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〜持続可能な水・衛生環境、そして住まいの確保をめざして――ロヒンギャの人々がつくる明日

バングラデシュ
(公開日:2026.01.08)

【ロヒンギャ難民支援】生活環境改善事業の完了報告
〜持続可能な水・衛生環境、そして住まいの確保をめざして――ロヒンギャの人々がつくる明日

 
バングラデシュ南東部にあるコックスバザール。
ここには、2017年の危機以降ミャンマーから避難してきたロヒンギャの人々が暮らしており、2025年11月時点で人口は113万人以上にのぼります。世界でも最大級の人口密度を抱える難民キャンプでは、安全な水や衛生環境の確保は大きな課題です。

セーブ・ザ・チルドレンは、2024年10月から2025年9月までの11ヶ月間、4つの難民キャンプで水・衛生と居住環境の改善に取り組みました。この支援では、難民自身が生活環境を改善できるようになることに特に力を入れてきました。その結果、キャンプでは少しずつ前向きな変化が生まれています。(事業の背景や活動の詳細は、事業開始時の記事をご覧ください。)


 
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安全な水がない――そこから始まった住民主体の変化

キャンプに到着したムハンマドさんは、まず「安全な飲み水が確保できない」という現実に直面しました。近くの浅い井戸の水は安全ではなく、家族は頻繁に体調を崩してしまう。そんな状況を変えたいと願い、彼は近隣の住民とともにセーブ・ザ・チルドレンに相談を持ちかけました。

その後、住民や地域リーダーは、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフと何度も協議を重ねました。
「どこに給水所が必要か」「誰が何を担うのか」、こうした重要な決定は住民自身が話し合って決めました。

やがて設計から建設までを管理する委員会が立ち上がり、男女問わず多くの住民が参加しました。数週間後には給水パイプラインと2つの給水所が無事完成。女性が安心して利用できるように性別ごとの給水ポイントも整備されました。

「今では、私が家にいなくても、姉妹や母がためらわずに安全に水を汲めます」
とムハンマドさんは誇らしげに語ります。

この取り組みは、安全な水の確保にとどまらず、住民自身が課題解決に取り組むことで、コミュニティ全体の結束と自信を大きく高めました。

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住民の取り組みが生み出した、水と衛生環境の変化

■ 水・衛生施設の修繕と維持管理

住民主体で進めたこれらの取り組みを通じて、

1万4,954人が安全で十分な量の水にアクセス
1万8,500人がトイレや水浴び場などの衛生施設を利用

できるようになりました。


修繕された給水施設を利用するロヒンギャ難民


修繕や整備の際には、女性、障害者、高齢者などの意見も取り入れ、

• トイレの手すり
• 子ども用ステップ
• 女性専用のトイレ・水浴び場

など、誰もが使いやすい環境づくりを進めました。

また、施設を長く安全に使い続けるために、地域住民から成る水・衛生委員会や衛生促進ボランティアに加え、子どもや青少年も巡回に参加しました。「施設を自分たちで守る」という意識が広がり、地域主体の維持管理が確実に根づき始めています。


■ 衛生習慣を地域全体へ

衛生促進ボランティアが中心となり、地域住民に正しい衛生習慣、ゴミの処理方法や感染予防策を伝えました。子どもたちには歌やダンス、ロールプレイを用いて、楽しみながら理解できる工夫も取り入れています。


子ども向け衛生促進セッションの様子

また、これまで男性が担っていた家庭ごみの収集を女性が担うようになったことで、女性同士で分別のルールを共有できるようになり、家庭内での分別精度が大きく改善しました。

さらに、長年ごみの投棄で荒れていた土地は、住民の手でコミュニティガーデンへと生まれ変わりました。分別された生ごみを堆肥として活用し、野菜を育てる試みも始まっています。


■ 思春期の女の子たちへ――月経の学びと自信

300人の女子が月経管理セッションに参加し、以下のことについて学びました。

• 月経に関する正しい知識
• 再利用できる生理用ナプキンのつくり方
• 使用済みナプキンの専用の洗い場や焼却炉の活用方法
• 児童婚などの社会問題

月経は地域でタブー視され、声に出しにくいテーマでしたが、安心して話し合える場を作ることで、「学んだことを家族や友だちにも伝えたい」という前向きな声が多く聞かれるようになりました。


思春期の女子への月経管理セッションの様子


女性たちが担い始めた新しい役割――シェルター修繕の現場から

難民キャンプでは、大雨や強風、そして度重なる火災により、シェルター(簡易住居)が壊れる危険が常にあります。こうした状況の中で、女性たちが修繕に関わることで地域での役割が広がり、暮らしを支える力にもつながると考えました。

そのため、技術研修に加えて、家計管理や中長期的な目標設定、洪水や火災に備えるための財務管理など、幅広い能力強化を行いました。

取り組みを進める中で、災害に強く安全に過ごせる30ヶ所のシェルターが修繕され、現場では新しい役割に挑戦する女性たちの姿が見られるようになりました。


 
 修繕前のシェルターの様子             修繕後のシェルターの様子


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「私は避難所以上のものを築いている」――ソキナさんの物語

シェルター修繕に参加し始めた頃、ソキナさん(35)は竹割包丁の扱い方さえ分からず、「女性の自分が作業に入って笑われるのではないか」と不安を抱えていたと言います。

それでも研修で基礎から技術を学び、財務管理のスキルも身につけ、少しずつ自信を深めていきました。毎週の貯金を続け、貯めたお金で小さな食料品店を開くことができ、薬代や子どもの学用品、家族のおやつにも充てられるようになりました。

「収入があると、子どもの将来を考える余裕が生まれ、何より夢を持てるようになりました」と話します。

今では丁寧な作業が評判となり、男性たちが見に来るほど腕前を認められ、修繕の依頼を受けることも増えました。この仕事はソキナさんにとって、生活を支える手段であると同時に、自分の強さを取り戻す大切な機会にもなっています。


  
シェルターの修繕を行うロヒンギャ難民

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事業を通して得られた大きな成果

今回の事業を通じて、キャンプの暮らしにはさまざまな前向きな変化が生まれました。

✔ 安全な水と衛生施設の確保
✔ 安全な住居の整備
✔ 女性の生計向上と社会参加の促進
✔ 住民主体の維持管理体制の構築
✔ コミュニティの結束と自信の向上

こうした変化は、生活基盤の改善にとどまらず、キャンプで暮らす人々が自分たちの未来をつくろうとする一歩につながっています。

祖国ミャンマーへの安全な帰還の見通しは立たず、避難生活は長期化しています。さらに、2024年初頭から2025年7月までの18ヶ月で約15万人の新たな難民がバングラデシュに流入しています。難民キャンプでは安全な水へのアクセスや安全な住居、栄養のある食事など、生存に必要な基本的なサービスが依然として不足しています。こうした厳しい状況が続く中、キャンプの暮らしを支えるためには、今後も継続した支援が不可欠です。一方で、今回の取り組みが示したように、ロヒンギャの人々は困難の中でも前へ進む力を持っています。セーブ・ザ・チルドレンは、これからもその歩みを支え続けていきます。

本事業はジャパン・プラットフォームおよび東京ユニフォームからのご支援と、個人・法人の多くの皆さまのご寄付により実施されています。


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(海外事業部 ロヒンギャ難民事業担当)

 

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