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モンゴル
(公開日:2013.08.22)

【幼稚園プロジェクト(10)】モンゴル公立幼稚園初の「連絡帳」を、先生と保護者に紹介しました。(2013年8月22日)

 

日本の皆様、はじめまして。私は、今年の1月から、幼稚園事業運営チームメンバーとなり、モンゴルの子どもたちのために活動していますアリユンズル(アリ)といいます。


(アリ)

私は、昔から子どものために、子どもと一緒に働きたいと思い、ソーシャルワーカーの資格を取りました。その後、HIV/AIDS関係の事業で働き、患者や、ハイリスクの女性たちにインタビューする機会に恵まれました。その経験で感じたことは、早期の教育や、小さな子どもを持つ母親への指導がいかに重要かということです。ですので、現在、幼稚園の子どもたちや、その指導者である先生、または両親と共に子どもの教育に携わることを、とても嬉しく誇りに思っています。

さて本日は、私が担当している業務の1つ、「連絡帳」の活動について紹介したいと思います。モンゴルの公立幼稚園の問題の1つに、子どもの数がとても多いことは以前にお話しました。
http://www.savechildren.or.jp/scjcms/sc_activity.php?d=614

多いところでは1つの教室に60人以上もの子どもがいます。これでは、いくら「個別の子どもの様子を観察するように努めましょう。幼稚園での個々の子どもの成長の様子を、それぞれの保護者と共有しましょう」と働きかけても、取り組むことは難しいのが現実です。そこで、私たちの事業では、「連絡帳」を紹介することにしました。これがその連絡帳です。


(開発し、紹介した連絡帳の表紙)

全部で、33頁からなるこの連絡帳の80%を占めるのが、「毎日の登園カレンダー」の頁と、保護者とのコミュニケーションをするための「メモ欄」の頁です。これらの頁が、最も重要であると思っています。どんな些細なことでもいいので、気がついたその時に、カレンダー上、またはメモ欄に書くことはそれほど手間ひまかかりません。1ヶ月に1人の子どもに1から2回記載する程度でも、それを1年続ければ、十分に個々の子どもの成長の記録を残すことが出来るのでは、と考えました。


(毎日の登園カレンダーの頁の様子。夏休みを除く10か月分のカレンダーがあります。)



(登園カレンダーの右側はメモ欄。メモ欄左側は先生用、右側は保護者用です。1ヶ月1頁10か月分のメモ欄があります。)

2012年11月に始まりました連絡帳ですが、その6ヶ月後の5月にはこんな素敵な実践をしている先生を見つけることが出来ました。第124番幼稚園の先生です。

「はじめは、どうやってこの連絡帳を使って良いのかわかりませんでした。自分が幼稚園児のころ、連絡帳はありませんでしたし、幼稚園の先生になるための学校でも連絡帳を紹介されたことはありませんでした。何もかもはじめての経験でした。でも、事業運営チームの方から、何回にも渡り指導を受け、だんだんどんな風に活用していけばいいのか、自分なりの方法を見つけることが出来ました。

私は1日5人の子どもを観察することを目標にしています。それぐらいの記入は、手間ひまもかかりませんし、そうすれば1ヶ月間で全員の子どもに、最低2回は書くことが出来ます。
毎日の登園カレンダーは、授業中、子どもと一緒に色塗りをしています。子どもは自分の連絡帳に色を塗るのが大好きです。

保護者からは、『この連絡帳で、毎日どんな風に子どもたちが過ごしているのか、幼稚園の先生は、ただ単に子どもを預かっているのではなく、教育を提供してくださっているということも良く理解できました。』という嬉しいコメントをもらいました。その結果、私たちの話すことを真剣に聞いて、受け止めてくださるようになりました。」


また、第46番幼稚園の先生の話も紹介します。

「はじめ、一番困ったことは、母親からの質問事項や要望に何と応えて書いたらいいのか、分かりませんでした。私は精神心理学など学んだことなどありませんでしたから。でも幸いなことに、この幼稚園事業の支援によって設置された図書館の中で、そのような保護者とのコミュニケーションに関する助言をまとめた書籍を見つけることが出来ました。今、私はそれらの書籍を参考にしながら、メモ欄に記載されている保護者からの質問や要望に対して、返事を書いています。子どもの成長について否定的な言葉を出来るだけ使わず、保護者が育児に対して前向きになるような言葉を選んでいます。
いずれ、それらの書籍がなくとも、自分自身の言葉で書けるようになればいいな、と思っています。」


(連絡帳26-27頁の様子。誕生日お祝いの欄です。担任の先生と保護者からのメッセージを記載できるようになっています。)


(連絡帳32頁は、幼稚園を中心とした家路を書くようになっています。モンゴルの殆どの子どもたちは保護者と歩いて幼稚園に来ます。子どもが保護者と一緒に、幼稚園まで道中の危険な場所や道路の横断の方法など安全を考える機会になれば、と願って連絡帳に入れました。)



(連絡帳最後の頁は、子どもと保護者が先生と自由にコミュニケーションを取る事のできる頁です。写真の連絡帳では、先生への感謝の気持ちを込めた手作りの本が貼られています。)


モンゴルにおいて連絡帳は、私立の幼稚園で導入されているところがわずかにありますが、公立幼稚園では使われておりません。私たちの事業ではまず、日本の連絡帳を参考にしながら、モンゴルの公立幼稚園の習慣に合った連絡帳を開発するところから始めました。3ヵ月後、ようやく幼稚園の先生方に紹介するところまでたどり着きましたが、多くの先生のはじめの反応は業務が増えるという否定的な態度でした。でも、少しずつ説明を重ねた結果、こんなすばらしい活動をしている先生が増えてきたことを、とても嬉しく思っています。

私たちが行っている活動は、子どもの人生を考える時とても小さな貢献にしかなりません。それでも、そんな小さな貢献でも、子どもたちの将来を少しでも良くすることに貢献できるなら、それを信じてがんばっていきたいと思っています。

今後ともご支援のほど、よろしくお願いします。



(第46番幼稚園のある子どもの連絡帳。とてもかわいらしくデコレーションされています。)

(報告:モンゴル事務所 アリ)

*この「子どもにやさしい幼稚園推進」プロジェクトは、外務省・日本NGO連携無償資金協力の助成金により実施されております。

 

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