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モンゴル
(公開日:2014.03.07)

【幼稚園プロジェクト(16)】「地域に開かれた図書室を幼稚園につくろう!」―第163番幼稚園の取り組み―(2014.03.07)

 

日本の皆さま、こんにちは。ムンフブルです。前回のブログでは、「地域に開かれた図書室を幼稚園内につくろう!」という幼稚園での図書室普及活動についてご紹介しました。この図書室普及活動は、2012年に始まり、書籍、戸棚やテーブルなどの備品の提供だけでなく、図書室の機能の強化についても取り組んでいます。事業開始から3年目に入った今では、幼稚園が主導で多様な活動が企画され、広がりをみせています。


ムンフブル ©Save the Children Japan

今回は、その中から、保護者の方々からのご寄付により図書室そのものを改築し、その後、読書活動を通じて、幼稚園と保護者との連携を一層深めた第163番幼稚園の事例も紹介したいと思います。

第163番幼稚園

この幼稚園は、地区の郊外に立地しています。約600人もの子どもが登園しているマンモス幼稚園で、ほとんどの子どもは上下水道の整備されていないゲル(モンゴルの伝統的家屋)や、2部屋しかないような簡素な住居で生活しています。こういったゲル地域で生活する人々の多くは、地方からの移住者で、生活は大変厳しいのが現実です。

保護者たちは生活や仕事に忙しく、子どものお守りをテレビに任せてしまうことが良くあります。また中学生ぐらいになると水汲みなど家事労働に駆り出されますので、幼稚園の子どもたちは、お兄さんやお姉さんがいても一緒に遊んでもらうということも難しくなります。ゲルでの生活は、1部屋(または2部屋)でなんでも行うことが基本ですので、夜、布団に入る前に、親が本を読み聞かせて、電気を消すという日本では当たり前の状況を作りだすことは不可能に近くなります。子どもに本を読むということが本当にまれである家庭がほとんどで、本を買いたくても買うことが出来ないという家庭も多いということが容易に想像できます。


ウランバートル市郊外のゲルが立ち並ぶ地区の様子 ©Save the Children Japan

2012年1月私たち事業は、第163番幼稚園を含む16の幼稚園に備品を提供し、図書室の目的を説明しました。当初この幼稚園も第67番幼稚園同様、教育主任の部屋に備品や書籍が置かれていました。保護者が来て本を借りるということはとても難しい状況でした。


2012年2月ごろの第163番幼稚園図書室の様子 ©Save the Children Japan

2013年の夏、幼稚園拡張工事が行われました。園長先生は、拡張される建物の中に、図書室を設けるよう行政と交渉しました。しかし、空き部屋はなんとか確保できたものの、図書室に必要な本棚、椅子などの予算は下りませんでした。そのため幼稚園は、保護者に協力を呼びかけました。その努力の結果、こんな素敵な図書室を作り上げました!総額費用は30万円。経費の8割は保護者からの寄付です。改築工事には、保護者が無報酬で労働を提供してくれました。


第163番幼稚園の現在の図書室の様子 ©Save the Children Japan

図書室の管理担当者は、教室を受け持っていない助手の先生が引き受けることになりました。そして、毎日7時30分から9時までの時間を、子どもと保護者のために開放しました。この時間は、子どもと保護者が自由に本を手に取り、読んだりできます。そして夕方3時30分から5時30分は貸し出しの時間と決めました。

またそれだけではありません。たくさんの保護者参加型の行事を始めました。まず、「意見ボックス」を設置し、多くの保護者の意見を取り入れる工夫を始めました。


意見ボックスに意見書を入れる保護者 ©Save the Children Japan

また「手作り絵本推進月間」を企画し、保護者に手作り絵本の作成を呼びかけました。


手作り絵本と作成する保護者 ©Save the Children Japan

おじいさんやおばあさんを定期的に幼稚園に招待し、「読み聞かせの会」、「昔話を語る会」など開催するようになりました。


「昔話を語る会」の様子 ©Save the Children Japan

また「給食試食会」を兼ねた授業参観日を開催したり、「絵画コンテスト」も保護者参加で企画するなど、幼稚園が保護者にいろいろな情報を提供し、幼稚園行事に積極的に参加してもらおうとしている様子が良くわかります。


給食試食会や絵画コンテストの様子 ©Save the Children Japan


この幼稚園に通うエンフジンちゃんの母親・バッチメグさんにお話を聞いてみました。

「私は、娘の幼稚園にこんなすばらしい図書室が出来たことを、本当に嬉しく思っています。私は、本を読むことがどれぐらい子どもの成長に重要なのか、本当に知りませんでした。最近、娘の語彙が急に増えて、いろいろなことを知っているな、と思うようになりました。本をよく読むようになったおかげでしょうね。
娘はこのあたらしい図書館に来ることが大好きです。それで送り迎えの際に、私も娘と一緒に、図書館で時間を費やすようになりました。いつも忙しく、娘と時間を過ごすことがなかったのですが、今ではこの図書室で、娘と一緒に本を読む時間が貴重な時間となりました。
私は、他の保護者たちにも、ぜひ言いたいと思っています。子どもと一緒に本を読んでください。それは子どもの成長のために、親子関係のためにとても重要なことです。もしどんな本を読んでよいのかわからなければ、この図書室の本を順番に読んだら良いと思います。この図書室には、私たち親にとっても、大変参考になる本がたくさんありますから。私は、娘の幼稚園を誇りに思います。」


バッチメグさんとエンフジンちゃん ©Save the Children Japan

こんな風に、図書館運営を通じて、幼稚園と保護者の信頼関係を深めている幼稚園は、他にもたくさんあります。第121番幼稚園の教育主任は、「昨年度末本の整理をし、2冊の本が紛失していることがわかりました。実は紛失ではなく、ある保護者が返すのを忘れているだけですが…でも、こういったことが図書室の運営の妨げになることはありません。図書室の書籍を大切にすることを保護者に説明しながら、今後も続けていくつもりです。」と話しています。

私たちの図書室普及活動は、子どもたちに本を読む機会を与え、子どもたちの成長を側面から支えることに貢献しました。また、親子の会話を増やすこと、一緒に過ごす時間を増やすことにも貢献しました。そして最後に、幼稚園と保護者の信頼関係を高めることにも貢献しました。この普及活動が、もっと多くの幼稚園に広がっていけばいいなあと願っています。

今後もご支援のほど、よろしくお願いします。


伝統的な衣装をまとうムンフブルとその仲間 ©Save the Children Japan


―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳〜5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しています。
事業期間:2011年8月23日〜2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
*本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しています。

 (報告:モンゴル事務所 ムンフブル)


 

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