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モンゴル
(公開日:2016.08.01)

モンゴルにおける寒雪害(ゾド)被災者支援

 
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、モンゴルで昨年暮れより発生していた寒雪害「ゾド」の被害を受けた遊牧民の子どもたちの支援を行っています。学校に通うために、遊牧生活をする親元を離れて寄宿舎で生活している子どもたち等へ、支援物資の配布や心理社会的サポートを行うとともに、教育支援を行っています。

支援物資の配布
真冬の氷点下58℃という気温から比べると大分暖かくなり、4月以降は、日中は摂氏10度程度まで気温は上昇するようになりました。それでも5月に入って再び気温が低下、積雪が報告されるなど、雪害はしばらくの間、続きました。当会では、寄宿舎で生活する子ども、子どもたちだけで生活する世帯に対して、毛布やシーツ、ブーツ、手袋や毛糸の帽子などの防寒具の配布を行うと同時に、子どもたちが清潔に過ごせるように歯ブラシや歯磨き粉、タオルや石鹸を含む衛生用品の配布を行いました。

子どものための心理的応急処置研修
ゾドのため、遊牧民の人達は家畜を失うなどの深刻な被害を受けており、子どもたちのストレスも高まっています。4月から行っている熊本地震対応でも実施した、子どものための心理的応急処置(PFA)。このPFAとは、「見る」「聴く」「つなぐ」の行動原則を通し、災害等の影響によりストレスを抱えている子どもの置かれた状況をそれ以上悪化させないことを目的として策定された、心理社会的支援の手法です。この指導者向け研修を、首都のウランバートル市で4月に4日間かけて行いました。被災県の教育及び福祉関係者やモンゴル赤十字の職員、首都ウランバートルで子ども支援にあたるNGO関係者などが研修に参加しました。研修で行うロール・プレイでは、放牧中にけがをしてしまった子どものケースや、ゲルで親と離れて暮らしている子どもたちが支援を必要としているケースなどが実演されました。

首都から西へ500kmほど離れたアルハンガイ県とウブルハンガイ県では、指導者研修を受けた新人講師たちが行う研修を行いました。この研修には、日々、子どもたちと接する学校寮の先生やスクール・ソーシャル・ワーカー、学校医、同県の家庭子ども局の職員が参加しました。参加者の多くは女性。女性の社会参画の割合が高いモンゴルでは、この研修に参加するためにお子さんを家族に預けて参加している方もいました。参加者は非常に熱心でしたが、どうしても子どもに「話したく」なってしまう様子。普段子どもと関わっている分、子どもから「聴く」というのは意外と難しいことを関係者は認識しました。

見て、聴いて、つなごう!子どものための心理的応急処置研修 参加者からの声
こうした地方研修参加者より、2人のインタビューをお届けします。


ウブルハンガイ県での研修の様子

まずは、郡の学校でソーシャル・ワーカーを務めるダシカさん。



「私はプロのソーシャル・ワーカーとして学校に勤務し、悩みや課題を抱える子どもたちへの対応をしています。


今回の研修に参加して役に立つと思ったことは、『困難な状況にある子どもたちのニーズを特定する』という項目です。これは、学校の先生たちや、他の事務職員の人たちにも是非知ってほしい内容でした。子どもたちは学校で多くの時間を先生と過ごすので、もし学校の先生がこの考え方を理解してくれていれば、何か子どもたちが心に課題を抱えたとき、ソーシャル・ワーカーである私につないでもらえることができます。私1人で400人の子ども全員の心の状態に常に気を配ることは難しいけれど、このPFAの原則を学校のスタッフ皆が理解し実践すれば、きっと学校は子どもたちにとってより良い環境になることでしょう。

研修内容はとても実践的で、すぐに使えるツールなどがあったのが良かったです。

私はこれからの1ヶ月で、今回習ったことをもとに、子どもたち同士の心のサポートワークショップを広める役目を担っています。私はそのチームのリーダーを務めますが、研修の内容もきちんと理解しましたし、きっと成功できるだろうと、自信を持っています。」


次は、プジェさんです。主に遊牧民の子どもたちが生活する学校の寄宿舎の管理をしています。日本で言う寮母さん的存在です。


「寄宿舎には75人の男女の生徒がいます。私は、朝9時に寄宿舎に出勤し、夜の間に子どもたちに問題がなかったか確認します。学校が始まったあと、まだ部屋に残っている子どもがいないか、もしいたとしたら、どうして学校に行かなかったのかなどを聞いたりします。何か問題があった場合は生徒の保護者に連絡を取ったりすることもあります。

今回の研修では、子どもたち、特に何か支えが必要な子どもたちと話すときのコミュニケーションスキルを学びました。寮に帰ったら使えるツールがたくさんありましたね。時々、困っている子どもたちを見かけるので、そのようなときにどうやって話したら良いかがよく分かりました。

研修を受ける前には、「応急処置(ファースト・エイド)」と聞いたので、何か絆創膏のような傷の手当のことかな?と思いました。でも「心理的(サイコロジカル)」ともあったので、何かとても専門的なことなのかなと思い、私にできるだろうかと不安にもなりました。
でも今は、これがコミュニケーションの取り方、詳細なスキルを意味していたのだと分かり、参加して良かったと思っています。とても実践的な内容でした。

「心が傷つく」というのは、大人は気づきにくいけれど、とても重要で、注意するべき点なのだと思いました。そういう状態にある子どもたちの声をどうやって「聞く」か、その色々なスキルを学べたことが良かったと思います。


モンゴル語で書かれた、3L(見る(ルック)、聴く(リッスン)、
つなぐ(リンク)というPFAの原則

今回の研修でたくさんのことを学べましたが、次は自分が子どもたちに伝えていく番だと思うと、少し不安もあります。子どもたちにきちんと伝えていけるかな、自分にできるだろうか? と思う面もありますが、でも一生懸頑張りたいと思います!」


時にはみんなで楽しくダンス!(集中力を取り戻すためのエナジャイザー)

PFAの原則を学んだ彼らは、今後ますます、地域の中で子どもを支えるキーパーソンとなってくれることでしょう。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは引き続き、遊牧民の子どもたちに対する心理社会的サポートを始めとした支援を行い、災害の影響を最小限に食い止めると共に、これ以上子どもたちが脆弱な立場に追いやられることのないよう活動を続けていきたいと思います。

海外事業部 紺野誠二・藤井麻衣子

◆セーブ・ザ・チルドレンのモンゴルにおけるゾド被災者支援
セーブ・ザ・チルドレンでは、2016年1〜2月、モンゴル西部において、遊牧民、行政・教育関係者などから聞き取り調査を実施。同年3月には、モンゴル東部で支援ニーズの調査等を行いました。これらの結果から、遊牧民の子どもたちに対する支援が必要であると判断。遊牧民への現金支給、学校に対する暖房用燃料の支給のほか、心理的応急措置の支援もおこなっています。本事業は皆さまからのご支援と、ジャパン・プラットフォームからの助成により実施しています。

 

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