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シリア危機
(公開日:2023.01.17)

【シリア危機】国内避難民キャンプの水衛生環境改善と子どもの保護支援

 

シリア危機が始まって11年以上が経過しますが、依然として国内では1,460万人が人道支援を必要としており、そのうち国内避難民は350万人とされています¹



支援先のシリア国内避難民キャンプの様子


シリアでは、継続的な武力衝突により、人道支援を必要とする人たちの状況はさらに悪化しています。


えば、この地域では現在約80万人が簡易テントなどのシェルターで暮らしていると考えられていますが、2022年初頭に、吹雪や強風、洪水により約1万基のテントが破壊され²、人々の生活環境は劣悪な状態です。

また、新型コロナウイルス感染症の拡大や政情不安などは、人々の生活費にも影響を及ぼしており、国連人道問題調整事務所(OCHA)は、調査対象者の93%が十分な食料の確保が困難になっていると報告しています³

そして、このシリアの国内避難民キャンプに暮らす人たちにとっての大きな課題のひとつが水・衛生に関する問題です。

この地域の人たちは、水道インフラの未整備により、水の供給を人道援助を必要とする、あるいは高額で衛生面に不安のある水を近隣住民から購入せざるを得ない状況に陥っています

そのため、十分で安全な水の利用が難しくなるとともに、水を媒介とする感染症の増加にもつながっています。

現地の水・衛生に関するワーキンググループによると、20225月時点で45万人が水衛生支援を必要としており、うち約18人が周辺の水道システムの修繕を、約15人が衛生促進に関する支援を必要としているとされます。




国内避難民キャンプ内のある世帯の貯水タンク内の様子(汚れた水が確認できる)




整備が必要な給水所



さらに、住環境の悪化、生活必需品の価格高騰、長期の避難生活などにより、子どもに対する暴力・虐待・搾取、児童労働、子どもの兵士としての利用、児童婚など、子どもの権利を脅かすリスクが高まっています

その一方で、これらの脅威から子どもを守るための支援体制が整っていないため、63%の地域で、子どもの保護に特化したサービスが求められています。加えて、これらの脅威に晒された子どもたちの心理的ストレスに対処するため、39%の地域で心理社会的支援が必要とされています


このように、シリアでは水・衛生と子どもの保護、心理社会的支援に関する喫緊の課題に対し、早期の対応が必要となっています。

これらの状況を改善するため、私たちセーブ・ザ・チルドレンは、パートナー団体との協働で、2022815日に支援を開始しました。

この支援では、シリアで、脆弱な状態にある子どもとその家族に対して、水・衛生支援と子どもの保護・心理社会的支援を包括的に提供することで、生活環境の改善と人々のウェルビーイング(健やかな成長)の向上を目指します。

この事業では、以下の3つの柱を基に活動を行っています。

活動1:委員会の設置


避難民を中心メンバーとする委員会を設置し、月例会議の実施をサポートしています。この委員会メンバーは、下記の水・衛生支援と子どもの保護に関する活動を行う上での重要なパートナーとなります。

活動2:水衛生支援


既存の水施設の整備に加え、水質を保つための塩素投与ポンプおよび配水パイプの設置による水道システムの構築を通して、避難民が安全な水を確保しやすくします。このシステムの運用には一定のコストがかかりますが、水を利用する避難民が利用料を支払うことでそのコストの回収をし、同システムの持続性を担保します。また、水道システム全般やコスト回収、水質検査の実施を含む水質管理について、上述の委員会に対して、研修を提携団体と協力して研修を行い、事業終了後の持続性を保つことを目指しています。




設置中の配水パイプ


活動3:子どもの保護・心理社会的支援

活動1で設置した委員会および提携団体に対して、子どもの保護・心理社会的支援にかかわる基礎についての研修を行います。その上で、委員会、提携団体、セーブ・ザ・チルドレンが協力しながら、次の活動を実施します。

・心理的ストレスを抱える子どもたちに対して多様なレクリエーション活動を実施し、心の健康や子どもが本来的に備えている回復力(レジリエンス)を高めます

・啓発セッションの実施を通し、国内避難民の子どもを暴力などから守るための理解促進と、親・養育者との協力関係強化につなげます

・定期的な活動のモニタリングと評価の実施を通して、確実な成果につなげます

202212月現在、活動2の水道インフラ整備は大詰めを向かえています。また、活動3の子どもの保護にかかわる活動も軌道に乗り始めており、11月にはこの事業で初めてのレクリエーション活動を実施しました。

多くの子どもたちは20201月からキャンプで生活していますが、このような活動は初めてとなるため、積極的に参加していました。引き続き、子ども自身を含むあらゆる関係者と緊密に協力しながら、支援を続けていきます。

本事業は皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームの助成を受けて実施しています。

(海外事業部 水野将伸)











 

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