企業連携(公開日:2021.12.03)
【セミナー開催報告】「企業の皆様とともに取り組む社会課題解決〜食の支援とコレクティブ・アクションの視点から〜」
2021年11月10日に、セーブ・ザ・チルドレンは、企業を対象としたオンラインセミナー「企業の皆様と共に取り組む社会課題解決〜食の支援とコレクティブ・アクションの視点から〜」を開催しました。
本セミナーでは、国内の子どもの貧困問題に焦点を当て、セーブ・ザ・チルドレンのこれまでの取り組みと、その経験を踏まえて2022年以降計画している事業活動を紹介しました。そのなかで、今年7月に、さまざまな企業と連携して実施した「夏休み 子どもの食 応援ボックス」を事例として取り上げ、協力企業3社からの体験談も交えながら、企業とNGOとの協働が、社会課題解決にどのようなインパクトをもたらし得るかをともに考えました。
国内の子どもたちの貧困問題解決に向けて
日本では、7人から8人に1人(約260万人)の子どもが相対的貧困下(世帯の所得がその国の等価可処分所得の中央値の半分に満たない状態)にあると言われています。新型コロナウイルス感染症の影響でこの状況はさらに悪化する傾向にあるとも言われ、経済的に困難な状況に直面する家庭からは切迫した声が数多く寄せられています。
貧困は、単なる所得水準の低さ・経済的困窮だけを意味するものではなく、食、学び、遊びや体験など、子どものすべての権利を制約する原因となり、不十分な衣食住、健康発達への影響、親の労働状況、虐待、体験の不足、自己肯定感の低下といったさまざまな困難へと複層的につながっていきます。
セーブ・ザ・チルドレンは、これまでも(1)子どもたちや家庭への直接支援、(2)社会啓発、(3)国や自治体などへの政策提言といった3つの軸による子どもの貧困問題解決への取り組みを行ってきましたが、こうした複層的な困難により幅広く対応していくためには、より多くの企業や団体との連携によるコレクティブ・アクションが大きな力となると考えています。
2022年以降、特に子どもたちや家庭への直接支援を拡充すべく、給付金や応援ボックスといった資金・物品の提供のほか、体験機会の提供によるエンパワーメント、広く学びの支援などにも取り組んでいく考えです。こうした活動に対し、企業の皆さまにも、物品・資金の提供、出前授業や、従業員ボランティアなど、その「経営資源(アセット)」を活用し、ぜひ参画していただきたいと考えています。
企業とNGOが互いの課題を補ったコレクティブ・アクション事例〜「夏休み 子どもの食 応援ボックス」
2021年7月に実施した「夏休み 子どもの食 応援ボックス」は、企業の皆さまとともに取り組むコレクティブ・アクションの好事例といえます。
企業は、物品や資金、従業員といったさまざまな経営資源(アセット)を活用し、困難な状況にある人々を支援したいという想いをもちつつも、こうした人たちとの直接の接点をもつ手段がないという課題を抱えています。
一方、セーブ・ザ・チルドレンは、個別世帯の状況把握や各家庭に物品を届けるためのラストワンマイルのノウハウ・経験を有しているものの、支援を継続するための物品や資金の継続的・安定的な調達が課題となっています。
この両者が連携することで、「困難な状況に置かれた人たちへ継続的に直接支援を届ける」ことが可能となりました。また、セーブ・ザ・チルドレンのNGOとしての強みを生かし、こうした支援から見えてきた利用者の状況や声を社会啓発や政府への政策提言活動につなげ、社会構造全体の変革を促していくことも目指しています。
コレクティブ・アクションに参加する企業の想い
セミナーでは、「夏休み 子どもの食 応援ボックス」に参画していただいた30社を超える企業のうち、下記3社に、活動に参画した背景や想いについて代表して語っていただきました。
■物資提供のための枠組み作り:イオン株式会社
2030年までに食品廃棄半減を目指す「10×20×30食品廃棄物削減イニシアティブ」(※)とザ・コンシューマー・グッズ・フォーラム日本サステナビリティ・ローカル・グループといった業界横断型の協働取り組みで、コロナ禍におけるコミュニティ支援を模索するなか、活動実績があり、成果を政策提言にまで活かしていたセーブ・ザ・チルドレンに協力を仰いだ。「気持ちを合わせて協働する場」がコレクティブ・アクション。皆の想いをつないで応援ボックス事業を育てていきたい。
※米国のシンク タンク World Resources Institute(WRI)の呼びかけによる取り組み
■食品提供による協力:アサヒグループホールディングス株式会社
地域コミュニティの状況が健全でなければ、企業の事業活動も健全にならないとの問題意識から、新型コロナウイルス感染症の影響下でさまざまな支援活動に取り組むなか、本支援にも参画。個社ではリーチできない人たちに、詰め合わせという形で支援を届けられること、毎回、利用者からの声をフィードバックしてもらえることがありがたい。社員にとっても身近にある社会課題を考えるきっかけになっており、多くの反響がある。
■従業員寄付による資金協力:ランクセス株式会社
東日本大震災以来、セーブ・ザ・チルドレンの活動を支援。新型コロナウイルス感染症の影響下でもCSR(社会貢献活動)を会社として止めてはいけない、何か貢献できないかとの声が社内でもあったなか、従業員寄付キャンペーンと企業によるマッチング寄付を実施。他者を助けるための行動、社会的支援による自己効力感が従業員の心と体の健康にも良い影響を与えるとのレポートもあり、実際に、従業員からも反響が多く寄せられている。
※アサヒグループホールディングス株式会社とランクセス株式会社には、2020年の「ひとり親家庭応援ボックス」のときから継続して支援いただいています。
左上:イオン株式会社 山崎氏、右上:アサヒグループホールディングス株式会社 染谷氏、
左下:セーブ・ザ・チルドレン 吉田、右下:ランクセス株式会社 村上氏
本セミナーに参加した計60人からは、下記のような声が聞かれました。
「SDGsの取組としての参考事例として学べた」
「他社様の活動に触れる機会がなかなかなく、どのような経緯や思いでセーブ・ザ・チルドレンと協働されているのかお聞かせいただきありがたかった」
「今何が必要なのか、それはなぜなのかをイメージでとらえられること、また、その中で企業のリソースがどのように活用できる可能性があるのかがクリアでとても勉強になりました。」
セーブ・ザ・チルドレンは、これからも、より多くの企業や団体とのパートナーシップ、コレクティブ・アクションにより、子どもたちの権利を守る視点から多角的なアプローチを通じて、子どもたちの課題解決に取り組んでいきます。多くの企業の皆さまの参画をお待ちしています。
(報告:パートナーリレーションズ部 法人連携チーム 山田有理恵)
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セーブ・ザ・チルドレンは、毎年600以上の企業・団体の皆さまとさまざまな形で連携し、子どもたちを取り巻く課題解決のために、緊急・人道支援や教育、子どもの保護、保健・栄養などの分野で、日本を含む世界約120ヶ国で活動しています。これからも、企業の皆さまとも協力・連携しながら、子どもたちを取り巻く社会課題の解決に取り組んでいきます。
【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 法人連携チーム
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