モンゴル(公開日:2014.03.28)
【遊牧民の子どもたちのための小学校教育プロジェクト(7)】地方の学校寮に「子ども発達センター」を作りました(2014.03.28)
日本の皆様、こんにちは。遊牧民の子どもたちの小学校教育を支援するプロジェクトで、オフィサーを務めていますウラングワです。
ウラングワ ©Save the Children Japan
学校に行く年齢になった遊牧民の子ども達の一番の問題は、家族から離れなければならないということです。家畜と共に移動する両親から離れ、学校寮で生活する子どもたちや、学校近くに住居を構える親戚の家に身を寄せる子どもたちは、宿題を手伝ってくれたり、いろいろな悩みを聞いてくれたり、暖かく励ましてくれる養育者が周囲にいません。加えてそういう子どもたちの殆どが、幼稚園に通っていないので、集団生活に慣れていません。そのため、自宅から通う子どもたち以上に、養育者の支援が必要なのですが、そのような支援を得られている子どもは殆どいないのが現状です。
学校寮の施設設備の様子はどうでしょうか?殆どの寮には娯楽室はあるのですが、机や椅子などの基本的な家具も、壁にポスターや明るい絵などもなく、テレビが一台ぽつんと置かれているという状況が殆どです。加えて暖房設備が古くとても寒いので、子どもたちがその娯楽室で過ごしたいと思う雰囲気はありません。こういった状況が、遊牧民の子ども達にとって、学校を中退する原因の1つとなっています。
寮の子ども達トウラングワ ©Save the Children Japan
そこで私たちのプロジェクトでは、まず学校寮の娯楽室を、楽しい!と思える部屋に改築し、それを「子ども発達センター」と呼ぼうと決めました。そして次に、小学校の先生、寮母さん、コミュニティ教育協議会メンバーなどの養育者たちが良き相談相手になり、そのセンターで子どもたちが「楽しい!」と思える遊びや交流を企画できるように研修を行うことにしました。約1年が経ち、ようやく「子ども発達センター」での活動が活発になってきています。
プロジェクトでは、30の学校寮で「子ども発達センター」を設置しましたが、今回は、その中でもアルハンガイ県ウルジ村立小学校の寮にある「子ども発達センター」の様子を紹介したいと思います。
アルハンガイ県の先生たちへの研修 ©Save the Children Japan
ウルジ村立学校の初等部(1〜5年生まで)の全校生徒数は264人です。その内37人が寮生活を送り、91人が知り合いの家に身を寄せています。約半数の子どもが、両親と分かれて生活をしていることになります。寮には娯楽室があり、子ども達は宿題をしたり小さなパーティーを催すのに時々使用していましたが、とても殺風景で、小さな子どもが楽しいと思える雰囲気はありませんでした。
そんな娯楽室が、今はこんな素敵な「子ども発達センター」に生まれ変わりました!下の写真を見てください。センターでの活動を支えるためにプロジェクトからは、机・椅子・本棚などの基本的な家具に加え、おもちゃや本を購入しました。また地域の人々にも支えられ、更にすばらしいセンターとなりました。ウルジ村立小学校とコミュニティ教育協議会からは、総額訳40万円相当のカーペット、机、身長計、体重計、黒板、本、おもちゃなどの寄付がありました。また保護者からも手作りの伝統的おもちゃの寄付があり、センターの改築工事にはボランティアの参加がありました。
寮にいる子どもたち、学校近くに住居を構える親戚の家に身を寄せる子どもたちは、いつでもセンターを利用することが出来ます。
改築前のウルジ村立学校の寮の娯楽室 ©Save the Children Japan
改築後のウルジ村立学校の「子ども発達センター」 ©Save the Children Japan
更にセンターでは、研修に参加した小学校の先生、寮母さん、コミュニティ教育協議会のメンバーによって、放課後活動が毎日行われています。まずは、学校の授業についていけることが、学校が楽しくなるための重要な要素の1つなので、算数の補習授業3回、国語の補習授業2回が毎週行われています。それに加え、季節ごとの行事、子どもたちの誕生日会など、年間行事も子どもと一緒に決めました。みんなで決めたことや考えたことを、子ども達が掲示物を作り、壁に貼っていきました。子どもたちの作品のおかげで、センターの雰囲気がとても明るくなりました。
国語の補習授業を行う学校の先生 ©Save the Children Japan
年間行事が書き込まれた年間計画表 ©Save the Children Japan
壁に張られた子どもたちの作品 ©Save the Children Japan
この寮で生活する2年生のテュブハンバヤーさんに、インタビューしてみました。
テュブハンバヤーさん ©Save the Children Japan
「僕は2年生。小学校に上がった昨年から、お父さんとお母さんと別れて、この寮で生活しているよ。最初は本当に寂しかったけれど、寮には兄ちゃんと姉ちゃんがいたので、まだよかった。娯楽室?前は行ってなかったよ。だって面白くない。いつも、自分の部屋の中で、兄ちゃんと姉ちゃんと遊んでいたよ。
僕のお父さんとお母さんは羊やヤギを飼っている遊牧民。 僕に会いに来てくれるのは、1ヶ月に1回かな?動物たちだけにしておく訳にはいかないから、仕方がないよね。
