トップページ > スタッフブログ > 日本/東日本大震災/福島 > 【福島:放射能リテラシー(5)】いわき市の2つの中学校でワークショップ:パイロット版セッション1を実施〜学校の放射線量はどのくらい?〜(2014.08.06)

日本/東日本大震災/福島
(公開日:2014.08.06)

【福島:放射能リテラシー(5)】いわき市の2つの中学校でワークショップ:パイロット版セッション1を実施〜学校の放射線量はどのくらい?〜(2014.08.06)

 

子どもたちが放射能について学び、情報を読み解き、自ら判断することを目指し、昨年11月に始まった「放射能リテラシーワークショップ:パイロット版」は、2014年に入ってからも開催しています。特に6月、7月はいわき市の中学校二校でそれぞれ3年生を対象(2学級合同で45人、1学級29)にワークショップを行いました。

ワークショップの進行役は、おなじみのNPO法人市民科学研究室の上田昌文さん。両校で行った パイロットワークショップの模様を、これから3回のブログに分けて皆さんにご紹介します。今回のブログは3部構成からなるワークショップの最初の回の報告です。

 

放射能リテラシーワークショップ:パイロット版の構成

放射能リテラシーワークショップ:パイロット版(以下ワークショップ)は、3つのセッションで構成され、対話を重視した説明に加え、実際に放射線量をはかったり、新聞記事を使っての話し合いなど、子どもたちが積極的に参加できるような活動が組み込まれています。学校でワークショップを行う場合は、1回のセッションは、50分授業×2で行うことを基本としています。

 
【放射能リテラシーワークショップ:パイロット版セッション1の主な活動とそのねらい】


展開

ねらい

子どもの活動内容

?

震災の経験を振り返り、放射能に関する知識、関心があることをグル―プで共有する。

『体験したこと』『放射能について知っていること』『知りたいこと』を付せん紙に書き出し、共有する

ここで出たカードが、ワークショップで話し合う内容やレベル設定の基盤となっていきます。

?

放射能の基礎を学ぶ。

ファシリテーターがカードのキーワードに関連させながらスライドを使って説明を通じて、子どもたちは放射能についての基礎的な知識を身につけます。

?

身近な環境の空間放射線量を知る

グループごとに空間放射線測定器を用いて、校庭や倉庫裏など学校の敷地内で線量を計測します。

?

外部被ばくの避け方、軽減方法を学ぶ。

各グループが計測した数値を全体で共有し、学校の放射能マップを作成します。

放射能のたまりやすい場所、外部被ばくの軽減方法を学びます。



【展開?:放射線についての知識、経験、知りたいこと、気になっていることを共有して話し合う】 

まずは、子どもたちは、「放射線について知っていること」「経験したこと」、そして、「知りたいこと」「気になること」「疑問に思っていること」を、色の違う2種類のカードに書きだすワークから始まります。最初は、天井を見上げて考え込んでいた子どもたちも、少しずつ思い出してきたのか、次々にカードに書きだしていきます。


さて、どんなカードが出てきたでしょうか。見聞きしたことや体験したことのカードを見てみましょう。


“家の中や外の放射線を測定した”、

“放射能の検査をした”

“甲状腺”

“校庭のはじのほうが線量が高い時が結構あった”

“ヨウ素や海藻などをたべることである程度身体から排出される”

“身近な物質からも放射線が出てきている”

“少しの量なら心配ない”


「放射能について疑問・不安に思っていること」のカードはどうでしょうか。


“夏に海で遊んでも大丈夫か”

“被ばくしたらどうなるのか”

“どのくらいの量で体に害が起こるか”

“地元の海岸の放射線量はどれくらいなのか”

“太平洋沿岸の魚をたべても平気ですか”

“原発事故以来、福島は全国から注目を浴びるのか”

“「福島」と聞かれただけで嫌な顔をされそう?”


カードに書かれた言葉から、子どもたちなりに真剣に、気になっていることや疑問を抱えていることが伺えます。





【展開?:放射能の基本を学ぶ】

展開?では、上田さんがスライドを使いながら、放射能の基礎知識について説明をし、続いて、いわき市や中学校がある地域のその日の空間放射線量を紹介し、現在の状況を説明します。子どもたちは、スライドを食い入るように見ながら、上田さんの話を「なるほど」と真剣に聞き入っていました。




【展開?:身近な環境の空間放射線量を知る】

そして、セッション1のメインイベント、いよいよグループごとに空間線量測定器を手にし、実際に校庭や学校の敷地内の放射線量を計測します!


生徒たちが真っ先に走って向かった先は、校庭の隅にある用具室の影や、こけや草が生い茂る場所、日陰や側溝などでした。また、野球部の部員は真っ先に向かったのは、自分が常に立っているマウンドの上でした。




【展開?:外部被ばくの避け方、軽減方法を学ぶ】

計測が終わると、教室に戻り、計測の結果を発表します。日陰の湿っている場所や、体育館裏のこけが生えた場所、野球ネットの裏や側溝などは、比較的高い数値が出ていたようです。


発表のあと、どんなところに放射性物質がたまりやすいか、どんな場所に近づくのを気をつけたほうがよいのかを学び、放射線量が比較的高い場所から離れる、長い時間いないなど、外部被ばくをできるだけ避ける方法を確認します。


【子どもたちの声】

セッション1を終えた子どもたちからは、アンケートを通じて様々な声があがりました。2校の総合集計によると、「新たに気がついたことや学んだこと、発見が『たくさんあった』、『少しあった』と答えた参加者は、全体の89%でした。さらに、セッション1に参加して「もっと知りたくなった、調べたくなった、やってみたくなったことはありますか」という質問に対して、次のような意見が挙げられていました。


・家の中や近所の放射線はどれくらいか調べてみたくなった。
・放射能の防ぎ方などを知りたいなと思いました。
・側溝とかが放射線が高いので、気を付けて生活したい。
・一般的にどのぐらいから線量が高いといわれるのか調べたくなった。
・地域で一番放射線が多いところを調べてみたい!


また、セッション1に対する感想には、次のような声があがりました。


・実際に動くことで自ら放射線の多いところを確認できたのでよかったです。
・しっかり放射能の知識を身につけ間違った知識を持っている人に発信していきたいです。
・あまり放射能のことは考えていませんでしたが、今日学んだ事を少しでも生かして家族と一緒に考えていこうと思いました。
・自分たちで意見を出すというのは良かったと思います。
・放射能のことがよくたくさんわかった、それを家族に教えたい!


さぁ、こんな思いを持った子どもたちが、2回目のワークショップではどのような意見を出すでしょうか。次回のブログをお楽しみに!


(福島事務所:佐々木未央)


 <放射能リテラシープロジェクトについて>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、福島プログラムの一環として、20139月から放射能リテラシープロジェクトを始めました。このプロジェクトは、福島の子どもたちが、放射能について学び、さまざまな情報や報道を読み解き、自分なりに判断する力を身につけることを目的としています。昨年11月から試作版ワークショップが始まり、20147月現在、福島県福島市といわき市の中学校で実施しています。


 

あなたのご支援が子どもたちの未来を支えます

もっと見る

月々1500円から、自分に合った金額で子どもの支援ができます。
定期的に年次報告書や会報誌をお送りしています。

1回から無理なくご支援いただけます。

PAGE TOP