企業連携(公開日:2023.03.22)
【セミナー開催報告】インターネットを利用した広告・マーケティングが子どもに及ぼす影響を考える
2023年3月1日、セーブ・ザ・チルドレンは、グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパンとの共催によるオンラインセミナー「インターネットを利用した広告・マーケティングが子どもに及ぼす影響を考える」を開催しました。
近年、インターネットの普及をはじめとする技術の発展や、新型コロナウイルス感染症拡大による影響など、社会の変化に伴い、広告・マーティング活動がますます高度化・複雑化し、子どもに及ぶ影響もますます大きくなっています。
こうした中、2016年に策定された「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン」について、最近のインターネット上の広告・マーケティングを取り巻く状況や課題を踏まえて追記・改訂を行いました。
今回のセミナーは、「子どもに影響のある広告およびマーケティングに関するガイドライン 2023年増補版」が完成したことを受けて開催しました。
*当日のプログラム詳細はこちら:https://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=4104
■ガイドライン増補版が広告に関わるすべての人にとって参考となることを期待して
本セミナーでは、冒頭、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン事務局長の?井明子によるガイドライン作成の経緯説明と、新井ゆたか消費者庁長官より、広告媒体の多様化、広告量の増大、広告発信者の多様化といった広告をとりまく変化について言及があり、今回のガイドラインが広告に関わるすべての人たちにとって参考となり、倫理的で秩序ある発信およびより良い広告につながることを期待するとのあいさつがありました。
続いて、本ガイドライン改訂を行った「子どもの権利とマーケティング・広告推進委員会」の座長を務める一橋大学名誉教授の松本恒雄氏による基調講演が行われました。
ガイドラインが、2012年に策定された「子どもの権利とビジネス原則(CRBP)」の中の「原則6:子どもの権利を尊重し、推進するようなマーケティングや広告活動を行う」に基づいていること、デジタル化が進む中で、国際的な組織ICPEN(消費者保護及び執行のための国際ネットワーク)が2020年に発表した「インターネット上の子どもを対象としたマーケティング手法に関するベストプラクティス原則」を参考に今回のガイドライン改定が行われたことが報告され、問題のあるマーケティング手法の例について具体的な解説がありました。
次に、アドリーガル・オフィス代表の林功氏より、今回の「増補版」のポイントとして新たに追加された「インターネットを利用した広告とマーケティング活動の留意点」や、企業が実際に活用できる「チェックリスト」の紹介をしました。
特に、コンテンツと広告とは別であることを子どもにも分かるような平易な表現で明示することの重要性や、子どものデータ収集や支払いが生じる場面などでの保護者への同意を得ること、子どもに固定観念を強要したり射幸心をあおったりするような広告を控える必要性などが説明されました。
■子どもが広告から受ける影響について、すべてのステークホルダーで議論を
後半は、「インターネットを利用した広告・マーケティングが子どもにもたらす影響を考える」をテーマに、異なるセクターの5人のスピーカーによるパネルディスカッションを行いました。
・学校法人先端教育機構 事業構想大学院大学 学長/株式会社 宣伝会議 取締役の田中里沙氏からは、「子どもに配慮した広告」の参考になる取り組みとして、企業が実際に発信した広告やイベントなど、複数の事例が共有されました。
・dentsu Japan サステナビリティ推進オフィス シニア・マネージャー/cococolor編集長の半澤絵里奈氏からは、広告の企画・制作会社としてリテラシーを高めるために、社内およびクライアント企業と共に行われているさまざまな取り組みが紹介されました。
・プラン・ユースグループの逸見萌依氏からは、2019年に実施した「広告でのジェンダー描写に関するユースの意識調査」の結果から、固定的なジェンダーの描き方など、ユースが企業の広告に対して感じている課題についての報告がありました。
・セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン アドボカシー部長の 堀江由美子からは、これまで日本では人権問題として捉えられてこなかった広告とマーケティング活動を、今後は企業の人権デューディリジェンスの一環として取り入れていくことの必要性を話しました。
ディスカッションでは、さまざまな論点があがる中、特に以下の点の重要性が強調されました。
・ビジネスと人権を考えるにあたり、子どもをステークホルダーとして捉えること、広告とマーケティング活動は人権、「消費者問題」であると捉え、子どもが広告からどういう影響を受けるのか、すべてのステークホルダーで議論と検討を始めること
・広告主企業、広告会社、メディアなどが、常に知識をアップデートし、仕組みの構築や研修の実施などを通じ、広告に関わるステークホルダーのリテラシーを高めること
・広告に関わるすべてのステークホルダーが、今回のガイドライン「増補版」およびチェックリストを活用し、さまざまな観点に配慮したよりよい広告を制作すること
・伝統的なメディアと比較してインターネット、デジタルメディアはスピードが速いことから、迅速なフィードバックと改善を行える、ネット時代に見合った新しい仕組みが必要であること
・SDGsやESG投資など、企業による社会課題解決の取り組むに関心が高まる中、CSRやサステナビリティ関連部署も巻き込み、社内全体で取り組むこと、業界横断的な自主規制や、社内の自主規制、将来的な法制化の可能性などにつなげていくこと
最後に、共催者のグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン事務局次長の氏家啓一氏が、子どもは未来の消費者・従業員であるだけでなく、社員の家族、地域コミュニティのメンバー、そしてサプライチェーン上に関わる存在でもあり、さらにはすべての企業にとってのステークホルダーであると述べ、子どもの権利に関するリスクの特定は、人権デューディリジェンスの一環であり、「企業が子どもを守る時代になった」と締めくくりました。
■参加者の声
当日は、およそ170人が参加し、以下のような感想が寄せられました。
・子どもをステークホルダーと捉えることや、これまで子どもへの影響について人権課題と捉えたり、議論すらできていなかった、という気づきがありました。
・(広告とマーケティングを)ビジネスと人権の文脈では捉えられていなかったため、合わせて解説されていて参考になった。また、紹介されたガイドライン、チェックリストをぜひ活用したいと思った。
・広告の課題に対して、重要な一つは「広告主のリテラシー強化」であるという発言もあり、引き続き自らも含めて、社内のリテラシーを上げることが解決の一つにつながると感じた。
今回のセミナーが、広告とマーケティング活動における子どものリスクを改めて考えるきっかけとなったのであれば幸いです。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後も⼦どもの権利の尊重・推進に関する知⾒を共有し、SDGs時代の社会課題解決に向けた企業との連携をより⼀層深め、子ども支援活動へとつなげていきます。
(報告:パートナーリレーションズ部 法人連携チーム 山田有理恵)
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セーブ・ザ・チルドレンは、毎年600以上の企業・団体の皆さまとさまざまな形で連携し、子どもたちを取り巻く課題解決のために、緊急・人道支援や教育、子どもの保護、保健・栄養などの分野で、日本を含む世界約120ヶ国で活動しています。これからも、企業の皆さまとも協力・連携しながら、子どもたちを取り巻く社会課題の解決に取り組んでいきます。
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