シリア危機（公開日：2024.03.11）
【シリア危機】トルコで活動開始：シリア難民と地域の青少年、女性のレジリエンス向上にむけて生計支援・心理社会的支援
地震により職を失ったデルヤさん（右）と話すセーブ・ザ・チルドレンのスタッフ
シリア危機が始まってから13年が経ちました。
紛争から逃れるため、約508万人がシリアから国外へ避難しています。トルコはそのうち約318万人を受け入れており、世界最大の難民受け入れ国です1。首都イスタンブールに避難し、一時保護下にあるシリア難民は50万人を超えています2。
トルコでは、新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナ危機の影響により、物価高が急速に進み、経済状況は悪化の一途をたどっています。
2021年時点でトルコ全体の失業率は12％で3、18歳から29歳のトルコ人、シリア人の失業率はそれぞれ31％、38%でした4。このような状況の中、2023年2月にトルコ南部で大地震が発生し、トルコ経済に1,036億ドルの損害を与えたとされています5。
また、地震により約300万人がイスタンブールを含む他県へと避難を余儀なくされ6ました。さらに、国際労働機関(ILO)によると、地震で数十万人が失業したことで、貧困や非正規雇用、児童労働が増加すると予測されました7。
紛争から逃れるため、約508万人がシリアから国外へ避難しています。トルコはそのうち約318万人を受け入れており、世界最大の難民受け入れ国です1。首都イスタンブールに避難し、一時保護下にあるシリア難民は50万人を超えています2。
トルコでは、新型コロナウイルスの感染拡大や、ウクライナ危機の影響により、物価高が急速に進み、経済状況は悪化の一途をたどっています。
2021年時点でトルコ全体の失業率は12％で3、18歳から29歳のトルコ人、シリア人の失業率はそれぞれ31％、38%でした4。このような状況の中、2023年2月にトルコ南部で大地震が発生し、トルコ経済に1,036億ドルの損害を与えたとされています5。
また、地震により約300万人がイスタンブールを含む他県へと避難を余儀なくされ6ました。さらに、国際労働機関(ILO)によると、地震で数十万人が失業したことで、貧困や非正規雇用、児童労働が増加すると予測されました7。
地震が起こった地域
シリア難民の就労について、トルコ政府は就労許可を出していますが、煩雑な申請手続きや限られた雇用機会、言語の違いなど、さまざまな障壁により、多くのシリア難民は職に就くことが困難な状況に置かれています。
また、ILOが2021年に実施した調査では、シリア難民の青少年は、就労のために必要な知識や技術が不足しており、就労の機会を得ることが難しく、働く意欲や仕事の継続を困難にしている要因だと指摘しています8。
しかし、就労していない青少年の86%は「これまで就業に関連した支援を受けたことがない」と答えており、就労機会の獲得や就労のための技術向上に関する支援を公的・民間企業から受けたことがあるのはそれぞれわずか 6%、4%でした9。
また、高い失業率や就労機会の減少は、人々の精神的・心理的な健康(ウェルビーイング)に影響を及ぼします10。
安定した仕事を見つけることに対する不安を感じており、将来に希望を持つことが難しい11ことから就労に前向きに取り組むことが難しい青少年も多く、そのような人たちに対する心理社会的支援の重要性は高いことが確認されています12。
さらに、世界保健機構（WHO）によると、2023年2月に発生した地震により、町や自宅の激しい損傷、友人や家族、同僚を失ったことで、地域社会や個人の心理的影響は計り知れないとしています13。
こうした状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンはシリア難民と、特に生活の厳しいトルコの青少年や女性を対象に、生計向上支援と心理社会的支援を開始しました。
事業では、経済的に厳しい状況に置かれたシリア難民とトルコの青少年や女性が、持続的に生計を向上できるようになることを目指し、イスタンブールで就業・起業に関する支援情報のデータベース/マッピングを実施し、就業・起業に関するカウンセリング、スキルの向上や、実務経験を積むための能力強化研修を実施します。
また、活動の参加者が必要な心理社会的支援に関する情報を得ることができるように、グループでの情報共有セッションを実施します。セッションなどを通して、心理的な負担が高いと判断されたシリア難民や地域の参加者には、心理カウンセリングなどの個別支援を実施します。
これらの活動を通して、脆弱な状況に置かれたシリア難民やトルコの青少年の生計向上とウェルビーイングの向上を目指します。
本事業は皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
（海外事業部 小山光晶）
1 UNHCR, SituationSyria Regional Refugee Response 2024年2月8日閲覧
2 Asylum Information Database (AIDA), Country Report:Turkey (2022), p9
3 World Bank, Unemployment, total (% of total laborforce) (modeled ILO estimate) – Turkiye, 2024年2月9日閲覧
4 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p9
5 Government of Türkiye, Türki̇ye earthquakes recovery and reconstruction assessment(2023), p10
6 Support to Life (STL) Turkey-Earthquake: EmergencySituation Report (05.02.2024) - Türkiye, p1
7 ILO, The effects of the February 2023 earthquake on thelabour market in Türkiye - Türkiye 2024年2月9日閲覧
8 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p59
9 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p40
10 Virgolino A, Costa J, Santos O, Pereira ME,Antunes R, Ambrósio S, Heitor MJ, Vaz Carneiro A. Lost in transition: asystematic review of the association between unemployment and mental health. JMent Health. 2022 Jun;31(3):432-444. doi: 10.1080/09638237.2021.2022615. 2024年2月9日閲覧
