)

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セーブ・ザ・チルドレンは、毎年600以上の企業・団体の皆さまとさまざまな形で連携し、子どもたちを取り巻く課題解決のために、緊急・人道支援や教育、子どもの保護、保健・栄養などの分野で、日本を含む世界約120ヶ国で活動しています。これからも、企業の皆さまとも協力・連携しながら、子どもたちを取り巻く社会課題の解決に取り組んでいきます。

【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】

公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン法人連携担当

japan.corporatepartner@savethechildren.org

または下記までお電話でお問い合わせください。

TEL03-6859-0010(東京)/06-6232-7000(大阪)

https://www.savechildren.or.jp/partnership/


 

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