日本/子ども虐待の予防(公開日:2021.06.15)
【報告】子どもとの向き合い方を考えるオンラインセミナー〜子どもをみつめること、寄り添うことってなんだろう〜を実施しました
セーブ・ザ・チルドレンは、2021年6月5日、常磐大学人間科学部教授の秋山邦久さんをゲストとしてお迎えし、「子どもとの向き合い方を考えるオンラインセミナー〜子どもをみつめること、寄り添うことってなんだろう〜」を開催しました。また、セーブ・ザ・チルドレンの特設サイト「おやこのミカタ」も紹介しました。当日は子どもや子育てに関わりがある方など、235人が参加しました。
このセミナーは、子どもの気質や子どもの行動の背景にある文脈を知ることで、ポジティブに子どもと向き合うヒントについて参加者と考えるため、最初に投票機能を使い、参加者の皆さんの考えや、状況を聞きながら、双方向のコミュニケーションを取り入れて実施しました。
参加者の皆さんへの質問に続いて、秋山さんが「子どもの気質と文脈から考える子育ての工夫」と題し、アニメキャラクターや実際の相談現場での事例などを盛り込みながら、相手の文脈を知ることや、気質に合わせたコミュニケーションなどについて講演しました。
【子どもの文脈を理解し、それに合わせること】
秋山さんはまず、話す内容や用いる言葉は同じでも、「いつ、どこで、だれと、だれが」などといった「文脈の違い」がある場合、受け取り側が違う意味に捉えてしまい、結果としてコミュニケーションがうまくいかないことがあることを指摘しました。
たとえば、「タコアゲタ?」という問いかけは、相手の状況や背景によって「凧を上げた」、「蛸を揚げた」、「蛸を(お歳暮で)あげた」など、受け取り方が全く違ってきます。こうしたことから、子どもとの関わりの中では、大人の側から子ども側へ「文脈合わせ」をすることが大切であるとの説明がありました。
また、親・養育者、そして子どもと関わる大人として、子どもの命を守る「監視」の目と、子どもの文脈や価値観に合わせる「観察」の目の2つを持つことが重要であるという説明がありました。
そして、そのうえで、漢字の「親」の構成から、この2つの「監視」「観察」をうまく使えるようになることが、子どもとの関わり方で必要であると強調しました。
【子どもの気質を理解すること】
また、子どもへの支援は、生物・心理・社会的な側面から行う必要があり、生物的側面のひとつの捉え方として「気質」があるということが説明されました。そして、気質に合わせた関わり方について例をあげながら紹介がなされました。
たとえば、自分との対話に重きを置く「学者」タイプの気質をもつ人に対しては、気持ちに寄り添うより、論理的に説明する関わりの方がより伝わりやすいこと。その一方で、寄り添いを求める「母親」タイプには、気持ちに寄り添うことで相手が感情を出し、話しやすくなること。また、対人関係よりルールを重んじる「職人」タイプには、ルールを決めるなどの関わり方や、感情のままに活動的な「女優」タイプには、時間を区切りつつ拒まず追わずの関わり方が合いやすいといったことなどが紹介されました。
ただし、これらは相手を選別、ラベル付けをするためではなく、あくまで関わり方を考える上で主となるタイプを知ることが参考になるという点も補足がありました。
最後のQAセッションでは、セミナー時間で説明しきれなかった、子どもの「ほめ方」や「注意の仕方」の具体的な例を補足しながら秋山さんが参加者からの質問に回答しました。
セミナー参加者からのアンケートでは、「先生の講演は具体例がたくさんあり、わかりやすかったです」、「子育てにおける大切な視点をたくさん教えていただけた」、「子どもの注意の仕方がとても参考になった。すぐ取り入れたい」、「今までよく分かっていなかったこどもとの向き合い方・かかわり方を今後は変えていけそうです」などの声が寄せられました。
セーブ・ザ・チルドレンでは、今後もウェブサイト「おやこのミカタ」の周知とともに、専門家と連携しながらポジティブな子育てを広める活動を続けていきます。
セミナーゲスト: 常磐大学人間科学部心理学科教授 秋山邦久さん
大阪市立大学大学院修了後、秋田県職員として児童相談所や福祉事務所の心理判定員を16年務めた後、文教大学大学院、桜美林大学大学院、弘前大学大学院、常磐大学大学院などで臨床心理士の養成に携わる。専門は家族心理学や児童福祉臨床で、大学での講義のほか、全国の児童相談所や病院、教育センター、越谷心理支援センターなどで心理支援やカウンセリングを行っている。
(報告:国内事業部 岩井さくら)