幼稚園?僕は小学校に上がるまで、ずっと家にいたから、幼稚園のことは知らない。夏場だけ、学校に上がる準備のための教室がある、って聞いたことがあるけれど、僕は行っていなかったから。でも、家ではいつもみんな一緒で楽しかったな。学校が休みの時家に帰ると、寮に戻りたくない!って、お母さんを困らせたね。
でも、もう今は違うよ。僕、このセンターが大好き。センターに来て、友達と遊ぶのが大好き。見たこともないおもちゃや絵本がたくさんあって、何時間いても飽きないよ。」
アルハンガイ県ウルジ村立学校の子ども達 ©Save the Children Japan
このセンターが、親元を離れて寂しい思いをしている子どもたちに元気を与える場所になってきています。また養育者たちが、もっともっと子どもにとって楽しいセンターになるようにと、いろいろな工夫していることもうれしい事実です。今後も工夫が重ねられ、親元を離れた辛さから途中で学業をあきらめることなく、1人でも多くの子どもたちが学校を続けられるようになることが、私たちプロジェクトチームの最大の願いです。そして子どもたちが大きくなったときに、この寮での生活がとても楽しかったと思い出してもらえればいいなと思っています。
では最後に、アルハンガイ事務所のスタッフを紹介します。
アルハンガイ事務所のスタッフ ©Save the Children Japan
アルハンガイ事務所のスタッフは、全員で3人です。リーダーのナラントヤ(写真前列右)、会計担当のアルジャガル(写真前列左)、運転手のシジルバット(写真後列)です。彼らは、支援対象の村の小学校を訪問するために、時に片道200kmも走ることもあります。彼らの努力なしに、事業の成功はありえません。これからも、彼らと共に、子どもたちの嬉しそうな顔をみるために、走り回ります!
今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
(遊牧民の子ども達が抱える問題については、以下のプログでも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1048
(アルハンガイ県については、以下のプログでも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1150
―モンゴル遠隔地における最も不利な状況に置かれた子どもたちのための基礎学力向上支援事業―
小学校中途退学の子どもが特に多いモンゴル遠隔地4県で、標準的な教育を受けていない、もしくは受けられないでいる子どもたち(5〜10才)の初等教育における学力の維持、さらに向上を目指して支援しています。
事業期間:2012年6月21日〜2016年6月20日
事業分類:【教育支援】
本事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成と、皆さまからのご支援を受けて実施しています。
(報告;モンゴル事務所 ウラングワ)
ウラングワ ©Save the Children Japan
学校に行く年齢になった遊牧民の子ども達の一番の問題は、家族から離れなければならないということです。家畜と共に移動する両親から離れ、学校寮で生活する子どもたちや、学校近くに住居を構える親戚の家に身を寄せる子どもたちは、宿題を手伝ってくれたり、いろいろな悩みを聞いてくれたり、暖かく励ましてくれる養育者が周囲にいません。加えてそういう子どもたちの殆どが、幼稚園に通っていないので、集団生活に慣れていません。そのため、自宅から通う子どもたち以上に、養育者の支援が必要なのですが、そのような支援を得られている子どもは殆どいないのが現状です。
学校寮の施設設備の様子はどうでしょうか?殆どの寮には娯楽室はあるのですが、机や椅子などの基本的な家具も、壁にポスターや明るい絵などもなく、テレビが一台ぽつんと置かれているという状況が殆どです。加えて暖房設備が古くとても寒いので、子どもたちがその娯楽室で過ごしたいと思う雰囲気はありません。こういった状況が、遊牧民の子ども達にとって、学校を中退する原因の1つとなっています。
寮の子ども達トウラングワ ©Save the Children Japan
そこで私たちのプロジェクトでは、まず学校寮の娯楽室を、楽しい!と思える部屋に改築し、それを「子ども発達センター」と呼ぼうと決めました。そして次に、小学校の先生、寮母さん、コミュニティ教育協議会メンバーなどの養育者たちが良き相談相手になり、そのセンターで子どもたちが「楽しい!」と思える遊びや交流を企画できるように研修を行うことにしました。約1年が経ち、ようやく「子ども発達センター」での活動が活発になってきています。
プロジェクトでは、30の学校寮で「子ども発達センター」を設置しましたが、今回は、その中でもアルハンガイ県ウルジ村立小学校の寮にある「子ども発達センター」の様子を紹介したいと思います。
アルハンガイ県の先生たちへの研修 ©Save the Children Japan
ウルジ村立学校の初等部(1〜5年生まで)の全校生徒数は264人です。その内37人が寮生活を送り、91人が知り合いの家に身を寄せています。約半数の子どもが、両親と分かれて生活をしていることになります。寮には娯楽室があり、子ども達は宿題をしたり小さなパーティーを催すのに時々使用していましたが、とても殺風景で、小さな子どもが楽しいと思える雰囲気はありませんでした。
