モンゴル(公開日:2010.02.15)
モンゴルで9年ぶりに深刻な雪害が発生(2010.02.15)
<雪害による被害の状況>
モンゴルは、昨年12月下旬からマイナス45度にも達する急激な気温の低下と大雪に見舞われ、現地でゾドと恐れられる深刻な雪害が発生しています。雪害の被害は、現在全21県中14県にまで広がり、地方の遊牧民を中心に177,637人(人口の7%強)が深刻な被害に遭っています。そのうち72,416人が18歳以下の子どもたちです(*1)。
モンゴル最東部のドルノド県でのニーズ調査にて:遠隔地の村に向かう途中、積雪で車両が動かなくなってしまいました。外の気温はマイナス25度以下。15分以上立ち往生し、やっと車両を動かすことができました。
モンゴルが深刻なゾドに見舞われるのは2001年以来、9年ぶりです。今回のゾドは、被害規模で2001年のものを大きく上回ると言われています。
ゾドの大きな特徴は、寒さと飢えによる家畜の大量死で、今年1月末時点で、モンゴルの全家畜数の4%弱に当たる170万頭の死亡が報告されています(*2)。遊牧は同国の雇用の3割強、国民総生産の20%を占めるため、ゾドによる経済的ダメージは相当なものです。特に、家畜の大量死は、大雪で交通が遮断されがちな地方で最も深刻で、遠隔地の貧しい遊牧民から生計手段を奪い、更なる貧困へと追い込んでいます。
ゾドの被害:ドルノド県のニーズ調査の道中では、家畜が固まって凍死している光景を何度も目にしました(写真上)。上記下の写真の家畜も凍死の危険にあります。
ゾドの影響は経済に限ったものではありません。食料不足による栄養失調、体力低下による肺炎の蔓延など、健康面での影響も懸念されています。更に、地方の265の学校寮では暖房施設が故障し、食料確保も困難で、22,200人の子どもたちが影響を受けています(*2)。雪害による予想外の支出発生の為、今後、学校や寮の運営が困難になることも懸念されています(*3)。
ドルノド県セルゲレン村の学校にて:学校の暖房施設が故障し(写真上)、校舎2階の教室全てが使えなくなってしまっています(写真下)。
<セーブ・ザ・チルドレンの支援>
モンゴル政府は、雪害被害を食い止めるため、緊急に特別予算を組み対応に当たっています。それと同時に、各国ドナーや国連機関、NGOに対し、積極的に支援を呼びかけています。
セーブ・ザ・チルドレン(SC)は、暖房施設の修繕が急務といわれる地方の学校寮の子どもたちを寒さと飢えから守るため、2月1日より緊急支援を開始しました。4月末までの3ヶ月間の緊急支援では、被害が深刻なゴビアルタイ、ザブハン、ドルノドの3県を対象に、学校寮の暖房施設の修繕と暖房資材の提供、学校寮で生活する子どもたちや幼稚園へ通う子どもたちへの食料、衛生用品、毛布の配布を行います。
ドルノド県セルゲレン村の学校にて:学校教員から聞き取りを行っている様子です(写真上:右端が私、豊田です)。学校寮の食堂で列を作る子どもたち。食堂内部は気温8度以下です(写真下)。
また、雪害による困窮の結果、家計を助けるために退学せざるを得ない子どもたちや中長期にわたり健康を害する子どもたちが出てくることが大きく懸念されています。雪害のインパクトから子どもたちの権利、特に教育の権利と健全な成長の権利を守るため、SCは中期的な支援も計画しています。そのためのニーズ調査も緊急支援と並行して行っています。
雪害支援の進捗を定期的にアップデートさせて頂きますので、皆さまのご支援・ご声援、どうぞよろしくお願い致します。
*1: Asia-Pacific Region: Natural Disasters and Other Events being monitored by the OCHA Regional Office for the Asia-Pacific (27 Jan - 02 Feb 2010) [http://www.reliefweb.int/rw/rwb.nsf/db900sid/MNIN-82AQVA?OpenDocument&rc=3&emid=CW-2010-000010-MNG]
*2: World Health Organization Mongolia Dzud Situation Report 2 [http://www.reliefweb.int/rw/rwb.nsf/db900sid/SMAR-82H8RH?OpenDocument]
*3: SC現地職員の関係者からの聞き取りによる。