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日本/東日本大震災/福島
(公開日:2015.08.17)

【福島:放射能リテラシー(12)】大事なことは、根拠を持って判断すること

 

子どもが放射能について学び自ら判断できる力を養うために、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが2013年11 月より福島で実施している「放射能リテラシーワークショップ」。今年6月から7月にかけてNPO法人市民科学研究室NPO法人日本イラク医療支援ネットワーク(JIM-NET)と協力しながら、福島県内の中学校でワークショップを行いました。ブログ2弾となる今回は「情報をどのように判断するか」をテーマにしたワークをご紹介します。参加したのは、楢葉町立楢葉中学校の2年生19人、双葉町立双葉中学校の全校生徒9人。さて、子どもたちは、福島についての情報をどのようにして考えていくでしょうか。

「この話、ウソ?ホント?」
まずは、いくつかのウォーミングアップワークをしました。

双葉中学校では、いくつかの事柄について、それが、うそか本当かを考えてみました。「HIV感染者と握手すると、エイズにかかって死んでしまいます」、「あの歌手は、口パクで、実は全然歌うことができません」・・・。大事なことは、根拠を持って判断すること。子どもたちは、ペアやグループになってお互いの考えを出し合いながら、自分で判断していきました。

 
「インフルエンザは…咳やくしゃみで感染するから、“人から人にうつる”はホント!」
            先生も驚くほど、子どもたちはしっかりと根拠を説明していました

「DHMOはなくすべき?」
一方、楢葉中学校では、「DHMO」という化学物質について考えるワークをしてみました。

まず、はじめに、DHMOが、金属をさびつかせる、大量に摂取すると死に至るリスクがあるなど危険な性質を持っていて、スナック菓子や食料品のほとんどに含まれたりしている化学物質であることを説明しました。「DHMOという物質をなくすべき?」子どもたちが考えてみました。

皆さんは、この物質は危ないと思いますか?ちなみに、DHMOとは、日本語で「一酸化二水素」の略。水素の化学記号はH、酸素の化学記号はO…つまりH2O(水)のことを指します。水が金属をさびつかせることや、一度に大量に飲むと命の危険につながることは誰もが知っていることですよね。「なくすべきだ!」と多くの子どもが答えたものの、その物質の正体を知ると、全員びっくり!「確かに〜」、「なーんだ、危なくないじゃん」といった声が聞こえてきました。

DHMOの話は、単に事実を提示したとしても、その表現によっては、聞き手に否定的な印象を与え、誤った認識に誘導することができることを示す例です。因みに、DHMOの話は、実はメディアリテラシーの教材としてよく用いられています。興味のある方は、ぜひインターネットで調べてみてください。

「福島の話、ウソ?ホント?」
そして、いよいよ福島のウソ・ホントです。子どもたちに提示した情報は3つ。

「県外のお店では、福島県産の農産物は売られていない」
「福島の子どもの避難者は、まだ23,000人もいる」
「放射能は、人から人にうつる」

さぁ、皆さんは、どう思いますか?知らないと、なんとなく、うわさとして広まってしまいそうなことについて、本当はどうなのか、いろいろな根拠を探し、比べながら、その情報が正しいか考えていきます。

    

   
                                   「根拠を考えるって、難しい…!」

さて、答えは、、、、。福島の農産物はもちろん県外でも売られています。「ニュースで見たことがある」、「県外に行った時、売ってたよ」、「お米にはちゃんと検査したってシールを貼って、売っている」といった理由を挙げて、「ウソ」と判断した子どもが大勢いました。

一方、子どもたちの中で意見が分かれたのは、子どもの避難者の数。「そんなにいるはずないよ〜」、「もっと、いるんじゃない?」と話し合いがなかなかまとまらない様子でした。正解は、「ホント」。県が発表する最新のデータによると2015年4月現在、依然として約23,000人の子どもたちが県内外で避難を続けているという事実を知り、子どもたちは驚いている様子でした。

放射能は人から人にうつる…これは間違いです。双葉、楢葉両校の子どもたちは、全員、「これはウソ!」と答えました。ワークショップで学んだ知識をもとに、子どもたちは自信をもって答えていました。

情報への対処方法を考えよう
最後のまとめとして、子どもたちは、2つのことを考えてみました。1つ目は「正しいかどうか判断できない情報を見たり聞いたりしたら、どうすればいい?」、そしてもう1つは、「ある情報を目にして、悲しくなったりいやな気持ちになった時はどうすればいいか」です。実際に、このワークの前に子どもたちが書いたアンケートの中にも、「ネットで調べものをしているとき、『福島県産の物は買うな』などと書き込みがあり、とても悲しいと思ったときがあったなと思い出してしまった」という声がありました。
双葉、楢葉中の子どもたちは、こんな意見を書いています。

「正しいかどうか判断できない情報を見たら?」
・家族と一緒に調べてみる
・信じないで考えてみる
・情報源を考える
・誰かに話して意見を聞く
・具体的な理由を言い、納得してもらう
・正しい情報を教える

「いやな気持ちになったら?」
・好きなことをする、遊ぶ、叫ぶ
・家族や友だちに相談する
・だまって楽しいことにかえる
・言われたりしたら、私はその時に直接、“そんなことないよ”とか、“まぁ福島にもたくさん良いところはある”ってことを言う!!それでも言われるなら、その人は福島のこと、自分たちのことをわかってくれないと思って、ほっておく。





子どもの権利条約の第17条に、「子どもは色々な情報を手に入れることができ、よくない情報からは守られる権利を持っています」という条文があります。子どもたちにとってインターネットなどのメディアは身近になっていますが、子どもが放射能や福島の情報に接するときに、子どもの権利の観点から子どもたち自身が考える機会があることも大切ですね。それでは、引き続き第3弾のブログもお楽しみに!


(報告:福島事務所 佐々木未央)

<放射能リテラシーワークショップについて>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、福島プログラムの一環として、2013年9月から放射能リテラシープロジェクトを始めました。このプロジェクトは、福島の子どもたちが、放射線について学び、さまざまな情報や報道を読み解き、自分なりに判断する力を身につけることを目的としています。昨年11月から試作版ワークショップが始まり、2015年7月現在、福島県福島市といわき市、双葉町、楢葉町の中学校、いわき市と郡山市の放課後児童クラブで実施しています。


 

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