企業連携(公開日:2020.11.06)
【セミナー開催報告】 オンライン講演会「シリーズ〜他社事例から学ぶサステナビリティの取り組み〜株式会社リコーの事例」第1回
セーブ・ザ・チルドレンがシリーズで実施する、サステナブルな社会の実現をともに考えるオンラインセミナー。テーマの一つである「他社事例から学ぶサステナビリティの取り組み」の第1回目を、株式会社リコーサスティナビリティ推進本部の赤堀久美子氏を講師に招き実施しましたので、講演の概要をお伝えします。
<リコーがサステナビリティに取り組む背景>
リコーがサステナビリティに取り組む背景には、1)世の中の潮流と2)ステークホルダーからの期待の双方があります。
1) 世界的な潮流として、リコーは持続可能な開発目標(SDGs)に積極的に取り組んでいますが、これには持続可能な社会づくりへの企業としての責任に加え、ビジネス機会の獲得とビジネスのリスク回避という側面もあります。
2) 顧客や投資家を含むステークホルダーからは、気候変動への取り組みの基本的な考え方や、バリューチェーンでの人権、女性活躍に向けた取り組みとその成果、など、ESG[1]に関する要求が増えています。ESGは企業価値を測る指標になってきています。
[1] ESG: E (Environment, 環境)・S (Social, 社会)・G(Governance,ガバナンス)
<リコーの企業DNA>
このような社会的潮流と顧客からの要望に加え、リコーは企業のDNAとして、「世の中の役に立つ事業をすれば自ずと収益はついてくる」という考え方が根底に根付いており、事業を通じた社会課題解決、経営基盤の強化、社会貢献を通じて持続可能な社会の実現を目指しています。
これらを踏まえ、リコーは社会課題解決による持続的な企業価値向上を経営方針の基本的な考え方とし、特に今年度から経営目標に財務目標と並べてESG目標を掲げ、サステナビリティと経営戦略との統合に力を入れています。
<社内浸透とコロナ禍の影響>
SDGsやESGに関する取り組みを社内に浸透させていくために、リコーは社員勉強会にも力を入れており、その結果、社員の90%がSDGsと自身の業務のつながりを感じているという結果もでています。
また、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大は、自分たち自身が社会課題の当事者になったという意識を社員にもたらしました。コロナ禍に対する社員アクションの推進として、この機会にセーブ・ザ・チルドレンの国内事業部職員とのインタビューを実施し、それを社内で動画配信することで、コロナ禍がもたらした日本国内の子どもを取り巻く課題について学ぶ機会を設けました。
<セーブ・ザ・チルドレンとの協働>
株式会社リコーとセーブ・ザ・チルドレンとの協働は、2009年にさかのぼります。
およそ2年間にわたり、さまざまなプログラム案を一緒に検討し、2011年から、1)教育環境の改善と2)新市場でのマーケティング情報収集を目指して、インド農村部の学校にデジタル印刷機を提供し、授業の質向上と学校運営改善を協働で実施しました。3年間の事業を通じて、
1)授業の質改善や学校運営の改善といった社会課題上の成果
2) マーケティング情報の把握、ブランド認知度向上といったビジネス上の成果
を得ることができました。
この事業は、社会貢献にマーケティングの要素を取り入れたものでしたが、2013年からは、リコーの社会貢献部門だけでなく、事業部門も加わって、教育の質向上とビジネスモデル構築のための新たな協働を開始しました。
<ビジネスモデル構築のための新事業>
新事業実施にあたっては、リコーとセーブ・ザ・チルドレンが現地で共同調査を行いました。そして、教師による一方通行の授業スタイルの改善が、教室での子どもたちの理解を促すうえでの課題の一つになっているということが明らかになりました。
そこで、リコーのプロジェクターを活用して、教科書の内容のデジタル化・ビジュアル化を進めました。さらに教科書・プロジェクターを用いたデジタル教材・リアル実験教材をパッケージ化し、実際の授業で用いることで、価値検証を行いました。
その結果、1)授業が参加型になり、子どもたちの理解が深まったことに加えて、2)教師たちのモチベーションが向上し、自らデジタル教材を作成するようになったという効果も表れました(報告書はこちら)。
リコーとしては、この事業を通じて、ITソリューションという枠組みで、ビジネスモデルとして教育パッケージをどう提案していくかということを学び、現地の教育行政からも高い評価を受けたことで、その後の事業展開につながりました。
<パートナーシップの課題とコツ>
リコーにとっては、価値観や組織課題といった組織文化・風土の違い、期待値やスピード感といったオペレーションの進め方の違いなどから、NGOとの協働を難しいと感じた時期もありました。しかし、リコーとセーブ・ザ・チルドレン関係者の間で、チームビルディングのワークショップを行い、共通のゴールを再認識したり、その後も、地道なすり合わせを重ねたりするなどして、柔軟に対応・変更を加えていったことが、最終的に事業の成功へとつながりました。
リコー1社だけでの社会課題解決はできないので、他企業や政府・行政、NGO・NPOとのパートナーシップで、互いの持つリソースを持ち寄りながら、集団的なインパクト(Collective Impact)をもたらす。それが社会課題の解決とビジネスの成長につながっていくと考えているという言葉で、講演は終わりました。
さまざまなステークホルダーとのパートナーシップによる社会課題解決は、セーブ・ザ・チルドレンが考える企業連携の方向性とも合致するものです。
社会課題解決のための連携をともに考えていくための場として、セーブ・ザ・チルドレンは今後も、シリーズで事例紹介のセミナーを開催していきます。
次回の事例紹介セミナーは12月10日(木)に開催し、イケア・ジャパン株式会社の事例を紹介いたします。
セミナーに関心のある法人の方は、メールで申込フォームをお送りしますので、下記までご連絡ください。
japan.corporatepartner@savethechildren.org
(報告:パートナーリレーションズ部 法人連携チーム 吉田克弥)
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
セーブ・ザ・チルドレンは、毎年600以上の企業・団体の皆さまとさまざまな形で連携し、子どもたちを取り巻く課題解決のために、緊急・人道支援や教育、子どもの保護、保健・栄養などの分野で、日本を含む世界約120ヶ国で活動しています。これからも、企業の皆さまとも協力・連携しながら、子どもたちを取り巻く社会課題の解決に取り組んでいきます。
【企業・団体の皆さまからのお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン法人連携担当
japan.corporatepartner@savethechildren.org
または下記までお電話でお問い合わせください。
TEL:03-6859-0010(東京)/06-6232-7000(大阪)