日本/東日本大震災/福島(公開日:2015.11.04)
【福島:学童(20)】「ふくしまっ子の外遊びフェスティバル」を開催しました〜福島市放課後児童クラブ合同園外保育〜
やってきました秋!秋!秋!澄んだ空の下、軽やかに吹き抜ける風。こんな気持ち良い季節だからこそ、「外に出かけよう!」ということで、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下SCJ)では、10月3日、福島県猪苗代町で、「ふくしまっ子の外遊びフェスティバル〜福島市放課後児童クラブ合同園外保育〜」を開催しました。
本事業は、SCJと、サントリーホールディングス株式会社(以下サントリー)がともにつくる、サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクトの主催で、震災・原発事故の影響で、放課後の過ごし方にさまざまな制約を受けている福島市内の5つの放課後児童クラブの子どもたちを招待し、自然豊かな磐梯山麓の環境で、ともに体を動かし、力を合わせながら創造的な遊びを楽しむ機会を提供するというものです。
会場の昭和の森は、磐梯山の中腹、標高720〜850mに広がる高台にあり、磐梯山を仰ぎ、猪苗代湖を一望できる気持ちの良い森林公園です。唯一の心配は天気でしたが、「思いっきり、外遊びしたい!」という子どもたちの思いが天に通じたのか、空は快晴。最高の外遊び日和です。福島市内から3台のバスに分乗してやってきた子どもたち。バスを降りると、さっそく駆け回りだしました。
あまりに気持ち良くて、あっちこっちで、両手を広げるこのポーズ!
気分は最高!
青シートの上に荷物を置いて、早速、芝生の広場に集合。1日の始まりは、アイスブレークのじゃんけんゲームから。さわやかすぎる高原の風がとっても気持ちいい。
初めて出会うほかの児童クラブの子どもたち。最初はちょっと緊張気味かな。でも夢中になってじゃんけんを繰り返すうちに、そんな緊張もほぐれて、徐々に笑顔が見えてきました。いいですね〜。
参加する児童クラブの子どもたちは約100人。クラブの垣根を越えて交流するため、学年や性別もバラバラにして、混成の班をつくります。できあがった15の班には、それぞれ1人ずつ指導員がつき、班ごとに行動するのが本日のルール。みんなで仲良くできるかな?森の中に用意された「遊びのブース」を、みんなで相談しながら回りましょう。
思わず飛行機ポーズ!だって、気持ちいいから
今回、遊びを準備したのは、NPO法人こどもの森ネットワーク(猪苗代町)、NPO法人いいざかサポーターズクラブ(福島市)、こどものにわ(二本松市)といった普段は福島県内で、子どもの遊び場や居場所づくりに携わっているみなさんと、今回のために東京からやってきてくれた、遊びのプロ集団NPO法人あそび環境Museumアフタフバーバンのみなさんです。いつもは静かな昭和の森ですが、彼らの手にかかると、ドキドキワクワク冒険の世界に早変わり。どんな遊びがあるのか、ちょっと見てみましょう。
まずは、ターザンロープ。木に吊り下げた手作りのブランコで、ユラユラ揺れます。
「木にぶつかりそうで、スリルがいっぱい」と4年女子。単純だけど、これがまた、楽しいんですよね。
続いて、クライムウォール。日本語にすると、つまり壁のぼりです。
壁にとりついて、端から端まで横移動します。一見怖そうですが、身軽なこどもたちにとっては、お手のもの。平気で、スイスイ進んでいきます。
ダイナミックさでいえば、これ以上の遊びはないでしょう。それが、「ダンボールすべり」。読者のみなさんも幼いころにきっと一度は体験していることでしょう。草の斜面を、ダンボールに座って滑り降りる。ただ、それだけ。
それなのに、これが、なんと楽しいことか。滑っては登り、滑っては登る。誰に頼まれたわけでもないのに、子どもたちは、延々と繰り返します。だって、面白いから。
眼下にはきらめく猪苗代湖。
どこまでも滑っていきたい気分です。プレーリーダーに促され、引率の指導員さんも一緒に滑りました。「昔に帰ったみたいで、ほんとに楽しい」。子どもも、おとなもみんなで楽しむ。それが一番です。
たくさん体を動かしたら、ちょっと休憩。おしゃれに「森の工作」なんてどうでしょう。竹と、ツバキの実を使った2種類の笛作りに挑戦です。
「こんなの初めて」。そんな声が聞こえてきます。自然の素材から、自分でおもちゃをつくる。これもまた、野外活動の醍醐味です。
いくつもある遊びの中で、子どもたちに一番人気だったのが「なんじゃ忍者道場」です。NPO法人あそび環境Museumアフタフバーバン十八番のプログラムで、子どもたちは忍者になりきって、森の中をかけまわったり、宝探しをしたりします。プレーリーダーの巧みな話術で、子どもたちはひととき忍びの世界へ。そこで、お地蔵さんになってみたり、石になってみたり。普段はできないいろいろな「術」に挑戦します。
子どもたちを指導するのは経験豊富な「忍者」たち。
巧みな語り口とパフォーマンスで、子どもたちを「忍び」の世界に引き込みます。
子どもたちも頭巾をかぶって、すっかり忍者になりきっています。
これはお地蔵さんに化けているところかな。動いてはいけませんよ。ニンニン。
たくさん遊んで、あっという間にお昼の時間。お昼ごはんは森の木陰で、みんなでおいしくいただきました。
野外で食べるごはんは、文句なしにおいしい〜!
