モンゴル(公開日:2014.11.17)
【幼稚園プロジェクト(21)・最終】「子どもにやさしいモデル幼稚園」が広がりつつあります(2014.11.17)
2011年8月から実施していた「子どもにやさしい幼稚園」推進事業が、2013年9月8日をもって終了しました。「モンゴルの公立幼稚園は、なぜ子どもにも先生にもやさしくないのか?」ということについて、事業開始からの3年間、様々な関係者の方々と常に語り合いながら、活動を続けてきました。
先生と一緒に歌を歌う子どもたち ⓒSave the Children Japan
モンゴルの公立幼稚園が子どもにも先生にもやさしくない原因はいろいろありますが、私たちはまず、一教室当たりの子どもの数が多すぎる、という現実に着目しました。国の規定では一教室25人が上限の人数であるにも関わらず、35人以上の教室が当たり前になっていて、多いところでは70人近い園児がいる場合もあります。35〜70人もの園児を一人の先生がみているため、先生への能力・意識向上研修だけでは根本的な問題解決にならない状況がありました。
大勢の子どもを相手に指導をする先生 ⓒSave the Children Japan
ここでは、そのような状況を改善するためにセーブ・ザ・チルドレン・モンゴル事務所が実施した施策を、3年間のまとめとしてモデル幼稚園で行った事業評価の結果をご紹介する形で振り返ります。
教室いっぱいの子どもたち ⓒSave the Children Japan
事業評価では、450人以上の幼稚園関係者と300人以上の保護者に「事業に関わって何を学んだのか?そして何が変わったのか?」という質問に対して話を聞きました。その中で、特に印象に残ったコメントを、事業内容の事例と共にご紹介します。
助手の先生について
モンゴルでは、一教室に助手の先生が一人配属されていますが、助手の先生の多くは、高校以上の専門教育を受けていません。そのためモンゴル教育科学省は、助手の先生の専門性を高めることを奨励しています。彼らの専門性が高まり、先生と一緒に子どもの教育に携わることができるようになれば、一教室に教育者が二人いるような状態にすることができるからです。しかし、助手の先生のための適切なカリキュラムや教科書がなく、研修への参加の機会もわずかしかないという状況がありました。そこで、私たちの事業では、助手の先生のための卒後教育研修カリキュラムを、モンゴル国立教育大学と共同で立ち上げました。
危険を除去するための収納方法を話し合う助手の先生たち ⓒSave the Children Japan
事業にかかわったある助手の先生の話
「私は、この幼稚園で働いて4年になります。保護者の皆さんは、私を、教育に携わる職員ではなく、清掃員と思っていたと思います。自分自身も、毎朝出勤するとき『今日はどこを掃除しよう。どうやって時間をつぶそう。』と考えていました。どんな援助団体が入っても、私たち助手は、研修に呼ばれることはありません。大学の卒後研修にも、助手対象の研修コースはありませんでした。
しかし、セーブ・ザ・チルドレンのプロジェクトが始まって、私は何度か研修に参加することができました。その後、幼稚園の先生の教育活動を手伝うようになりました。やがて、保護者の皆さんの私に対する態度が大きく変わってきました。保護者の皆さんは、教育の専門家として、私にいろいろ相談してきます。今は、『今日はどの本を読んであげようかな?』とか、『先生が不在になる間、どんな遊びをして子どもを指導しようかな。』と考えながら通勤しています。私は今、この仕事を誇りに思っています。」
新しい衛生教育活動について説明をする助手の先生(右) ⓒSave the Children Japan
保護者について
保護者が、幼稚園での教育や行事に関心を持ち積極的に関わることで、子どもの教育を、家庭と幼稚園が二人三脚で行う体制が整います。これは、先生にとってとても重要なサポートです。「保護者との連携」も、モンゴル教育科学省が推進していることですが、今までは、具体的に何をすればよいのかがわからず、幼稚園の先生たちは困っていました。この課題に対し、私たちは事業の中で、保護者会の開催や連絡帳の活用方法などを紹介しました。
幼稚園が企画する行事に参加する保護者ら ⓒSave the Children Japan
