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モンゴル
(公開日:2024.11.11)

【モンゴル】インクルーシブな乳幼児発達支援事業開始

 
セーブ・ザ・チルドレンは、障害、ジェンダー、言語、宗教、国籍やその他の特徴に関わらず、すべての子どもが参加し、ともに学び、可能性を十分に発揮できるよう、個々の学習のニーズに対応した教育を提供できる環境の実現を目指しています。私たちは、このような教育をインクルーシブ教育と呼んでいます1

セーブ・ザ・チルドレンは、特に就学前の子どもたちの支援に重点を置き、2024年3月30日より、外務省日本NGO連携無償資金協力のご支援を受けて、「モンゴルにおける包括的・包摂的(インクルーシブ)な乳幼児の発達支援推進事業」を開始しました。現在、この事業は順調に進行しています。


2024年3月25日、在モンゴル日本国大使館にて、事業実施に関する契約書の署名式が執り行われました(写真向かって右:井川原賢モンゴル国駐箚特命全権大使。写真向かって左:豊田光明セーブ・ザ・チルドレンアジア地域マネージャー兼モンゴル事務所所長)。


2024年3月25日に、在モンゴル日本国大使館において、事業実施に関する契約書の署名式が執り行われました。署名式では、井川原賢モンゴル国駐箚特命全権大使から、より包括的・包摂的な社会を築くためには、適切なタイミングで適切な対応をとることが重要であり、特に未就学児への支援提供が重視されていることに対して、期待と感謝のメッセージが伝えられました。

セーブ・ザ・チルドレンは、より包括的で包摂的な社会の構築と、すべての子どもたちが平等に教育を受けられる環境を整えるため、2018年〜2023年の6年間、モンゴルの義務教育課程においてインクルーシブ教育の普及に取り組んできました。特に、障害や疾患を持ち、公教育を受けられていない子どもたちが、個別のニーズに応じた質の高い教育を受けられるよう、教員の能力強化や保護者への啓発活動、政策提言を実施してきました。その結果、モンゴルの義務教育課程でインクルーシブ教育を推進する基盤を整えることができました。2 

一方で、6年間の事業を通じて明らかになったことは、子どもたちが義務教育に進む前に行われる乳幼児健診や就学前教育の重要性です。乳幼児健診は、発達の遅れや障害を早期に発見するための重要な手段であり、早期発見によって適切な医療やリハビリテーション、そして教育的サポートを速やかに提供することが可能になります。これにより、子どもの発達を促進し、義務教育をスムーズに開始できる環境が整います。子どもたちのニーズを早期から的確に把握することで、彼ら一人ひとりに合った支援・指導計画を「発達支援計画(学校の場合は、個別指導計画)」にまとめて実施することができ、より質の高い教育、発達支援を実施し、その後の義務教育課程での教育機会にも繋げることができます。
 

事業で支援している幼稚園の子どもたち

モンゴルでは、保健センター、支部委員会、幼稚園という3機関が連携し、分野を横断して以下のような「乳幼児発達支援」をサポートしています。

• 早期発見:家庭保健センター(1次医療機関)で障害の可能性が発見される 
• アセスメント・診断:県・地区保健センター(2次医療機関)でアセスメント・診断が
行われる 
• 発達支援サービスの実施:就園・就学に向けた支援、治療・リハビリの実施、手当の支給・助成など

(保健省・労働社会保障省・教育科学省が3大臣共同命令「障害のある子どもに対する包括的発達支援の手順書」より)


このような支援体制が政策レベルで存在している一方、現場では、さまざまな障壁により、早期発見・介入が適切に機能していないことが、セーブ・ザ・チルドレンの調査で明らかになりました。

例えば、早期発見を実施する保健センターでは、調査に参加した多くの保護者が、乳幼児健診の存在を知らないために受診していないことや、乳幼児健診に必要な資機材や環境が整備されていないことで健診が適切に実施されていません。また、適切な医療・教育・福祉サービスへのアクセスを支援する役割をもつ支部委員会は、委員会内としての役割が不明瞭となっていることや、社会参加や就学の推進を含む発達支援計画を策定する人材や能力が不足していることがわかりました。さらに、発達支援提供の場となる幼稚園では、個人のニーズに合わせた教育が実施できていないことや、支援に対する保護者の合意が得られないために支援を提供できないという実情があります。

乳幼児の発達支援をしていく中で親の参画は欠かせないものとなりますが、早期発見・介入に対する保護者・養育者の理解不足や地域住民の協力不足も、包括的・包摂的な乳幼児発達支援を普及していくうえでの障壁となっています。障害や発達の遅れの早期発見介入が適切に行われず、発達支援や就学の機会を逃し、保健や教育サービスから取り残されてしまう子どもたちも多くいます。こうした実情を踏まえて、セーブ・ザ・チルドレンでは、「モンゴルにおける包括的・包摂的な乳幼児の発達支援推進事業」を実施しています。

この事業は、ウランバートル市の中でも人口密度が高く、上下水道など基礎インフラが整備されていない3つの地域と、国内でも比較的貧困率の高いセレンゲ県、バヤンホンゴル県から、各5小地区を選定して実施しています。保健センター、支部委員会、幼稚園を連携し、障害の早期発見・介入のモデルとなる地区を作っていくため、以下のような活動を実施していきます。

1. 家庭保健センターの医師が乳幼児健診を実施するための能力強化研修や、健診に必
要な機材や環境の整備
2. 支部委員会の能力強化
3. 幼稚園の能力強化・体制整備および小学校への接続支援
4. 保護者・地域住民に対する啓発活動
5. 政策提言

2024年9月18日には、対象幼稚園および家庭保健センターへの機器譲渡、施設のバリアフリー工事が完了し、お披露目式を実施しました。参加した日本大使館の山上二等書記官からは、「今回の事業は資材供与が最終的な目標ではなく、その先のインクルーシブな社会が目標です。今回供与したものが、就学前の子ども達の障害の早期発見や発達支援などの皆さまの仕事が 少しでも力になるよう願っています。」とあいさつがありました。今後、これらの環境を活用していくための実践的な研修も行っていきます。
 

家庭保健センターへの機器譲渡式


本事業は皆さまからのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。

(報告:海外事業部 中村茜)

Inclusive Education Position Paper | Save the ChildrensResource Centre

2【モンゴル】基礎教育段階におけるインクルーシブ教育推進事業の完了(savechildren.or.jp)


 

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