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日本/東日本大震災/福島
(公開日:2013.10.09)

福島:放射能について学ぶ「キュリー学園」〜「フクシマ ススム ファンド」団体活動紹介〜放射線衛生学研究所 (2013.10.09)

 
今、みなさんは日常生活で放射能について考えることが、どれ位ありますか?福島県での原発事故から2年半が経ち、すっかり事故前の生活に戻ったという人もいるかもしれません。その一方で、地域によっては、今でも放射能の影響を受け、放射能に向き合いながら、日々を過ごしている子どもたちもいます。

 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)は、2012年秋に福島の子どもの声を聴く「子どもの声調査」を実施し、2013年春に、調査に協力してくれた小学生から高校生の子どもたちに調査結果を報告しました。その際、子どもたちからは放射能について、「難しくてよく分からない」、「情報はあふれているけど何を信用してよいか分からない」、「正しい情報が欲しい。情報を得てどれが正しいか自分で判断したい」という切実な意見が出される反面、「あまり考えたくない」、「知っても仕方ない」というような声も聴かれました。

 私たちは子どもたちを放射能の影響から守っていくと同時に、それぞれの子どもが、放射能について知り、情報を読み解き、自分なりに判断・行動していく力をつけることが必要であると考えます。また、同様の考え方を持って、活動をしている人たちや団体もあります。放射能と向き合い、放射能リスクをどのように減らしていけるかを福島に住む子どもとおとなが一緒に学んでいく講座を開催しているのが、NPO法人放射線衛生学研究所です。放射線衛生学研究所は、福島県を中心に市民の立場から地域の人たちに対する放射線教育、放射能測定、被ばくに関する調査や、子どもを対象とした放射線教育「キュリー学園」も実施しています。SCJでは、放射線教育の活動を、SCJとサントリーの助成事業※「フクシマ ススム ファンド」を通じて支援しています。

測定機器を自分で触って、自分の目で確かめる講座
 夏休み真っ只中の8月7日、私たちは、福島県二本松市で開催された「キュリー学園夏休み特別講座」にお邪魔しました。今回の講座は、保護者の方からの要望で開かれた特別講座で、福島県内外に住む小学校4年生から中学校3年生までの子ども4名と保護者の方々が参加しました。この日、子どもたちは、講師である放射線衛生学研究所理事長の木村真三さんや職員の方の説明を聞きながら、理科の実験のように、自分で測定器を使って放射線量を測っていき、放射能について学びました。


 (左)子どもたちに放射性物質の取り扱いについて説明する木村さん。(右)測定結果を記録していきます。

 木村さんからは、講座が始まると、「放射能は目に見えないし、匂わない。目に見えないからこそ怖いと思って付き合わなければいけないよ。」というメッセージを伝え、実験をするにあたって、放射性物質の説明と扱い注意点が伝えられます。最初の学習は、参加者のひとりが自宅付近の数か所から採ってきた土の測定です。まず、木村さんが、土に測定器を近づけ、土の表面から出ている放射線を測ります。測定器の使い方を教えてもらいながら、子どもたちは、真剣に測定した数値を記録していきます。


(左)土の放射線量を実際に測ってみます。(右)食品用放射能測定器Food Light。親子で一緒に測定結果を確かめます。
 
続いて、ウクライナで開発されたという食品用放射能測定器を使って、食べ物の代わりに、土の汚染度を測ります。測定器の中に物質を入れると、側面にあるランプが光ります。これは、測定する物質の汚染度を示すもので、青は「みんな食べていい」、黄色は「子どもは食べてはいけない」、赤は「みんな食べてはいけない」というサインです。土を入れて、ボタンを押すと、パッと黄色に光りましたが、しばらくすると赤に変わりました。木村さんは「毒と放射能は一緒で、毒は調べないと分からない。調べる装置がないと毒があるか分からないので、測らないで食べるのはダメだよ。」と子どもたちに伝えます。


食品用放射能測定器Food Light

  子どもたちは、この他にも、線源から離れれば離れるほど、放射線量が下がっていくことを確認するための実験をしたり、食品の放射能検査に使われるゲルマニウム半導体検出器の測定法を見学したりしました。


左)線源から10cm〜150cmまでの地点のそれぞれの線量を測ります。(右)ゲルマニウム半導体検出器。この中に検査したい物質を入れます。

 あっという間に予定の2時間が過ぎました。最後に、講座を始める時にみんながポケットに入れた線量計の線量を確認してみます。講座を受けている2時間で線量計の数値に変化があったか見てみると、表示は0でした。木村さんは、0以下の小数点は表示されないことと、原発事故の前の線量は、だいたい1日1マイクロシーベルトであったと子どもたちに説明します。参加した子どもたちからは、「実際に実験してみて、調べただけで分からないことがわかって良かった」「学校では、あまりやっていない。これから活かしていきたいです」「放射能は危険ということがわかって良かったです」という感想が出ました。

子どもたちが自分の身を守れるように
 後日、私たちは、放射線衛生学研究所を訪問し、研究所の活動について伺いました。木村さんたちは、キュリー学園以外に、学校でも子どもたちを対象とした講座を行っています。講座を受けた子どもたちからは、「放射能について身を持って分かった」「自分たちの努力で身を守れることが分かった」という反応があるそうです。先日のキュリー学園夏休み特別講座に参加した子どもからも、「将来科学者になりたい」という夢を語ってもらったそうです。放射線衛生学研究所は、これまで、二本松市の教育委員会と連携して、市内の小中学校向けの講座や教員向けの研修を実施していますが、今後は小学校と中学校の放射線教育のカリキュラムづくりをしていく予定だそうです。

地域の仲間づくり
 木村さんたちは、地域の人たちがリーダーシップを持って、草の根レベルで活動が広がることを目指していて、そのためには仲間づくりが大切だと言います。例えば集落のイベントで、お年寄りと仲間になる。お年寄りは、その地域で発言力や間接的な影響力があるので、活動が口伝えで伝わり周りが動くそうです。「じっじやばっぱ(おじいさんやおばあさん)を巻き込むということは子どもを守ることにつながる。心のキャッチボールをすれば仲間だと思ってくれる。」という言葉から木村さんの想いが伝わってきました。地道で時間がかかる活動だけど、そこから草の根で広げていく。地域に受け入れられ、残っていく活動とはこういうものであると感じます。

※「フクシマ ススム ファンド」とは、SCJとサントリーホールディングス株式会社との協働で、福島県の子どもたちの支援を行う団体への助成事業です。現在は、子ども支援の活動範囲を広げることに伴って設立された「フクシマ ススム プロジェクト」内の一部門「福島子ども支援NPO助成」として展開しています。


(報告:会津若松事務所・長島)

 

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