保護者会の代表を務め、連絡帳を利用しているある保護者の話
「ある夜、娘に早く寝るようにといいました。すると娘から、『お父さん。だったら、早く私の連絡帳に、先生が書いてください、とお願いしたことを書いてちょうだい!そしたらその後、私は寝ます!』といわれました。それ以来、連絡帳にはよく目を通して、何を幼稚園で勉強しているのか、先生からの連絡は何か、把握するようにしています。
また最近娘は、自分から早く幼稚園に行こう、といいます。遅れていきたくないそうです。理由を聞くと、朝、連絡帳の出席簿の欄に色を塗るのが楽しみだからと答えました。今までは、少しぐらい遅れてもいい、と時間内に登園することを真剣に考えていませんでした。しかし今は、時間内に登園すること、欠席しない習慣をつけることは、とても重要なことだと思うようになりました。娘からたくさんのことを学んでいます。
私は保護者会の代表を務め、幼稚園の行事にも多く関わるようになりました。幼稚園は常に予算が不足しています。私たちは、企業に働きかけて、衣類、家具、おもちゃ、カメラなどの寄付をもらうことに成功しました。地元の警察と掛け合って、幼稚園近くに信号機を設置してもらったり、歩行者を守るために道路脇フェンスを取り付けてもらったりした保護者会もあります。」
幼稚園が企画する行事に参加する保護者ら ⓒSave the Children Japan
このように周りの協力体制が整うことで、幼稚園の先生は、仕事がもっとしやすくなり、子どもにもやさしくなれると思います。
事業は終了しますが、今後「モデル幼稚園」を参考に、より多くの幼稚園が、「子どもにも先生にもやさしい幼稚園」作りに取組んでくれることを願っています。
体罰のない職場環境を目指して職員研修をする幼稚園 ⓒSave the Children Japan
ー子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクトー
対象地区の幼児(2歳〜5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しました。
事業期間:2011年8月23日〜2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しました。
(報告;モンゴル事務所 柴田)
事業運営チーム ⓒSave the Children Japan
先生と一緒に歌を歌う子どもたち ⓒSave the Children Japan
モンゴルの公立幼稚園が子どもにも先生にもやさしくない原因はいろいろありますが、私たちはまず、一教室当たりの子どもの数が多すぎる、という現実に着目しました。国の規定では一教室25人が上限の人数であるにも関わらず、35人以上の教室が当たり前になっていて、多いところでは70人近い園児がいる場合もあります。35〜70人もの園児を一人の先生がみているため、先生への能力・意識向上研修だけでは根本的な問題解決にならない状況がありました。
大勢の子どもを相手に指導をする先生 ⓒSave the Children Japan
ここでは、そのような状況を改善するためにセーブ・ザ・チルドレン・モンゴル事務所が実施した施策を、3年間のまとめとしてモデル幼稚園で行った事業評価の結果をご紹介する形で振り返ります。
教室いっぱいの子どもたち ⓒSave the Children Japan
事業評価では、450人以上の幼稚園関係者と300人以上の保護者に「事業に関わって何を学んだのか?そして何が変わったのか?」という質問に対して話を聞きました。その中で、特に印象に残ったコメントを、事業内容の事例と共にご紹介します。
助手の先生について
モンゴルでは、一教室に助手の先生が一人配属されていますが、助手の先生の多くは、高校以上の専門教育を受けていません。そのためモンゴル教育科学省は、助手の先生の専門性を高めることを奨励しています。彼らの専門性が高まり、先生と一緒に子どもの教育に携わることができるようになれば、一教室に教育者が二人いるような状態にすることができるからです。しかし、助手の先生のための適切なカリキュラムや教科書がなく、研修への参加の機会もわずかしかないという状況がありました。そこで、私たちの事業では、助手の先生のための卒後教育研修カリキュラムを、モンゴル国立教育大学と共同で立ち上げました。
