シリア危機(公開日:2013.04.19)
シリア難民支援〜「部屋が暖かくなって、安心して夜眠れるようになったわ」〜(2013.4.25)
シリアの内戦が始まってから2年。シリア国内の子どもたちの状況はますます厳しさを増しており、心配な状況が続いています。(シリア紛争から2年に関する記事はこちら)
内戦によってシリアから周辺国に逃れた難民は、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)に難民登録をしている、もしくは登録を待っている人数だけで136万人を越えました(2013年4月18日現在)。UNHCRに難民登録をしていない世帯も含めると、実際の難民数はかなり多いと言われています。(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンがシリア難民支援を開始した2012年12月12日時点では、難民数は約52万人と言われており、実に、4ヶ月で約80万人が難民になったことになります。)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、国外へ逃れてきたシリア難民の子どもたちを支援するため、2012年12月13日から2013年2月1日まで、レバノンで活動を実施しました。
今回のブログでは、難民家族に対する支援についてご報告します。
前回のブログで、難民家族がどのような生活を送っているかを簡単にご報告しました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもたちが寒さに凍えることなく、レバノンの厳しい冬を少しでも暖かく過ごせるよう、
・101世帯に冬服と毛布
・229世帯に2〜3か月分の暖房燃料
・238世帯に冬に備えるための住居修繕キット
を配布しました。
事業地は気温が昼間は10度〜15度、夜は5度くらいまで下がります。
1月中旬には大雨、その後吹雪が2日間続きました。難民家族の家の中には、
50cmほど床上浸水した家々もありました。
まず、配布前に・・
レバノンでは難民キャンプが設置されておらず、シリア難民は、工事途中の建物や、廃屋、車庫など、生活には不向きな建物を借りて生活しています。そのため、どこに、何人の難民が暮らしているのかを把握することは容易ではありませんが、支援の必要性が高い家庭を特定するため、難民家族の家を一軒ずつ訪問し、世帯人数、子どもの数、生計状況、生計手段などを調査しました。そして、UNHCRに登録していないために国連機関から支援が受けられない、子どもが多い、生活環境が劣悪・・といった理由により、特に支援が必要と考えられる家庭を選定し、特定の物品と引き換えることのできる券を配布しました。
調査票を使って質問をする職員
冬服と毛布の配布
引換券を受け取った家族は、衣料品店にて特定の冬服・毛布と引き換えました。物を直接手渡すのではなく、引換券とすることで、子どもたちの体のサイズにあった冬服や、好みの色を、家族や子ども自身が選ぶことができました。
衣料品店の引換時の様子
引き換えたコートを着た女の子(3歳)、妹(3ヶ月)と。
2週間前にシリア北部のBenishから、親戚を頼ってトルコ経由でレバノンに来ました。シリアでは、お父さんは携帯電話の修理、お母さんは教師をしていましたが、シリアの家を売ってレバノンへ避難。レバノンでの生活は物価が高く、厳しいと訴えていました。
燃料の配布
引換券を持っている世帯を1軒ずつ訪問し、燃料タンク車で配布しました。寒さが厳しい土地で、ストーブは何とか手に入っても、日々利用する燃料がなかなか購入できない中、配布によって暖かく過ごすことが可能になりました。
ドラム缶に燃料を注入
住居修繕キットの配布
前回のブログでもご紹介したように、窓がないような家々に人々は住んでいます。そのような家に住居修繕キットを提供することで、冬の寒さに備えるための簡単な修繕をできるよう支援しました。
ガレージは天井が高く、天井に隙間があるなど熱効率がよくないため、簡易天井を木材やベニヤ板でつくり、暖房の熱効率を高めています。
工事途中の家やガレージなどに家賃を払って住んでいる家庭もありましたが、家賃(約2〜3万円/月)が払えず、テント生活を始める家族も増えてきています。(テント生活でも、土地代(約5万円/年)を支払っていますが、建屋を借りるよりは安くすむため、テントを選択する家庭が増えています。)
テントで生活をしていた家庭には、防水性が高く風を防ぐことができるブルーシートや、テントを補強する木材を提供しました。
「部屋の中がとても暖かくなった。夜も安心して眠れるわ」と話してくれたおばあさん
雨や雪の重みに耐えられるよう、木で補強
テント密集地帯での配布の様子
3ヶ月前にシリアのアレッポからやってきた、テントで生活する家族。
農作業や市場の仕事を手伝って、日雇いで収入を得ています。
生活は厳しいと言いながらも、いつも笑顔で迎えてくれました。(真ん中は筆者)
厳しい冬を乗り越えるため、人々は助け合いながら、日々を過ごしています。レバノンは物価が低い国ではありません。家賃を払いながら、生計手段もほとんどないままにレバノンで暮らし続けることは難民の家族にとって厳しいものです。レバノンでの生活は大変で、シリアに帰りたいけど帰れない・・。そんな想いを抱えている何家族もの難民に出会いました。
未だ続くシリア紛争。彼らが母国に戻れる日を願いながらも、長期化するレバノン生活の助けに少しでもなるよう事業を実施し、難民家族への支援は2013年2月1日をもって終了しました。(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは2013年4月9日より、レバノンにて青少年の難民支援を開始しています。)
次回のブログでは、同時期に行った幼稚園に対する支援についてご報告します。
これからも皆様の温かいご支援をよろしくお願いいたします。
(報告:海外事業部 宮脇麻奈)
本事業は皆様からのご支援とジャパン・プラットフォームの助成により実施されました。