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シリア危機
(公開日:2013.12.19)

「難民」ではなく、「ひとりの子ども」として(2013.12.19)

 

シリア紛争の長期化に伴い、セーブ・ザ・チルドレンは、ヨルダン・イラク・レバノンなどの周辺国に逃れてきたシリアの子どもたちをサポートする支援を行っています。
今回は、シリアの子どもたちのサポートに、「日本の経験」が役に立つというレポートです。
 

「難民」・「国内避難民」(IDP)は日本とは関係のない話?

皆さんは「難民」という言葉を聞くとどんなイメージが浮かびますか?
着のみ着のまま、とりあえず持てるだけの荷物を持って逃げる人々でしょうか?
それとも、広大な難民キャンプの中に暮らす人々のイメージでしょうか?

「難民」というと、何となく、アフリカやシリアなど、日本から遠い、どこか特別な地域で起きているような気がしますね。



 





 


 


では、この「難民」はどういった人々なのでしょうか?
 
みな、家族がいました。大人は会社や役所や自分の店や畑で働いていました。

子どもたちは学校に行き、友達とサッカーをしたり、公園で遊んだり、お祭りの時期には、日本のお盆やお正月のように親戚が集まり、楽しく食事を一緒にしたり、プレゼントをもらったりと、ずっと普通に生活をしていました。彼らはみな、生まれた時から「難民」だった訳ではありません。

ところが、戦争が始まり、一晩で自分の住んでいる町の様子が変わってしまったり、自分の住んでいる町から引き離され、友達と離ればなれになったり、時には家族を失ってしまったりという経験を子どもたちはしています。


 


 


シリアでは、最近までは、学校に通うなど日常に近い生活が送れていた子どもたちも、安全を求めて次々と自分の生まれた地域を後にせざるをえない状況が生まれています。そして、これは実は、日本の子どもたちの体験に非常に似通っているのです。


 


 


「日本には難民の子どもなんていないじゃないの?」という声が聞こえてきそうですね。
それでは、「難民」を「被災者」に置き換えてみるとどうでしょうか?


 


 


実は「難民の子どもたちの経験」は、まさしく遠く離れた国でだけ起きたことではなく、この日本でも起きていたことなのです。

シリアの子どもたちが経験している「自分の住む地域から/家から離れる」という経験は、実は2011311日以降に多くの東北の子どもたちが体験した経験にとても似通ったところがあるのです。

東日本大震災の後、日本でも多くの子どもたちが自分の住む家を離れ、震災直後は避難所で、その後は仮設住宅での生活を送っています。

家族を亡くしたり、友達を亡くすという辛い出来事も、子どもたちは経験してしまったのです。


「子どもに必要な支援」とは?
それでは、このような経験をした難民の子どもたち、ようやく隣の国にたどり着き、いわば「仮設住宅」とも言えるような難民キャンプ生活を始めることになります。
では、その時に、子どもたちにとって、もっとも必要な支援はなんでしょうか? さぁ、あなたなら、子どもたちにとって、何が一番大事だと思いますか?
 

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1.食糧
2.人形
3.ノートと筆記用具
4.服

5.サッカーボール

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実は、セーブ・ザ・チルドレンは、上に掲げたどれもが同じように大切だと考えています。
「え? まずは食糧で、人形やサッカーボールは後でもいいでしょう?」という声が聞こえそうですね。

人が人であるために、個人ひとりひとりがその人らしく生きるためには、「衣食住」はもちろん重要なことですが、それだけでは十分ではないのです。

「衣食住」が足りること―― 最低限の基準を満たすことはもちろん重要ですが、身体も知能も心も発達段階にある子どもたちにとっては、それだけでは十分ではありません。
スポーツや遊びを通じて学ぶ「達成感」「フェア精神」「チームワークの大切さ」「問題を解決しようとする工夫」などなど、子どもの経験するスポーツや遊びには、子どもたちの心と身体の発達に欠かせない、とても重要なことを学ぶ機会がたくさん隠されているのです。

そして、子どもが子どもらしく生活をできる、ということは、災害発生時や紛争下などの緊急事態の時ほど、その重要性を一層増すのです。


 


 


セーブ・ザ・チルドレンが考える子どもらしさを失わないための経験の重要さ
東日本大震災でも、家族や友達を失う、家や町が津波に飲まれるのを目のあたりにする、という辛い出来事を、多くの子どもたちが体験しました。また、津波が去った後も、長期間にわたって家から離れ、友達にも会えず、避難所にて集団生活を送るというストレスの多い生活にさらされました。そのような環境の下では子どもも大きなストレスを抱え、夜眠れない、暗闇におびえる、という事例が報告され、「大人が暗い顔をしているから、自分たちが遊んだり、笑ったりしていいのか分からない」という子どもの声も聞かれました。 2013318SCJブログ「遊びたいけど、みんなが悲しそうだから・・・

家族を失う、友達を亡くすという辛い経験をしてしまった子どもにとっては、遊びやスポーツを通じて、「無心」になるひと時を取り戻す、楽しいと思える一瞬を取り戻す、という経験が、心の苦痛を癒すためにとても重要なのです。

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、東日本大震災発生直後の316から、宮城県・岩手県を中心に、避難所で生活する子どもたちが安心して集い、遊べることのできる「こどもひろば」を設置しました。このような「子どもが子どもらしくいられる時間と場所の確保」という視点は、特に災害直後の混乱の中では、後回しにされがちです。

職員・ボランティアがこどもひろばに常駐し、安心・安全な子どもの居場所づくりを行うことで、被災後の子どもたちの発達や育ちを支えてきました。この「こどもひろば」の設置は、子どもたちの間で好評であったのみならず、避難所で生活をする保護者の方からも「子どものおびえた表情が減った」「子どもの夜泣きやおねしょが減った」「こどもひろばがある時間、自分は他の家事や自宅内の整理を行うことができた」と大変好評でした。



(「2011330SCJブログ あらためて「こどもひろばのこと


「難民」ではなく、「ひとりの子どもとして」

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、東日本大震災での経験を活かし、2011年から続くシリア紛争の影響を大きく受けている地域にて、子どもたちに「子どもらしい経験」を提供することを目的に活動しています。次回は、活動の詳しい様子をお知らせします。


(報告者:海外事業部 田邑恵子)

 


 

 

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