日本/東日本大震災/福島(公開日:2013.11.30)
【福島:コメラさんさん(6)】ユニリーバこども笑顔プロジェクト2013夏・第2回 8月9―12日(3泊4日) (2013.11.30)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)が、ユニリーバ・ジャパン社の支援および地元のNPOの協力のもと昨年より実施してきている、「ユニリーバこども笑顔プロジェクト」。今年の夏は、南会津町に拠点を置くNPO法人ひのきスポーツクラブとともに、8月3日〜5日、8月9日〜12日の2回、豊かな自然に恵まれ、放射線量の低い南会津町針生地区周辺で移動型自然教室を行いました。このブログでは、その第二回目の自然教室の様子を詳しくお伝えします!
今回の自然教室には、27人の児童(女子12、男子15)が参加。約3分の2が福島市内の児童で、それ以外は本宮市や須賀川市の子どもたちです。ちょっとヤンチャで元気な子どもたちが多い印象。今回は、野外キャンプや沼の大冒険など、よりアウトドア活動に力を入れました。どんな4日間になったのかな?
8月9日
今回は4日間、子どもたちがリラックスしながら南会津の自然を楽しめるよう、長めに日程を組んでみました。
田舎の冒険(ウォークラリー)
到着してまず、子どもたちが取り組んだのが、田舎の冒険(ウォークラリー)です。これから4日間過ごす南会津町針生地区を、3〜4人のグループに分かれて、歩き回り、各所に設けられたチェックポイントでクイズやゲームに挑戦するという企画です。体を動かすとともに、針生の空気に慣れてもらうことも一つの狙いです。
子どもたちは、与えられた地図を参考に、豊かな田園風景の広がる針生地区を元気に歩きます。文字通り、どこまでも続く田舎道。「わー、すごい、きれい!」。シンプルなそのコメントに子どもたちの素直な驚きが凝縮されています。
チェックポイントで与えられたクイズを解くために、通りかかった村人にヒントを聞く子どもたちもいました。「おめーたち、どっから来たの」。おばあさんに声をかけられ、雑談も弾みます。こうした交流も村で過ごす醍醐味です。
集落内の各地に設けられたチェックポイントを次々とクリアして、村の中を歩くこと約2時間。ようやくゴールに到着しました。もっともポイントを集めたグループには、賞品がプレゼントされました。今回優勝したのは、その名も、チーム「メガネ」(!)。ご覧のとおり、メガネの似合う女の子のチームでした。
木地師映画鑑賞会
たくさん歩いて疲れた夜には、今度は映画で南会津を感じてもらおうと、ドキュメンタリー映画の上映会がありました。南会津一帯には、昔から木地師(きじし)と呼ばれる、森に住み、木を彫って漆器を作り、生計を立てている人々が存在していました。現在はすでに、そういった人々の伝統は途絶えてしまっていますが、40年ほど前に、「失われる木地師文化を残そう」と村人が協力して記録映画を撮影したそうです。この日は、その貴重な映画を、当時を知る村人たちと一緒に鑑賞しました。森の中で自給自足に近い生活を送る木地師の暮らしぶりに、子どもたちも驚いたようでした。特に、おばあさんが、両足の裏で挟んだ木の塊を、器用にクルクルと回転させながら、手斧で器の形に彫り上げていく場面には、「すげー」と歓声があがっていました。明日は、その木地師がかつて住んでいた集落の跡地を探検しに行きます。
8月10日
木地師跡を探検
2日目は朝から、木地師(きじし)の住んでいた集落の跡地を見学しに行きました。林道を車で10分ほど入った奥深い森の中に、その集落跡地はありました。
会津百名山の一つである七ケ岳の山麓(さんろく)に位置し、美しいブナの森が広がっています。「こんなところに人が住んでたの?」子どもたちも興奮気味です。鬱蒼(うっそう)とした林の急斜面を登ったりするところもあるので、地元スキークラブの中高生がサポートにやってきてくれました。
木地師の歴史に詳しい地元史家の金井晃さんの解説を聞きながら、森の中に点在する集落跡を歩きました。残念ながら、この場所に木地師がいたのは、50年以上前なので住居の痕跡はあまり見つかりませんでした。しかし、当時の木地師が祈りをささげた祠(ほこら)などをたくさん見ることができました。
スーパー川遊びにトライ
木地師跡を少し下っていくと、村の子どもたちに人気の川遊びスポットがあります。探検のあとは、みんなでそこに移動しました。好天に恵まれ、気温もグングンあがり、最高の川あそび日和。
子どもたちは水着になって、次々と川に飛び込んでいきました。さすがに山麓の渓流なので水は冷んやりして大人は寒さに震えてしまいますが、子どもたちには関係ありません。中には、水中眼鏡をつけて、平泳ぎをする子も。まさに天然のプールです。川では放流されたイワナのつかみ取りも楽しみました。ヌルヌルするイワナはなかなかつかまえるのが大変ですが、中高生のボランティアにサポートしてもらいながら、子どもたち全員が見事にイワナをつかまえました。
二日目は宿ではなく、テントに泊まりました。これも貴重な野外体験。台鞍スキー場の近くにある緑の広場が会場です。最初にひのきスポーツクラブのスタッフがお手本を見せたあとは、子どもたちだけで設営に取り組みました。ポールをつないで、生地を貼る。風で飛ばされないように、周囲にペグも打ちます。
昨今は大人でもテントを組み立てたことのない人が珍しくないですが、子どもたちののみ込みの早さは大したもので、1時間もすると、立派なテントが立ち並んでいました。
今夜の寝床ができあがったところで、次は腹ごしらえ。晩御飯も自分たちで用意してもらいます。メニューは、野外食の王者「カレー」! 火おこしから始めなければいけないので、なかなか大変です。男子が火おこし、女子が調理と、役割分担が自然とできあがっていきました。男子は、必死でうちわをあおいで火力をあげます。女子は、その火を使って、具材を炒めて煮込みます。普段は、憎まれ口を叩き合いがちな男子と女子ですが、カレー作りを通して、チームワークが育ったかな?