午後は一旦、自由遊びをお休みして、共同制作の時間です。参加したみんなで大きな遊び場をつくることに挑戦しました。約100人が二つのグループに分かれて、「ダンボールブロックを積み上げた巨大な家」と「ロープでつくった巨大なクモの巣」づくりに取り組みました。みんなで力を合わせてがんばるぞ〜。
ダンボールの家では、まず子どもたち一人ひとりがブロックを制作し、そこに独自のデザインを施します。絵をかいたり、手形をつけたり。子どもたちの個性がそのまま投影されます。
ハートの飾りつけかな?
あれれ、中には、こんなイタズラをする子も。
家でやったら怒られてしまいそうですが、
遊び場では、こんなのもアリです!(ですよね、先生!)
それに、なかなかオシャレ。
できあがったブロックを、上手に積み上げていくと、段々と家のようになっていきます。あいにく強風が吹き荒れるコンディションで、積み上げたダンボールが次々と飛ばされてしまうという困難もありましたが、最後はこんなに立派な「家」ができました。ちょっと壁が崩れてしまっているのは、ご愛嬌ということで・・・。
一方、ロープのクモの巣は、木々の間に張ったロープを行き来する綱渡り「モンキーブリッジ」を発展させてつくります。
立派なクモの巣をつくるには、もっともっとロープが必要です。
子どもたちは力を合わせて、ロープをはります。
わっしょい、わっしょい!女子だって男子に負けていません。
結んで、結んで、少しずつ、発展していきます。クモになった気分?かな。
こちらは師匠と弟子のような雰囲気です。
次々とロープが増えていく、その様子はまさに巨大な「クモの巣」を思わせます。
うーん、壮観です。
使ったロープは全長400m。立派な「クモの巣」になりました。
みんなで作った、みんなの遊び場。だからこそ、充実感があります。
これぞ、まさに、「100人乗っても大丈夫!」
最後の1時間は、自分たちも一緒につくった遊び場で、思う存分遊びます。
笑って、笑って、また笑う。初対面だった子どもたち同士も、すっかり打ち解け、新しい友達になっていました。
気が付くと、あっという間に帰りの時がやってきました。
昭和の森に来て、すでに5時間以上。長かった?いや、みんな口々にこう言います。
「もう終わりなの?」。
楽しい時間は飛ぶように過ぎていきます。それだけ夢中になれたのかもしれません。
閉会式。中野学童クラブの丹治恒貴さん(5年)はこう言いました。「いつもパソコンばかりやっていて、全然外遊びはしないけれど、今日はとても面白かった。こういうのもいいなと思った」。それを横で聞いていた引率の指導員さんは「普段は部屋の中にいてばかりの子なので、驚きました。本当に楽しかったんでしょうね」と話していました。子どもたちは。ちょっぴり日焼けした顔をほころばせながら、帰途につきました。
アンケートでは、90%の子どもたちが「とても楽しかった」と答えてくれました。小3の女子はこう書きました。「何もないところに、知らない友達と一緒に協力していろいろと作れて、とてもいい経験になりました」。また、ある指導員さんは「今は、外で遊ぶことができない子どもたちが多いと思います。他のクラブさんと交流でき、子どもたちが楽しく笑顔で遊べて良かったと思います」と話しました。
子どもにとっての外遊び、それは健全な発育において決して欠くことができないものです。しかし、いまだ福島県の一定の地域では、放射線量、保育環境の問題などから、思う存分遊べない状態に置かれている放課後児童クラブの子どもがいるのもまた事実です。「もっと子どもたちが、自由に、思いっきり外遊びできる」環境をつくっていくため、まわりの大人たちに求められているものは少なくありません。SCJでは、ふくしまっ子が元気に外遊びできる環境をつくっていくため、引き続き努力を続けたいと考えています。
(福島事務所・中村雄弥)
【サントリー・SCJ フクシマ ススム プロジェクト】
サントリーとSCJが取り組む福島の子ども支援事業です。東日本大震災によって、日々の生活に様々な制約を受ける福島の子どもたちを応援するため、学童保育支援や子ども支援に取り組むNPOとの協働事業や助成事業などを行っています。