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モンゴル
(公開日:2018.08.15)

アジア防災閣僚級会議に参加して:日本で、アジアで、どうすればより災害に強い社会を築けるのか

 
巨大災害に対する国際社会の取り組み
毎年のように日本各地で発生している大規模自然災害。最近は熊本地震や西日本豪雨が記憶に新しい。地震や台風、洪水、干ばつ、豪雪といった自然災害は、日本のみならず世界各地で、甚大な人的・物的被害、さらには深刻な経済的損失をもたらしている。


2017年5月30日に、バングラデシュ沿岸部を襲った大型サイクロン「モラ」。およそ10万棟の家屋が被害を受けた

国連は、こうした巨大災害や災害リスクの脅威に対するより効果的な戦略を世界規模で打ち立て、各国・地域の防災・減災対策や制度強化を図り、災害に対してより強靭な社会・コミュニティ構築を目的として、2000年に国連国際防災戦略事務局をスイス・ジュネーブに設置した。

この事務局の重要な役割の一つとして、防災・減災分野に関する基本的な行動指針で、4つの優先行動と7つのターゲットからなる『仙台防災枠組2015−2030(The Sendai Framework for Disaster Risk Reduction)』の世界規模での実施推進と進捗モニタリングがある。


モンゴルで開催されたアジア防災閣僚級会議
2018年7月3日から5日にかけ、モンゴル・ウランバートル市において、国連国際防災戦略事務局とモンゴル政府の共催で、「災害リスクを防ぎ、持続可能な開発を守る(Preventing Disaster Risk: Protecting Sustainable Development)」をテーマに、「アジア防災閣僚級会議」が開催された。

2年に1度アジア地域で開催されるこの会議には、毎回アジア太平洋地域各国より、防災担当大臣や政府高官らのほか、防災・人道支援関係者(学術界、国際機関、NGO、民間企業など)が数千名参加し、『仙台防災枠組』で掲げたターゲット目標の達成度の確認や、2年先までの地域防災行動計画、そして各国政府代表者による共同宣言などの採択が行われる*。 


アジア防災閣僚級会議(2018)・本会場の様子


国連国際防災戦略事務局は、世界で最も災害が多い地域といわれているアジア太平洋地域で、『仙台防災枠組』の実施推進を図るため、この会議の運営方針として、各国のさまざまなステークホルダーから寄せられるインプットを精査し、会議の公式文書に反映させるため、市民社会、子どもと若者たちなどからなる、10のステークホルダー・グループを設置し、それぞれのグループの代表者が、本会議場で公式声明を発表できる機会も提供している。

会議最終日に、「子どもと若者」のステークホルダー・グループの代表者の一人としてグループ公式声明を発表したオーランさん(14才)は、セーブ・ザ・チルドレンがモンゴルで実施したゾド災害リスク軽減事業(2017−2018)の参加者でもある。グループ公式声明では、『仙台防災枠組』を各国・自治体レベルで実施推進される際、進捗モニタリングを含むそのすべてのプロセスにおいて、子どもたちと若者が平等なステークホルダーとして認知され、参加できる機会が提供され、確実に実践されていく必要性などが訴えられた。


「子どもと若者」のステークホルダー・グループを代表してグループ公式声明を発表したオーランさん(前列中央)とバットトゥールさん(前列右端)

今回の会議で、セーブ・ザ・チルドレンは、3つのサイド・イベントを主催・共催し、防災・減災活動の一環として、緊急下における子どものこころのケアに対応できる体制を国や自治体レベルで整えておくことの重要性と、教育現場における最新の防災・減災活動の取り組みや調査研究の結果などを、それぞれ日本やモンゴルの事例などを用いながら紹介した。


セーブ・ザ・チルドレンが主催したサイド・イベント「緊急下の子どものこころのケア・子どものための心理的応急処置」の登壇者


災害危機に強い社会とは?―今回の会議に参加して思うこと
会議に参加してみて、防災・減災のあり方について、改めて多くのことを考えさせられた。具体的には、防災・減災は、単なる一アクター(政府・行政)、または一分野(災害に強いインフラ整備または啓発活動・防災教育)だけの問題ではなく、常に複数のアクターと要素が絡み合い、同じ方向性に歩調を整えることで、より効果的でインパクトのある防災・減災体制や活動が実現できるということで、それらは、いずれも災害に強い社会を築き上げていくうえで、非常に重要であるということだ。

そして、災害に強い強靭な社会とは、災害危機の影響を直接受けやすい社会的に弱い立場にある人々(子どもや高齢者、障害のある人など)にとって、日頃から暮らしやすい社会なのだと考える。つまり、社会的に弱い立場にある人の権利や利益が普段から守られ、彼らが自主的・主体的に行政活動やコミュニティ活動に参加できる機会が日頃から提供され、さらには環境保全に配慮しながら包括的な経済発展を遂げている社会・コミュニティは、自ずと災害危機に対する備えも整うことになる。それにより、災害に対するリスクをはじめ、災害時の被害や損失も減少し、引いては災害後の復旧・復興過程でも、弱い立場にある人の視点からより強靭な社会・コミュニティの再構築が可能になるのだ。

こういった問題は、産学官民を問わず、国内外の開発支援、さらには社会福祉・介護福祉に携わっているすべての者に問われている課題だと思う。数多くの巨大災害を経験してきた日本社会が、防災・減災や復旧・復興の国際協力の場で、インフラ整備や防災教育の面だけでなく、行政活動における子ども参加の取り組みや、医療や介護・福祉の分野における研究活動や取り組みに関しても、モデルケースとしてその知見を共有できるように、引き続きリーダーシップを発揮する必要があると強く感じた。
*2015年第3回国連防災世界会議で、『仙台防災枠組2015-2030』が採択され、2016年にインド・ニューデリーで第1回アジア防災閣僚急会議が開催されて以来、今回が2回目。
(モンゴル事務所長 豊田光明)













 

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