みんなの努力の結果、最後は見事にカレーができました。野外で食べる食事、それも自分たちでつくったご飯は格別です。元気な「いただきまーす」がテント村に響いていました。
8月11日
ドキドキのテント泊から一夜明けると、みなすっかり「冒険王」の顔に。南会津の自然が、子どもたちの心をときほぐし、自立心をはぐくんでくれているようです。
鴫沼(しぎぬま)大冒険
三日目は、山中に隠された神秘の沼「鴫沼」を一日かけて巡る大冒険に出かけました。針生から林道に入り、車で未整備のガタガタ道を20分ほど進むと、藪(やぶ)の向こうに突然視界が開けて、山に囲まれた鴫沼が現れました。「こんな山の中に、大きな沼があるなんて」。気分はさながら探検家?子どもたちも興奮気味です。さて、この沼をどうやって冒険するか。与えられた道具は、ゴムボートに、釣竿(つりざお)です。そう、この大きな沼をボートで巡りながら、魚を釣り上げるのが本日のミッションです。
最初はボランティアの中高生にボートの操作を手伝ってもらい、2回目からは子どもだけで、広大な沼へ漕ぎ出します。ボートの上は灼熱(しゃくねつ)ですが、時折吹き渡る風が最高に気持ち良い。
ところで、釣果(ちょうか)は?
そんな野暮な質問はいけません(笑)。
一方、ボートへの乗船を待つ子どもたちは、沼のへりで、ザリガニ釣りにチャレンジしました。釣り糸にスルメをつけて、垂らすだけというシンプルな釣り。「こんなので釣れるのかな?」と半信半疑な子どももいましたが、なかなかどうして、巣の中に隠れた立派なザリガニを上手に釣り上げていました。
鴫沼ではたっぷり一日のんびりと過ごしました。「これぞ、南会津の自然」という鴫沼での時間は、忘れられない思い出として子どもたちの心に刻まれたようでした。
新聞づくりワークショップ
鴫沼から戻ると、夜にはSCJ主催の、子どもたちを対象にした新聞づくりワークショップを開きました。最後の夜ということで、今回の野外教室を振り返り、みんなで協力して“思い出新聞”を製作してもらうのが狙いです。
元新聞記者であるSCJスタッフが、新聞づくりのコツを紹介したのち、グループごとに「心に残った活動」を3つ選んでもらった上で、新聞づくりに取り組みました。
当初は、「新聞なんて、面倒くさい」と消極的な姿勢を見せる子もいましたが、「何が面白かった?」とグループ内で話が始まると、徐々に皆のめり込みはじめ、熱心に、記事の執筆に当たっていました。予定時間を過ぎても完成せず、「まだ、書きたい」と言う子がいたので、締め切りを翌日まで延ばし、最終的に、閉講式で針生の区長さんに対して、発表してもらうことにしました。
8月12日
伝統料理作り
最終日は、前回と同様、地域に伝わる伝統職である「笹まき」の作り方を、地元のおばあちゃん3人から習いました。
今回は、笹巻づくりに加えて、おばあちゃんたちの畑で、夏野菜の収穫体験をするはずだったのですが、予定が合わず、中止となりました。その代わりということで、おばあちゃんたちが、家で採れた野菜を山のように抱えてやってきてくれました。とうもろこしにきゅうりに、ナスに、トマト。宝石のように輝く南会津の野菜たちを、家族へのお土産として、子どもみんなにいただきました。おばあちゃん、本当にありがとう。
あとは、帰るだけと思いきや、まだ新聞ができていないグループがありました。閉講式に向けて、急いで完成を目指します。あと少し。
閉講式・思い出新聞の発表
いよいよ、4日間に及んだ野外教室も終わりの時を迎えました。閉講式では、針生地区の星喜弥区長から「南会津のこと、針生のことを忘れずに、また遊びに来てください」とあいさつがありました。
そして最後に、子どもたちから、思い出新聞の発表がありました。全5グループ、締め切り前に見事に書き上げました。ウォークラリーに、鴫沼に、川遊び。この4日間で南会津の自然を存分に満喫し、いくつもの思い出ができたようです。
福島市から来た小5の男子は、「普段、福島市では経験できない川遊びや沼遊びといった体験ができて良かった」と感想を話しました。また、小学3年の女子は「私が住んでいる福島市は都会だから、南会津は自然豊かでとてもびっくりしました。今回のイベントはとても気持ち良くて楽しかったです」と振り返りました。
長いようで、あっという間だった4日間、大きな事故やトラブルもなく、無事に終了できました。ある6年生は「来年になったら中学生だから、今度は参加者を手伝うボランティアとして参加したい」と言ってくれました。そういった期待に応えられるよう、支援する側としても、今後もできる限りの努力を続けていきたいとあらためて思いました。 (会津若松・中村雄弥)