日本/東日本大震災/福島(公開日:2015.08.01)
【福島:放射能リテラシー(11)】 自分だけが知っている心のつぶやき 〜原発事故からこれまで、そして、これから〜
東日本大震災とそれに続く原発事故発生から4年が経ちます。当時、小学校低学年だった子どもたちも今は、もう中学生です。子どもたちは、4年前のことをどのように記憶にとめているのでしょうか。そして、そのあと福島で起こったこと、自分や家族に起こったことをどのように受け止め、今、どのように感じているのでしょうか。
セーブ・ザ・チルドレン(以下、SCJ)は、今年6月から7月にかけて、NPO法人市民科学研究室、NPO法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)と協力しながら、双葉郡楢葉町立楢葉中学校の2年生19人、双葉町立双葉中学校の全校生徒9人、そして、福島市立福島第一中学校の3年生30人を対象に、各校で放射能リテラシーワークショップ(以下、WS)を実施しました。これから、6回にわたり、3校でのWSの様子をお伝えします。
「わたしのつぶやき」
1回目にご紹介するのは、子どもたちの「つぶやき」です。子どもたちに、WSに先立って渡された「わたしのつぶやき、、、」というワークシートに、「事故が起こってから経験したこと、見たり、聞いたりしたこと」、「今、思うこと」、「知りたいこと、気になること、みんなに伝えたいこと」の3つについて、自分の気持ちをつぶやきました。
こわかったこと、今も不安なこと、みんなに言いたいこと…
子どもたちは、「わたしのつぶやき」のシートに、いろいろつぶやきました
子どもたちは、いったいどんなことをつぶやいているのでしょうか?そのうちのいくつかをご紹介します。尚、一人ひとりのつぶやきは、こちらをご覧ください。
<事故が起こってから経験したこと、見たり、聞いたりしたこと>
事故当時は、まだ小学校に通っていた子どもたち。原発が近くにある地域によって経験したことは様々です。
双葉町や楢葉町の中学生は、事故後、「当時避難する意味がわからず、ただ地震のせいだということだけしかわかっていなかった」など、何が何だかわからないまま避難所を転々として、とても不安だったことを覚えています。
また福島市の中学生は、家族と共に一時的に自主避難をしたり、友だちが避難してしまい、離ればなれになったこと、また、「水が自由に手に入らなくて、当時は生きることに精一杯だった」など、生活するのが大変だったことを今でも覚えています。
<今、思うこと>
双葉町、楢葉町の中学生は、生まれた町や事故が起こるまで住んでいた我が家に思いをはせている子、今住んでいるところでの生活のほうがいいなと感じる子、また、避難生活に不安や複雑な思いもある一方で、「性格が変わって、明るくなった」、「色んな人との関わりが増え、色んな経験ができた」といった、新しい環境での生活をポジティブに受け止めている声もあります。
一方、福島一中の中学生からは、自分自身の健康や将来の不安、福島の風評被害の心配などに加えて、避難した友人が帰ってくるかどうかなどのつぶやきが見られました。中には、「正直、原発事故が起こったことを忘れていた」、「前は放射能を気にしていたが、今はあまり気にしていない」というように、時間の経過と共に、関心が薄れつつある面も見られました。
<知りたいこと、気になること、みんなに伝えたいこと>
放射能について知りたいこともたくさんあげられましたが、現在もなお、避難区域に指定されている双葉町、楢葉町の中学生からは、「今、町はどうなっているのかな」というつぶやきが多くあがりました。避難先の生活にも慣れたけど、やっぱり町のことも知りたい、という複雑な思いも見られます。
みんなのつぶやきは、ワークショップでも紹介しました
様々な気持ちや考えを抱いている子どもたち。次回のブログから、WSの様子や新しいワーク、参加した子どもたちの声をお伝えしていきます。お楽しみに!
(報告:福島事務所 佐々木未央)
<放射能リテラシーワークショップについて>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、福島プログラムの一環として、2013年9月から放射能リテラシープロジェクトを始めました。このプロジェクトは、福島の子どもたちが、放射線について学び、さまざまな情報や報道を読み解き、自分なりに判断する力を身につけることを目的としています。昨年11月から試作版ワークショップが始まり、2015年7月現在、福島県福島市といわき市、双葉町、楢葉町の中学校、いわき市と郡山市の放課後児童クラブで実施しています。