モンゴル(公開日:2021.05.13)
【モンゴル 教育支援】中学校でも、すべての子どもが学ぶことができる環境を目指して:インクルーシブ教育推進事業の対象を小学校から中学校にまで拡大
モンゴルでは、障害や家庭の経済状況、言語の違いなどさまざまな理由により、他の子どもたちと同じ環境で教育を受けることができない子どもたちが少なくありません。セーブ・ザ・チルドレンは、これまで、さまざまなニーズを持つ子どもたちが、平等に質の高い教育を受けられるよう、小学校においてインクルーシブ教育[1]を推進する事業を実施してきました。
2018年3月から行った3年間にわたる事業では、公立小学校のみならず生涯学習センター[2]の教師たちに対し、子どもたちのニーズを的確に把握し、それぞれの子どもに合った指導ができるよう能力強化を行いました。
また、学校に行くことができない子どもを特定し、通学を促したり、教師による家庭訪問を通して学習機会を提供したりしてきました。さらに、子どもたちや保護者、地域社会の人々に対して、障害のある子どもや、発達段階におけるニーズへの理解を深めてもらうために、啓発イベントの実施や、動画やポスターでのメッセージ配信を通じた啓発活動を行いました。
これらの活動を経て、事業対象の生涯学習センターから公立小学校に復学、編入した生徒の割合は、事業開始前の2017年には6%だったのが、2019年には16.7%と大きく増加しました。また、教師に聞き取り調査を行ったところ、言語や数字認識など子どもたちの学力向上だけでなく、自己肯定感やコミュニケーション能力など、心理面や社交性にも改善が見られたことがわかりました。さらに、事業活動を通して得た学びや成果を、モンゴルの教育制度の改善に生かすために、政策提言も実施してきました。
一方、事業を通して浮かび上がってきた課題は、小学校卒業後、進学した先の中学校におけるインクルーシブ教育の必要性でした。子どもたちが学ぶスピードは一人ひとり違いますが、中学校に入ると科目数が増え、特に学習障害、注意欠陥障害など、目に見えにくい障害のある子どもたちが勉強についていけず、中退してしまうケースが見受けられました。
中学校では、教師にインクルーシブ教育に関する知識や経験が伴わない場合があることや、子どもが小学校で個別の学習指導を受けていたとしても、それが中学校に引き継がれない体制の課題があることもわかりました。さらに、保護者も、思春期の子どもに対する接し方などについて不安を抱えていることも明らかとなりました。
こうした事情をふまえて、セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもたちが小学校、中学校の義務教育期間に質の高い教育を受けられるよう、2021年3月より、インクルーシブ教育推進の対象を中学校にまで拡大させた新たな事業を開始しました。
この事業では、ウランバートル市の中でも「ゲル地区」と呼ばれ、人口密度が高く、上下水道など基礎インフラが整備されていない3つの地域と、国内でも比較的貧困率の高いホブド県とウブルハンガイ県の計8校を中心に、以下のような活動を実施していく予定です。
● 中学校の教師のインクルーシブ教育に対する理解向上に向けた能力強化
● 小学校から中学校への学習指導計画の引き継ぎ体制の確立
● 新しく中学校に入学してくる生徒を上級生たちが支援するための生徒会活動の支援
● 保護者や社会に対する啓発活動や、インクルーシブ教育に関する政策提言
モンゴルでは現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、移動の制限、学校の閉鎖などの措置が取られています。活動が計画通り進まないこともありますが、本事業を通して、すべての子どもたちが、それぞれのニーズに即した環境で他の子どもたちと学び、ともに成長し合うことができるよう今後も活動を進めていきます。
本事業は皆さまからのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
(報告:海外事業部 福田直美)
[1] セーブ・ザ・チルドレンでは、障害、ジェンダー、言語、宗教、国籍やその他の特徴に関わらず、すべての子どもが参加し、ともに学び、可能性を十分に伸ばすことができるよう、個々の学習のニーズへの対応を受けられる教育環境を目指しています。
