モンゴル(公開日:2018.07.13)
【モンゴル 寒雪害「ゾド」】遊牧世帯の子どもたちへの教育支援・災害リスク軽減のための支援のご報告
セーブ・ザ・チルドレンは、2016年から2年連続で発生したモンゴル特有の寒雪害「ゾド」で被災した遊牧世帯に対し、教育支援や災害リスク軽減のための支援をしました。2017年3月1日から2018年3月31日まで、アルハンガイ県、ドルノド県、ザブハン県、バヤンウルギー県の4県で実施した事業を報告します。
子ども教育手当で制服と冬服を購入した三つ子の女の子 2017年12月ザブハン県
本事業では、ゾドの影響を受けた最も脆弱な遊牧世帯の子どもたちを対象に、教育面における負の影響を減らすため、緊急支援として子どもにやさしい学習環境の整備や子ども教育手当の支給、補習授業を行いました。また、モンゴルでは今後もゾドを始めとする災害の発生が懸念されることから、将来への備えとして、学校を主体とした災害リスクへの対応力を向上するための活動も実施しました。
活動実施後の子どもたちへの聞き取りの様子 2018年2月アルハンガイ県
本事業で実施した補習授業には、事業対象4県32校で計7,262人が参加しました。補習授業実施の前後には、参加者の成績を測定し、成績が向上した割合を測定しました。その結果、対象となった32校すべてで参加者の成績の向上が見られる結果となり、大きな成果をあげました。
事業では、災害リスクへの対応力を向上するための活動の一環として、「災害時のリスク軽減行動」、「災害時にリスクを伴う行動」、「平常時の予防活動」を示す災害ポスターの作成も行いました。例えば、左下のゾドに関する災害ポスターでは、「災害時にリスクを伴う行動」として、“防寒着を着ないで家畜に餌をやる”、“学校の出入り口の雪かきをせずに、地面を凍結させてしまう”、“ゾドが発生し移動を禁止されている際に、車で外出する”、”学校を長期間欠席し、家畜の世話など家庭の手伝いをする”などの行動が紹介されています。
事業で作成した災害ポスター(左からゾド、地震、洪水)
災害リスク軽減・対応研修は、ウランバートル及び事業対象4県で実施し、計2,463人が参加しました。研修後には、事業対象校で災害リスク軽減活動が実施されました。この活動では、子ども参加の手法を取り入れ、子どもたち自身が学校内外の災害リスクを特定しました。子どもたちが特定したリスクに基づき、学校ごとに電線の整備や修繕、外灯整備、暖房設備の整備・修繕などを行いました。また、これらの活動の事後モニタリングには、モンゴル行政担当者に同行を依頼するなど、行政レベルでも活動の意義や重要性について理解が促進されるように働きかけました。
これらの活動は、子どもたちにどのような変化をもたらしたのでしょうか。事業に参加した子どもたちの声を紹介します。
補習授業に参加した、アルハンガイ県在住のガブヤさん(仮名)
2017年初冬に起きたゾドにより、遊牧民の両親の手伝いをする必要が出てきたため、数週間学校を休みました。最初は、学校を休んで家の手伝いをしなければいけないことについて、両親に怒りを覚えていました。でも、学校に来られるようになってから、セーブ・ザ・チルドレンの補習授業に参加し、休んでいた間の授業内容を学ぶことができました。補習授業に参加した後のテストでは、良い点数をとることができ、とても嬉しかったです。テストの点数が上がったことで、自分に自信がつき、友人との関係も向上しました。クラスで積極的になり、人前でもうまく話せるようになったと感じています。補習授業は、すべての遊牧民の子どもに有益な支援だと思います。
災害リスク対応力向上活動に参加した、アルハンガイ県在住のバルジャーさん(仮名)
私はセーブ・ザ・チルドレンの災害リスク軽減・対応研修に参加しました。研修では、被害を最小限にするために災害発生前に何を準備しておくべきか、災害が発生したらどのように避難しどこに集まるのかなど、さまざまなことを学びました。研修で学んだことを実践するために、学校で実施した避難訓練にも参加しました。今まで、村で、避難訓練は実施されていましたが、学校では実施していなかったので、とても良い経験となりました。
災害時、最後に自分の身を守ることができるのは自分です。そのために、今後も定期的に学校で避難訓練を実施し、災害に備える必要があると感じました。また、セーブ・ザ・チルドレンは、モンゴルで発生しやすい災害8種についてのポスターを作成し、学校に配布してくれました。このポスターでは、災害時にとるべき行動や不適切な行動が説明されています。絵が多く誰でも理解しやすい内容で、とてもありがたいです。
モンゴル行政担当者も参加した、活動の事後モニタリングチーム 2018年2月アルハンガイ県
本事業は、2018年3月31日をもってすべての活動を完了しましたが、活動を通して、災害の影響を受けた子どもたちが学習を継続できるよう取り組む必要性や、災害リスク軽減活動の意義が、行政や学校関係者のなかで確認されました。今後も引き続き、モンゴルの行政や学校が主体となって、これらの取組みが継続、強化されるよう、働きかけていきたいと思います。
本事業は、みなさまからのご寄付と、ジャパン・プラットフォームのご支援により実施しました。
(海外事業部 :福原真澄)