そんな娯楽室が、今はこんな素敵な「子ども発達センター」に生まれ変わりました!下の写真を見てください。センターでの活動を支えるためにプロジェクトからは、机・椅子・本棚などの基本的な家具に加え、おもちゃや本を購入しました。また地域の人々にも支えられ、更にすばらしいセンターとなりました。ウルジ村立小学校とコミュニティ教育協議会からは、総額訳40万円相当のカーペット、机、身長計、体重計、黒板、本、おもちゃなどの寄付がありました。また保護者からも手作りの伝統的おもちゃの寄付があり、センターの改築工事にはボランティアの参加がありました。
寮にいる子どもたち、学校近くに住居を構える親戚の家に身を寄せる子どもたちは、いつでもセンターを利用することが出来ます。
改築前のウルジ村立学校の寮の娯楽室 ©Save the Children Japan
改築後のウルジ村立学校の「子ども発達センター」 ©Save the Children Japan
更にセンターでは、研修に参加した小学校の先生、寮母さん、コミュニティ教育協議会のメンバーによって、放課後活動が毎日行われています。まずは、学校の授業についていけることが、学校が楽しくなるための重要な要素の1つなので、算数の補習授業3回、国語の補習授業2回が毎週行われています。それに加え、季節ごとの行事、子どもたちの誕生日会など、年間行事も子どもと一緒に決めました。みんなで決めたことや考えたことを、子ども達が掲示物を作り、壁に貼っていきました。子どもたちの作品のおかげで、センターの雰囲気がとても明るくなりました。
国語の補習授業を行う学校の先生 ©Save the Children Japan
年間行事が書き込まれた年間計画表 ©Save the Children Japan
壁に張られた子どもたちの作品 ©Save the Children Japan
この寮で生活する2年生のテュブハンバヤーさんに、インタビューしてみました。
テュブハンバヤーさん ©Save the Children Japan
「僕は2年生。小学校に上がった昨年から、お父さんとお母さんと別れて、この寮で生活しているよ。最初は本当に寂しかったけれど、寮には兄ちゃんと姉ちゃんがいたので、まだよかった。娯楽室?前は行ってなかったよ。だって面白くない。いつも、自分の部屋の中で、兄ちゃんと姉ちゃんと遊んでいたよ。
僕のお父さんとお母さんは羊やヤギを飼っている遊牧民。 僕に会いに来てくれるのは、1ヶ月に1回かな?動物たちだけにしておく訳にはいかないから、仕方がないよね。
幼稚園?僕は小学校に上がるまで、ずっと家にいたから、幼稚園のことは知らない。夏場だけ、学校に上がる準備のための教室がある、って聞いたことがあるけれど、僕は行っていなかったから。でも、家ではいつもみんな一緒で楽しかったな。学校が休みの時家に帰ると、寮に戻りたくない!って、お母さんを困らせたね。
でも、もう今は違うよ。僕、このセンターが大好き。センターに来て、友達と遊ぶのが大好き。見たこともないおもちゃや絵本がたくさんあって、何時間いても飽きないよ。」
アルハンガイ県ウルジ村立学校の子ども達 ©Save the Children Japan
このセンターが、親元を離れて寂しい思いをしている子どもたちに元気を与える場所になってきています。また養育者たちが、もっともっと子どもにとって楽しいセンターになるようにと、いろいろな工夫していることもうれしい事実です。今後も工夫が重ねられ、親元を離れた辛さから途中で学業をあきらめることなく、1人でも多くの子どもたちが学校を続けられるようになることが、私たちプロジェクトチームの最大の願いです。そして子どもたちが大きくなったときに、この寮での生活がとても楽しかったと思い出してもらえればいいなと思っています。
では最後に、アルハンガイ事務所のスタッフを紹介します。
アルハンガイ事務所のスタッフ ©Save the Children Japan
アルハンガイ事務所のスタッフは、全員で3人です。リーダーのナラントヤ(写真前列右)、会計担当のアルジャガル(写真前列左)、運転手のシジルバット(写真後列)です。彼らは、支援対象の村の小学校を訪問するために、時に片道200kmも走ることもあります。彼らの努力なしに、事業の成功はありえません。これからも、彼らと共に、子どもたちの嬉しそうな顔をみるために、走り回ります!
今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
(遊牧民の子ども達が抱える問題については、以下のプログでも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1048
(アルハンガイ県については、以下のプログでも紹介しています。)
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=1150
―モンゴル遠隔地における最も不利な状況に置かれた子どもたちのための基礎学力向上支援事業―
小学校中途退学の子どもが特に多いモンゴル遠隔地4県で、標準的な教育を受けていない、もしくは受けられないでいる子どもたち(5〜10才)の初等教育における学力の維持、さらに向上を目指して支援しています。
事業期間:2012年6月21日〜2016年6月20日
事業分類:【教育支援】
本事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成と、皆さまからのご支援を受けて実施しています。
(報告;モンゴル事務所 ウラングワ)