危険を除去するための収納方法を話し合う助手の先生たち ⓒSave the Children Japan
事業にかかわったある助手の先生の話
「私は、この幼稚園で働いて4年になります。保護者の皆さんは、私を、教育に携わる職員ではなく、清掃員と思っていたと思います。自分自身も、毎朝出勤するとき『今日はどこを掃除しよう。どうやって時間をつぶそう。』と考えていました。どんな援助団体が入っても、私たち助手は、研修に呼ばれることはありません。大学の卒後研修にも、助手対象の研修コースはありませんでした。
しかし、セーブ・ザ・チルドレンのプロジェクトが始まって、私は何度か研修に参加することができました。その後、幼稚園の先生の教育活動を手伝うようになりました。やがて、保護者の皆さんの私に対する態度が大きく変わってきました。保護者の皆さんは、教育の専門家として、私にいろいろ相談してきます。今は、『今日はどの本を読んであげようかな?』とか、『先生が不在になる間、どんな遊びをして子どもを指導しようかな。』と考えながら通勤しています。私は今、この仕事を誇りに思っています。」
新しい衛生教育活動について説明をする助手の先生(右) ⓒSave the Children Japan
保護者について
保護者が、幼稚園での教育や行事に関心を持ち積極的に関わることで、子どもの教育を、家庭と幼稚園が二人三脚で行う体制が整います。これは、先生にとってとても重要なサポートです。「保護者との連携」も、モンゴル教育科学省が推進していることですが、今までは、具体的に何をすればよいのかがわからず、幼稚園の先生たちは困っていました。この課題に対し、私たちは事業の中で、保護者会の開催や連絡帳の活用方法などを紹介しました。
幼稚園が企画する行事に参加する保護者ら ⓒSave the Children Japan
保護者会の代表を務め、連絡帳を利用しているある保護者の話
「ある夜、娘に早く寝るようにといいました。すると娘から、『お父さん。だったら、早く私の連絡帳に、先生が書いてください、とお願いしたことを書いてちょうだい!そしたらその後、私は寝ます!』といわれました。それ以来、連絡帳にはよく目を通して、何を幼稚園で勉強しているのか、先生からの連絡は何か、把握するようにしています。
また最近娘は、自分から早く幼稚園に行こう、といいます。遅れていきたくないそうです。理由を聞くと、朝、連絡帳の出席簿の欄に色を塗るのが楽しみだからと答えました。今までは、少しぐらい遅れてもいい、と時間内に登園することを真剣に考えていませんでした。しかし今は、時間内に登園すること、欠席しない習慣をつけることは、とても重要なことだと思うようになりました。娘からたくさんのことを学んでいます。
私は保護者会の代表を務め、幼稚園の行事にも多く関わるようになりました。幼稚園は常に予算が不足しています。私たちは、企業に働きかけて、衣類、家具、おもちゃ、カメラなどの寄付をもらうことに成功しました。地元の警察と掛け合って、幼稚園近くに信号機を設置してもらったり、歩行者を守るために道路脇フェンスを取り付けてもらったりした保護者会もあります。」
幼稚園が企画する行事に参加する保護者ら ⓒSave the Children Japan
このように周りの協力体制が整うことで、幼稚園の先生は、仕事がもっとしやすくなり、子どもにもやさしくなれると思います。
事業は終了しますが、今後「モデル幼稚園」を参考に、より多くの幼稚園が、「子どもにも先生にもやさしい幼稚園」作りに取組んでくれることを願っています。
体罰のない職場環境を目指して職員研修をする幼稚園 ⓒSave the Children Japan
ー子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクトー
対象地区の幼児(2歳〜5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しました。
事業期間:2011年8月23日〜2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しました。
(報告;モンゴル事務所 柴田)
事業運営チーム ⓒSave the Children Japan