[2] 生涯学習センターでは、所定の学年のカリキュラムに沿って学ぶことが難しい子どもや、障害や家庭の経済状況などの理由で公立学校に通うことができない子どもたちに教育を提供しています。
2018年3月から行った3年間にわたる事業では、公立小学校のみならず生涯学習センター[2]の教師たちに対し、子どもたちのニーズを的確に把握し、それぞれの子どもに合った指導ができるよう能力強化を行いました。
また、学校に行くことができない子どもを特定し、通学を促したり、教師による家庭訪問を通して学習機会を提供したりしてきました。さらに、子どもたちや保護者、地域社会の人々に対して、障害のある子どもや、発達段階におけるニーズへの理解を深めてもらうために、啓発イベントの実施や、動画やポスターでのメッセージ配信を通じた啓発活動を行いました。
これらの活動を経て、事業対象の生涯学習センターから公立小学校に復学、編入した生徒の割合は、事業開始前の2017年には6%だったのが、2019年には16.7%と大きく増加しました。また、教師に聞き取り調査を行ったところ、言語や数字認識など子どもたちの学力向上だけでなく、自己肯定感やコミュニケーション能力など、心理面や社交性にも改善が見られたことがわかりました。さらに、事業活動を通して得た学びや成果を、モンゴルの教育制度の改善に生かすために、政策提言も実施してきました。
一方、事業を通して浮かび上がってきた課題は、小学校卒業後、進学した先の中学校におけるインクルーシブ教育の必要性でした。子どもたちが学ぶスピードは一人ひとり違いますが、中学校に入ると科目数が増え、特に学習障害、注意欠陥障害など、目に見えにくい障害のある子どもたちが勉強についていけず、中退してしまうケースが見受けられました。
中学校では、教師にインクルーシブ教育に関する知識や経験が伴わない場合があることや、子どもが小学校で個別の学習指導を受けていたとしても、それが中学校に引き継がれない体制の課題があることもわかりました。さらに、保護者も、思春期の子どもに対する接し方などについて不安を抱えていることも明らかとなりました。
こうした事情をふまえて、セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもたちが小学校、中学校の義務教育期間に質の高い教育を受けられるよう、2021年3月より、インクルーシブ教育推進の対象を中学校にまで拡大させた新たな事業を開始しました。
この事業では、ウランバートル市の中でも「ゲル地区」と呼ばれ、人口密度が高く、上下水道など基礎インフラが整備されていない3つの地域と、国内でも比較的貧困率の高いホブド県とウブルハンガイ県の計8校を中心に、以下のような活動を実施していく予定です。
● 中学校の教師のインクルーシブ教育に対する理解向上に向けた能力強化
● 小学校から中学校への学習指導計画の引き継ぎ体制の確立
● 新しく中学校に入学してくる生徒を上級生たちが支援するための生徒会活動の支援
● 保護者や社会に対する啓発活動や、インクルーシブ教育に関する政策提言
モンゴルでは現在、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため、移動の制限、学校の閉鎖などの措置が取られています。活動が計画通り進まないこともありますが、本事業を通して、すべての子どもたちが、それぞれのニーズに即した環境で他の子どもたちと学び、ともに成長し合うことができるよう今後も活動を進めていきます。
本事業は皆さまからのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
(報告:海外事業部 福田直美)
[1] セーブ・ザ・チルドレンでは、障害、ジェンダー、言語、宗教、国籍やその他の特徴に関わらず、すべての子どもが参加し、ともに学び、可能性を十分に伸ばすことができるよう、個々の学習のニーズへの対応を受けられる教育環境を目指しています。
[2] 生涯学習センターでは、所定の学年のカリキュラムに沿って学ぶことが難しい子どもや、障害や家庭の経済状況などの理由で公立学校に通うことができない子どもたちに教育を提供しています。