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シリア危機
(公開日:2021.03.08)

【レバノン】シリア危機から10年−子どもたちの教育の継続のために

 
2011年3月に勃発したシリア危機は、発生から10年が経ちました。現在も続く国内での混乱の影響で、シリア国内から周辺国に逃れている難民は2021年3月現在、560万人にのぼります。隣国レバノンで生活するシリア難民は、国連に登録されている人数では86万人ですが、登録されていない人も含めると約150万人と言われています。


今も戦闘が続くシリア北西部イドリブの町の様子

レバノンで生活するシリア難民の子どもたちは、基本的には公立学校で教育を受けられることになっています。生徒数の増加に伴い、多くのレバノンの公立学校では二部制にするなどの対応を行っていますが、それでもすべての子どもを受け入れられるわけではありません。また、シリア難民世帯の75%がレバノンの貧困ライン(1日3.84米ドル(約417円))以下で生活しているなか、学校が遠く、交通費が払えないために学校に通うことができない子どももいます。そのため、ユニセフの調査によれば、シリア難民の学齢期の子どもの約40%が学校に通えていません。

2020年、新型コロナウイルス感染症がレバノンでも拡大するなか、セーブ・ザ・チルドレンは、主に難民の子どもたちを中心に、子どもたちが今、生活や将来について不安に思っていることなどについて直接聞く機会を設けました。

子どもたちからは、経済状況の悪化により、家計を支えるために働かざるを得なかったり、幼くして結婚を強要されたりする子がいること、また、新型コロナウイルス感染症拡大予防のため休校措置や移動制限が課されるなか、家庭にいる時間が長くなったことで、過度な家事の負担を強いられたり、虐待に遭うリスクも高まっていることがあげられました。

また、教育機関の休校措置に伴いオンライン授業の実施が推進されていますが、特に経済的に厳しい状況にある家庭では、インターネット環境や携帯電話などの通信機器が整っておらず、オンライン授業への参加が困難な子どもも少なくないこともわかりました。


オンラインにて、異なる地域に居住する子どもたち
(上段右、中段左から2番目)の声を聞く機会を設けました

このような状況において、子どもたちが質の高い教育を受けられるよう、セーブ・ザ・チルドレンは、2020年10月よりレバノン北部において、シリア難民や、貧困など特に脆弱な状況に置かれたレバノンのホストコミュニティの子どもたちに教育の機会を提供する事業を開始しました。

この事業では、事業対象地域で学校に通うことができていない子どもたちを特定し、公立の学校に編入、または再び通うことができるように支援します。また、長い間学校に通っていなかった子どもたちがスムーズに公立学校に復学できるよう学習支援センターを設け、基本的な読み書きや計算の授業を実施するほか、一時的に学校に通うことができなかったために学習に困難を抱える子どもに対して、補習授業を行います。

さらに、子どもたちが安全にこれらの授業に参加できるよう、学習支援センターの設備の改善も行うとともに、新型コロナウイルス感染症の感染予防のための衛生啓発活動も実施します。また、新型コロナウイルス感染症拡大により、レバノン国内で移動制限が課される状況が継続しているため、オンラインでの授業なども取り入れていく予定です。

子どもたちが学校に通えない期間が長くなるほど、学習に遅れが生じ、復学が難しくなり、中退につながってしまうことが懸念されます。学校を中退することにより、将来への夢を諦めざるを得なくなってしまう子どももいるでしょう。「失われた世代」をつくらないために、セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちの教育の機会を守る活動を実施していきます。

本事業は、皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

海外事業部 福田直美

 

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