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シリア危機
(公開日:2022.03.15)

【シリア危機から11年】路上で働くシリア難民の子どもに学びの機会を−アリさんの体験−

 
2022年3月15日、シリア危機は11年目を迎えます。紛争や災害を逃れて難民となる人々の人数は近年増え続けていますが、難民の出身国として依然として最も多いのがシリアです。シリア危機から11年を迎える現在も、不安定な国内情勢が続き、570万人に近い人たちが近隣国などで避難生活を送っています。


アリさん

レバノンで避難生活を送る10歳のアリさんもその一人です。

シリア危機が激化しレバノンへ避難した2015年当時、アリさんはまだ4歳でした。母親ときょうだいとともに、父親の助けでシリアからレバノンへ避難し、父は後から国境を越えてレバノンで合流する予定でした。

アリさんたちはレバノンで難民の人たちが集まって暮らす地域にたどり着き、異国の地で頼れる人もいないなか、母親は一人で苦労をしながら子どもたちを守り夫の到着を待っていましたが、数週間後に死亡したとの知らせが届きました。

レバノンに避難してから6年が経過した現在、アリさんは10歳です。この6年の間、アリさんは母親ときょうだいといくつもの難民居住地域を転々とし、現在は北レバノン県ミニエ市に居住しています。父親がおらず、自分の家と呼べる場所もなく、貧しい暮らしをする中、母親のために少しでも家計の支えになれるようにと、きょうだいと一緒に毎日遅い時間まで路上でガムやティッシュを売るようになりました。

このような状況の中、アリさんは2022年1月に開始したセーブ・ザ・チルドレンの「基本的な読み書き・計算」の授業を受講することになりました。父親を亡くしたことで今でも大きな心理的苦痛を感じながら生活している10歳のアリさんにとって、教育を受けることができるということは、今後の安心な生活、安定した仕事、そして将来への希望につながりました。

アリさんは、遅くまで路上で働いた後でも、授業に参加するために必ず難民居住地まで戻り、課題に取り組み、教員には積極的に質問をして頻繁にコミュニケーションを取る優秀な生徒です。教員はみんな、アリさんの読み書きの学力の向上、出席率の高さ、そして学習への取り組みの姿勢に感心しています。

アリさんの母親は、楽しみながら真剣に授業を受ける息子の姿を見てとても喜んでおり、「今はアリが基本的読み書き計算の授業に在籍し続け、将来の目標を達成するための能力とスキルを身につけることが最も大事なことであると思っています」と述べています。


授業の一環で絵を描く様子

シリア危機開始から11年―今でもアリさんのような多くの子どもたちが難民として生活しながら、家計を助けるために働き、教育を受けられずにいます。

セーブ・ザ・チルドレンは、今後もこのような子どもたちへの質の高い教育の機会の提供、心理社会的支援、そして児童労働などのリスクが高い子どもたちを個別支援へつなげる活動を実施し、子どもが安心・安全な環境で学習を継続できるよう支援していきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。

(海外事業部 レバノン教育事業担当 佐藤秀美)

 

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