日本/東日本大震災/福島(公開日:2014.04.01)
【福島:コメラさんさん(9)】ユニリーバこども笑顔プロジェクト(雪国アドベンチャー)(2014.04.01)
桜前線の北上に伴い、日本列島も徐々に春色に染まりはじめるころですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか?3月下旬、東北の一部ではまだ雪の季節が続いています。待望の春を迎える前に、冬の名残を楽しむべく、子どもたちといっしょに福島県南西部の南会津へ行ってきました。春の予感に満ち、陽光きらめく爽やかな2日間。こどもたちは、こんなに元気いっぱいに過ごしていました。
「雪山、最高ーっ」。そんな声が聞こえてきそうです。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)では、ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス株式会社による東北被災地の子ども支援 「ユニリーバこども笑顔プロジェクト」の支援を受け、震災・原発事故後、福島県で今なお外遊びの機会が限られている子どもたちが、比較的放射線量の低い地域で思いきり遊べる機会づくりをしています。2014年1月と3月には、福島県南会津町のNPO法人ひのきスポーツクラブと協働し、計2回の雪国・スキー体験事業を実施。福島市や郡山市、須賀川市など福島県中通り地区に住む小学生計51人が参加しました(避難中の児童を含む)。今回は、3月24、25日に実施した第2回の様子を中心にお伝えします。
南会津の魅力を感じる
24日朝、郡山と須賀川に集合した小3から小6までの子どもたち30人は、バスで一路、南会津町だいくらスキー場を目指しました。雪のない中通り地区から山を越え、南会津に入ると、途端に真っ白な景色が広がります。「なんで、こんなに雪があるの〜!」と子どもたちは大興奮。
宿舎で子どもたちを待っていてくれたのが、南会津の郷土料理「しんごろう」です。じゅうねん(エゴマ)味噌を、丸めたうるち米に塗って炭火で焼いた伝統食で、地元の方が準備してくれました。炭火焼きの香ばしさがたまらない!中には6本も食べた子もいました。さすが、育ち盛り。
腹ごしらえがすんだら、いよいよ雪山に出かけます。が、その前に、地元猟友会の専門家から、南会津の山に住む動物たちの生態について学びます。子どもたちは、雪上で生活する動物の足跡を探すため、クマやカモシカ、ウサギ、キツネなどの足型についての詳しい説明に耳を傾けます。動物によっては、一度踏みしめた足跡の上を逆に戻ったりして、捕食者に追跡されないよう知恵を持っているそうです。なんて賢い!
スノーシューをはいて、雪山大冒険へ
動物の生態を学び、準備万端で雪山へ。雪上では、体が沈まないよう、西洋風のかんじき、いわゆるスノーシューを装着します。
いつもの靴ならズボズボと足が埋まってしまう深さの雪の上を、飛ぶように駆け回る気分は最高。ちょっと敷居の高かった雪山がとたんに身近な遊び場になります。自然の流れで、雪合戦もはじまります。とにかく、楽しい!
肝心の動物の足跡は、ウサギやテンらしきものがいくつか見つかった程度でしたが、子どもたち自身が野をかける動物のようになって、雪山ではしゃぎまわっていました。今回は、それで十分。またいつか南会津に来て、足跡を探してみてください。
幻想的な夜
雪山の夜は寒くて、外では何もできないかと思っていませんか。いえいえ、冬ならではの楽しみがあります。それが、雪灯籠です。雪の中に灯される光は、なんとも味わい深いものです。今回は独立した方式ではなく、雪の壁をスコップで掘るだけでできる簡易的なものにしました。インストラクターは「今回は、みんなで500個作りましょう」と、かなり強気の目標設定。さて、できるかな。
掘り続けること1時間。みんなの努力もあって、なんと予定していた500個の穴が予想以上に早くできました。
さあ、点灯です。掘った穴の中に、紙コップに入れたロウソクを立てると、周囲の空気が一変。幻想的な空間が広がりました。
そんな美しい夜の最後に、もっとも贅沢な光のショーが待っていました。天体に詳しいロッジのオーナーが、即席の星座観察会を開いてくれたのです。実は、ここ会津高原は、空気が澄んでいて、町明かりなどが非常に少ないため、全国でも天文ファンに知られた星観察のメッカなのだそうです。明かりが届かない場所に移動して、みんなで空を見上げると、文字通り、満点の星。「あれが冬の大三角形で、あれがシリウスで」。オーナーの説明に子どもたちは目を輝かせます。「こんな星空、プラネタリウムでしか見たことない」。ある少年はつぶやきました。呑まれるような大空のスペクタクルを網膜に焼き付けて、最初で最後の雪山の夜は静かに更けていきました。
最高の青空の下でスキー教室
初日に引き続き、2日目も文句なしの快晴。
「スキーをするならいつ?」
「いまでしょ!」
とベタなやりとりをしたくなるほど、気持ち良く、まぶしい陽光の一日です。写真のようにダブルピースしたくなる気持ちも分かります。
今日はだいくらスキー場で、スキー教室です。参加者は、初心者と経験者ごとにグループに分かれて、それぞれのレベルにあった講習を受けました。
準備体操をしたら、スキーをはいてGo!
初心者組は、平地でのスケーティングや、八の字での止まり方など基礎からスタート。最初はどうしても腰が引けています。
一方、経験者組は、この余裕。気持ちよさそうに、ゲレンデを滑走していました。
3時間の講習は、本当にあっという間。全くの初心者だった子も、練習を繰り返すうちに、徐々に慣れ、最後は、こんなにかっこよく滑れるようになりました。
終わってみれば、ずっと好天に恵まれた2日間でした。楽しかったからこそ、時間が過ぎるのも早かったようで、「もっともっと滑りたい」。子どもたちのそんな声もたくさん聞きました。もっともっと遊んでほしいし、もっともっと太陽の下で自然に親しむ喜びを感じてほしい。それが担当者としての偽らざる心境です。子どもたちのそうした声に応えていけるよう、SCJはこれからも、地元の団体と協力しながら、福島の子どもたちに、外遊びや自然体験の機会を提供していきたいと思います。 (福島事務所・中村雄弥)
<コメラさんさんプロジェクトについて>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、福島プログラムの一環として、震災後、「コメラさんさんプロジェクト」を開始しました。このプロジェクトは、福島第一原発事故後、放射線被ばくへの不安や、長期化する避難生活の影響などから、福島県で野外活動や体を動かす機会が減少した地域の子どもたちが、安心できる環境で、自然体験をしたり、思いきり遊んだり、運動したりできる機会を提供することを目的としています。2014年夏には、福島県の裏磐梯や阿武隈高地における野外キャンプなどを計画しています。
※コメラは、福島の方言で「子どもたち」の意。
<ユニリーバこども笑顔プロジェクトについて>
「ユニリーバこども笑顔プロジェクト」では、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを通じて、東北の子どもたちが思いきり遊べる場所や機会を継続的に提供しています。2011年にはラックスやダヴの売上の一部が公園再建のための寄付になるキャンペーンを実施。2012年からは、コメラさんさんプロジェクトを中心に支援しています。