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モンゴル
(公開日:2014.02.26)

【幼稚園プロジェクト(15)】「地域に開かれた図書室を幼稚園につくろう!」―第67番幼稚園の取り組み―(2014.02.26)

 

  日本の皆さま、こんにちは。3年ほど前、このブログでモンゴルの様子を紹介させていただきましたムンフブルです。あの時は、チャイルドセンターのチームリーダーを務めていましたが、2013年夏から、幼稚園事業に関わっています。今回はこの事業の中で進めている、図書室普及活動の取組みと成果について、お伝えしたいと思います。


ムンフブル © Save the Children Japan

  私たちがこの事業の中で、図書室という考えを普及しようと思ったのにはわけがありました。幼稚園を回り、先生やお母さんたちと話をすると、「子どもたちが、本に慣れていないので、幼稚園で本を読んでも興味を持たない子が多い。」とか、「子どもと話をするという事は大切ということはわかるけれど、何について話していいのかわからない。」とか、「本を読んであげたいけれど、どこで買えるのかわからないし、第一、本の値段は高くてなかなか買えない。」という話をよく耳にしました。モンゴルには、日本のように子どもの書籍がおいてある公共図書館がありませんでした。2012年に行われたお茶の水女子大学の調査によると、ウランバートル市に住む1200人の子どもを持つ世帯に、自宅にある子ども用の書籍の数を聞いたところ、「5冊以下」と答えた世帯は45%にもなりました。家庭に子ども用の書籍があるというのは、とても珍しいことなのです。それで私たちは、保護者の就学前教育の関心を高めるために幼稚園とできることは、「地域に開かれた図書室」をつくることだと考えたのです。


図書室紹介のための会議に参加した幼稚園園長ら© Save the Children Japan

  しかしこの「地域に開かれた図書室」を紹介した際、多くの幼稚園から反対がありました。「保護者に書籍を貸す?とんでもない!二度と書籍は戻ってこないよ。」と、殆どの幼稚園が拒否しました。図書室設立の1年目は、書籍の戸棚に鍵をかけている幼稚園もありました。私たちは、具体的な図書室の機能も紹介し始めました。つまり、書籍に番号を振り、貸し出し台帳を作成し、貸し出しルールを作り、だれもが入りやすい場所を選び、担当者を決めて、といった機能です。それだけではなく、保護者に対して説明会を開催し、ポスターを掲示して、貸し出しを促す必要性も紹介しましょうと、呼びかけました。
そしてこの図書室普及活動も3年目に入り、うれしいことに各幼稚園から自主的な活動が報告されるようになってきました。その中から、、保護者からの寄付により、図書室そのものを改築した第67番幼稚園の例を以下に紹介したいと思います。


第67番幼稚園

この幼稚園は、地区の中心に立地し、650人もの子どもが登園しています。この事業に関わる前の幼稚園の様子です。保護者が通る廊下も待合室も、大変殺風景で、掲示物や書籍もみあたりませんでした。





2012年8月ごろの第67番幼稚園の様子© Save the Children Japan

  この幼稚園を子どもにやさしい幼稚園のモデルとすべく、活動を始めたのは2012年9月。そして図書室を幼稚園の先生に紹介し、書籍や本棚の支援をしたのが2013年1月。当時それらの書籍は、教育主任の部屋に置かれていました。ですので、保護者が気楽に立ち寄り、書籍を手にするというのは、なかなか難しい状況でした。


教育主任の部屋にある書籍や本棚© Save the Children Japan

それから半年後。保護者の寄付金により、倉庫として使っていた部屋を、こんなに素敵な図書室に改築しました。見てください!先生や保護者からの寄付金総額は23万円!書籍数は850冊にもなります。事業から提供した書籍は約100冊ですので、700冊以上も幼稚園が自主的に書籍を作成したり、集めたことになります。


改築前の倉庫の様子© Save the Children



改築後の図書室の様子© Save the Children Japan

子どもたちだけでなく、本に関心のない大人も、ちょっと立ち寄ってみたくなる素敵な図書室になりました。幼稚園では、幼稚園用の貸し出し台帳と、ひとりひとりの子ども用の図書カードを作成しました。この図書カードは、クラス毎の引き出しに保管されています。 


幼稚園用の貸し出し台帳と子ども用の図書カード© Save the Children Japan


机の上に置かれている図書カード入れ© Save the Children Japan

  保護者たちは、子どもの送り迎えの際に立ち寄って、本を借りています。毎月の貸し出し数は、20から30冊と、まだまだそれほど多くはありませんが、この部屋は現在、子どもと話しながら本を選んだり、他の保護者と歓談したりする部屋にもなりました。大変忙しい保護者が、子どもやその他の保護者と歓談できる貴重な時間を提供しています。
それだけでなく、読書に関する行事も大変多く開催されています。園児たちは、毎日、スケジュールに従って、この図書館に来ています。また、祖父母たちによる読み聞かせの会や、保護者参加の演劇会など開催しています。

  第67番幼稚園の変化が早かったのは、既に、2012年1月から図書室運営を試行錯誤している他のモデルの幼稚園の事例があったからかもしれません。2年以上の歳月がかかりましたが、事業対象の幼稚園での図書室普及活動を通じて、最初は誰もが可能だと考えていなかった「幼稚園の書籍を保護者に貸し出せる。」ということを証明しました。これは何よりも誇れることだと思っています。
次のプログでも引き続き、図書室運営について紹介させていただきます。


伝統的な衣装をまとうムンフブルとその仲間© Save the Children Japan

ムンフブルについての前回の記事は、下記のリンク参照
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=91

―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳〜5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しています。
事業期間:2011年8月23日〜2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
*本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しています。

 (報告;モンゴル事務所 ムンフブル)


 

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