日本/東日本大震災/福島(公開日:2015.04.01)
【福島:放射能リテラシー(10)】震災の経験や放射線への不安、疑問をみんなで話してみよう〜双葉町立双葉中学校でワークショップを実施〜(2015.04.01)
「自分たちの町に、中間貯蔵施設ができるのかな…」
「今、町に戻ったら、私たちってどうなるんだろうね?」
これは、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下、SCJ)が1月に放射能リテラシーワークほどショップ(以下、WS)を実施したときに、子どもたちから出た疑問です。
参加した子どもたちは、福島第一原子力発電所のすぐ近くにある双葉町立双葉中学校の生徒たち。原発事故発生後、双葉町は、近隣の町村と共に、現在避難が続いています。2014年夏に、それまでの避難先のひとつであった埼玉県加須市から、いわき市に行政機能を移し、それに伴い、双葉中学校もいわき市内に仮設校舎を開設しています。
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WSに参加したのは、1年生から3年生までの7名と先生方。まずはグループに分かれて、震災が起こった日のことや、それからの避難生活などの経験、原発事故後の生活で感じている不安や疑問をじっくり話しました。
「揺れた時は学校で、帰りの会の時…連絡帳を書いていたんだ」
「仮設住宅は、狭くて住みづらいんだよね…」
「放射能って、体内に取り入れたらどうなるんだろう?」
「貯蔵施設の場所って、そこに住んでいた人たちはどうなっちゃうんだろう」
WSが実施された頃は、ちょうど双葉町と大熊町が事故で汚染された土を受け入れることを決めたタイミング。自分達の住んでいた町がこれからどうなっていくのか、子どもたちは関心を寄せている様子でした。
「町ごと、川俣町に避難したんだ」と当時の状況を振り返ります
続いて、放射線量を測る活動や、食材選びゲームをしながら、放射線や体に与える影響などを学びます。ファシリテーターのNPO法人市民科学研究室の上田さんは、汚染された土の仮置き場の現状や、震災後から現在まで双葉町周辺の放射線量がどのように変化しているか、今住んでいるいわき市の放射線量はどのくらいかなどを伝え、子どもたちの疑問に答えながらWSを進めました。
この日は、海沿いのいわき市では珍しい大雪で、屋外で放射線量を測ることはできませんでしたが、校内で空間線量計を使って放射線量を測る体験をしました。子どもたちは後日、理科の授業で学校周辺を測ったということです。
「窓際と部屋の中で数値は違うのかな…?」
前回のブログでもご紹介した「ばんごはんの食材選び」のワークでは、子どもたちより一緒に参加していた先生たちの方が、盛り上がりを見せているほど!自分がばんごはんに食べたい食材を10個選び、その食材がどのくらい放射性物質を含んでいるかを知るこのワーク。「ふくしま新発売。」で公表されている数値を子どもも先生方も一緒に見て、食材の安全性について学びました。
「うなぎを選んだ人は?」という上田さんの問いかけに、挙手する先生たち。
授業を受けるのは久しぶり!?(手前に写っているのはデンマークからの記者。
WSの様子はデンマークの公共ラジオで取り上げられました。)
自身も避難者であり、原発事故のあと子どもたちがどんな生活を送ってきたかをよく知る先生方とのWS終了後の振り返りでは、「子どもたちは和気あいあいとしていたし、ここまで、笑顔で話せるようになったのかな」、「こちらが思っていた以上に、子どもたちが自分の感じたことや考えたことなどを発表していた」という声が上がりました。
子どもたちのアンケートからは、以下のような感想が寄せられました。
・最初みんなで話し合った時、いっぱいいろんな意見がでました。その後もみんな自分の意見を積極的に発表していたので、とてもいいワークショップになったと思います!
・自分たちで話し合うことや考えることが少しあり、楽しかったです。
・今までに受けた放射能の授業で学んだもののほかにも、新しく色々なことが学べ、勉強になりました。
双葉中のように、警戒避難区域に指定された市町村の中学校でのWSは今回が初めてでしたが、SCJでは、今後もこうした状況下に置かれている学校の子どもたちと共にWSを実施していきたいと思います。
(報告:福島事務所 佐々木未央)
<放射能リテラシーワークショップについて>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、福島プログラムの一環として、2013年9月から放射能リテラシープロジェクトを始めました。このプロジェクトは、福島の子どもたちが、放射線について学び、さまざまな情報や報道を読み解き、自分なりに判断する力を身につけることを目的としています。昨年11月から試作版ワークショップが始まり、2015年3月現在、福島県福島市といわき市、双葉町の中学校、いわき市と郡山市の放課後児童クラブで実施しています。