11 Save the Children, A Youth Centered ParticipatoryAssessment in Turkey: Understanding refugee and host community youth’sperceptions, challenges and needs (2021), p42
12 UNDP, UNHCR, Türkiye 3RP Country Chapter2023-2025, p12,15
13 WHO, Dealing with the psychological aftershocks of theTürkiye earthquakes: why mental health and psychosocial support are sodesperately needed, 2024年2月9日閲覧
シリア難民の就労について、トルコ政府は就労許可を出していますが、煩雑な申請手続きや限られた雇用機会、言語の違いなど、さまざまな障壁により、多くのシリア難民は職に就くことが困難な状況に置かれています。
また、ILOが2021年に実施した調査では、シリア難民の青少年は、就労のために必要な知識や技術が不足しており、就労の機会を得ることが難しく、働く意欲や仕事の継続を困難にしている要因だと指摘しています8。
しかし、就労していない青少年の86%は「これまで就業に関連した支援を受けたことがない」と答えており、就労機会の獲得や就労のための技術向上に関する支援を公的・民間企業から受けたことがあるのはそれぞれわずか 6%、4%でした9。
また、高い失業率や就労機会の減少は、人々の精神的・心理的な健康(ウェルビーイング)に影響を及ぼします10。
安定した仕事を見つけることに対する不安を感じており、将来に希望を持つことが難しい11ことから就労に前向きに取り組むことが難しい青少年も多く、そのような人たちに対する心理社会的支援の重要性は高いことが確認されています12。
さらに、世界保健機構（WHO）によると、2023年2月に発生した地震により、町や自宅の激しい損傷、友人や家族、同僚を失ったことで、地域社会や個人の心理的影響は計り知れないとしています13。
こうした状況を受け、セーブ・ザ・チルドレンはシリア難民と、特に生活の厳しいトルコの青少年や女性を対象に、生計向上支援と心理社会的支援を開始しました。
事業では、経済的に厳しい状況に置かれたシリア難民とトルコの青少年や女性が、持続的に生計を向上できるようになることを目指し、イスタンブールで就業・起業に関する支援情報のデータベース/マッピングを実施し、就業・起業に関するカウンセリング、スキルの向上や、実務経験を積むための能力強化研修を実施します。
また、活動の参加者が必要な心理社会的支援に関する情報を得ることができるように、グループでの情報共有セッションを実施します。セッションなどを通して、心理的な負担が高いと判断されたシリア難民や地域の参加者には、心理カウンセリングなどの個別支援を実施します。
これらの活動を通して、脆弱な状況に置かれたシリア難民やトルコの青少年の生計向上とウェルビーイングの向上を目指します。
本事業は皆さまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。
（海外事業部 小山光晶）
1 UNHCR, SituationSyria Regional Refugee Response 2024年2月8日閲覧
2 Asylum Information Database (AIDA), Country Report:Turkey (2022), p9
3 World Bank, Unemployment, total (% of total laborforce) (modeled ILO estimate) – Turkiye, 2024年2月9日閲覧
4 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p9
5 Government of Türkiye, Türki̇ye earthquakes recovery and reconstruction assessment(2023), p10
6 Support to Life (STL) Turkey-Earthquake: EmergencySituation Report (05.02.2024) - Türkiye, p1
7 ILO, The effects of the February 2023 earthquake on thelabour market in Türkiye - Türkiye 2024年2月9日閲覧
8 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p59
9 ILO, Report: Youth employment in Turkey: Structuralchallenges and impact of the pandemic on Turkish and Syrian youth (2022), p40
10 Virgolino A, Costa J, Santos O, Pereira ME,Antunes R, Ambrósio S, Heitor MJ, Vaz Carneiro A. Lost in transition: asystematic review of the association between unemployment and mental health. JMent Health. 2022 Jun;31(3):432-444. doi: 10.1080/09638237.2021.2022615. 2024年2月9日閲覧
11 Save the Children, A Youth Centered ParticipatoryAssessment in Turkey: Understanding refugee and host community youth’sperceptions, challenges and needs (2021), p42
12 UNDP, UNHCR, Türkiye 3RP Country Chapter2023-2025, p12,15
13 WHO, Dealing with the psychological aftershocks of theTürkiye earthquakes: why mental health and psychosocial support are sodesperately needed, 2024年2月9日閲覧
