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モンゴル
(公開日:2014.09.03)

【遊牧民の子どもたちのための小学校教育プロジェクト(9)】中退した子どもたちが、1人でも多く学校に戻れるための活動に取り組んでいます。〜ドルノド県支部より〜(2014.09.03)

 
こんにちは。ドルノド事務所でフィールドコーディネーターをしているバイガルマーです。


子どもたちとバイガルマー(写真右端)ⓒSave the Children Japan 

今回は、遊牧民の子どもたちの小学校教育支援における、学校を中退した子どもたちへの補習教育プログラムについてです。

2010年のモンゴル政府の統計によると、就学年齢の子ども46万537人の内、学校に通っていない子どもは1万6,553人となっています。学校に通っていない子どもの多くは地方に住み、貧困が原因でいったん入学したとしても中退してしまうのです。

一番の問題は、学校に行かなくなってしまった子どもたちを、再び学校に戻れるようにサポートする体制が、今のモンゴルにはないことです。結果、義務教育を終えることができなかった子どもたちは雇用の機会にも恵まれず、両親と同じように貧困の道を歩まなければならなくなってしまいます。そのため、セーブ・ザ・チルドレン モンゴル事務所では、学校を中退してしまった子どもたちが再び学校に戻れるよう、必要な補習学習のためのドリルの開発や、学校の受け入れ態勢を整える支援活動を実施しています。

1月には、小学校を中退してしまった子どもたちが、保護者と一緒に自宅で学習するための、モンゴル語と算数のドリルおよび保護者用の指導書を開発しました。その後4月から5月にかけて、スフバートル県で、11人の子どもたちとその保護者、その子どもたちを受け入れる学校の先生や学校ソーシャルワーカーに教材を紹介しました。


試験的にドリルを使用する母親と子どもⓒSave the Children Japan


ドリルの使用方法を指導するための研修を受ける学校の先生 ⓒSave the Children Japan


ウルバヤン村のラムさん(仮名)のケース :



ラムさんは、本を読むのが大好きな9歳の女の子です。ラムさんの家族は大変貧しく、自分たちで所有する家畜がありません。田舎では牧畜以外の仕事がないため、ラムさん一家は他人が所有する家畜の世話をして生計をたてています。ラムさんは、家畜と移動する両親と一緒に遊牧民生活をしていたため、幼稚園に行くことができませんでした。

ラムさんがウルバヤン村立学校に入学することになった2012年9月、ラムさんの両親は大変困りました。学校の寮に入れるには、ラムさんは小さすぎましたし、学校の近くにラムさんを預けられるような親戚もいなかったからです。結局ラムさんは、学校の近くに住む知り合いの家に預けられました。ホームシックで毎日泣き続ける娘をかわいそうに思った両親は、面会に行った際に時々一緒に連れて帰るようになり、ラムさんは少しずつ学校に行かなくなりました。たまに学校に行っても授業についていくことができず、学習に対する関心もなくなり、最終的に全く学校に行かなくなってしまいました。

4月にモンゴル語と算数のドリルを受け取ったラムさんは大変喜び、両親は娘の教育に対する関心を高め、ドリルを使って自宅でどのように教えることが出来るのかについて熱心に学びました。

 
ドリルの表紙とその一部ⓒSave the Children Japan

その後、ラムさんはお母さんと一緒にウルバヤン村立学校の寮を訪問し、新しくできた「子ども発達センター」や放課後活動を見学しました。ラムさんは思わず、「私、この寮に入りたい!そして学校に戻りたい!」と叫びました。


ウルバヤン村立学校の寮の子ども発達センターⓒSave the Children Japan

娘の願いを叶えようと、お母さんも自宅での補習学習を、ラムさんと一緒にがんばることにしました。その後ラムさんは、6月から7月に、セーブ・ザ・チルドレンが企画する夏季講習を受けました。今では、1から10までの数字の簡単な足し算が出来るようになり、モンゴル語のアルファベットを全て覚えました。そして9月から2年生に編入することが決りました!また、子ども発達センターが大好きになったラムさんは、寮に入ることを決め、両親もそれを応援することにしました。

ラムさんが学校の授業についていくためには、他の子どもたち以上の勉強が必要です。そのため、引き続きモンゴル語と算数のドリルを使っての自己学習を、学校と寮の先生が手助けすることになりました。それでもラムさんは、学校が始まることが楽しみでたまりません。


ウルバヤン村立学校の寮の発達センターで遊ぶ子どもたちⓒSave the Children Japan

しかし、復学を達成できそうなラムさんのようなケースばかりではありません。特に、子どもが障害を持つ場合は、学校自体に受け入れ態勢や施設が整っていない、障害児教育が出来る先生も殆どいないなどの理由から、復学は困難です。
それでも、セーブ・ザ・チルドレン モンゴル事務所では、ラムさんのような子どもたちが1人でも増えるように、これからも補習教育プログラムを実施していきます。

ドルノド県にあるモンゴル事務所では、今回ご紹介したスフバートル県とドルノド県の両方の活動をモニタリングしており、日に数百キロの移動という日も少なくありません。しかし、サポートオフィサーのアリユンザヤ(写真右)と、運転手のエンハバヤー(写真中央)というすばらしい仲間に恵まれ、ラムさんのような子どもたちに出会うと、「またがんばろう!」という力が沸いてきます。


ドルノド事務所の仲間ⓒSave the Children Japan

今後ともご支援のほどよろしくお願いします。

(子ども発達センターについては、以下のブログでも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1462

―モンゴル遠隔地における最も不利な状況に置かれた子どもたちのための基礎学力向上支援事業―小学校中途退学の子どもが特に多いモンゴル遠隔地4県で、標準的な教育を受けていない、もしくは受けられないでいる子どもたち(5〜10才)の初等教育における学力の維持、さらに向上を目指して支援しています。

事業期間:2012年6月21日〜2016年6月20日
事業分類:【教育支援】
本事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成と、皆さまからのご支援を受けて実施しています。

 (報告;モンゴル事務所 バイガルマー)

 

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