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モンゴル
(公開日:2024.05.28)

【モンゴル】基礎教育段階におけるインクルーシブ教育推進事業の完了

 
セーブ・ザ・チルドレンは、障害、ジェンダー、言語、宗教、国籍やその他の特徴に関わらず、すべての子どもが参加し、ともに学び、可能性を十分に発揮できるよう、個々の学習のニーズに対応した教育を提供できる環境の実現を目指しています。私たちは、このような教育をインクルーシブ教育と呼んでいます [1]

モンゴルでは、2018年3月から3年間、小学校を対象とした「誰一人取り残さないインクルーシブ教育推進事業」を実施しました。

2021年3月からは、小学校から中学校への移行期に注力した「モンゴルにおける義務教育期間を通した切れ目のないインクルーシブ教育推進事業[2]」を3年間実施しました。2024年3月に、この活動が完了したため、報告します。

この取り組みでは、以下のような活動を実施しました。
● 中学校教職員のインクルーシブ教育に対する理解向上のための能力強化、学校環境の整備 [3]
● 小学校から中学校への指導計画引き継ぎ体制の確立
● 新しく中学校に入学してくる生徒を教職員や在校生が支援するための体制整備
● 保護者や社会に対する啓発活動や、インクルーシブ教育に関する政策提言


 
アルヴァイヘール村にある小学校の授業風景。子どもが主体的に授業に参加できる取り組みが導入されている。(ウブルハンガイ県、2023年11月)

これらの活動によって、対象校でインクルーシブ教育が推進され、保護者や地域社会のインクルーシブ教育に対する理解も広がりました。

例えば、特別なニーズを持つ子どもの指導に使用する個別指導計画を用いて指導する先生の数は、私たちが小学校でのインクルーシブ教育推進に着手した2018年から、2023年までの間に3.7倍になりました[4]

また、生徒会活動を通じた生徒同士のサポート関係の構築にも取り組み、私たちの授業視察でも、生徒会に所属する生徒が、特別なニーズを持つ生徒の横に座り、さりげなくサポートする姿がよく見られました。以下の動画では、対象の第65番学校(ウランバートル市ソンギノハイルハン地区)での生徒会活動の様子を紹介しています。
 


また、「障害のある子どもは特別学校に行くもの」というような意見が、モンゴル国内で未だ根強く存在する中、インクルーシブ教育の考え方を広げるため、テレビやラジオなどの報道やFacebookでのソーシャル・メディア・キャンペーンにも注力して取り組んできました。

YouTube動画もその一環で作成し、ソーシャル・メディア・キャンペーンで拡散しました。約1ヶ月間実施したソーシャル・メディア・キャンペーンでは、発信した記事や動画に対するリーチは、のべ310万7,326人に上りました。

また、私の駐在中、学校視察に行った際、「周りの保護者や学校教職員、その他地域住民の、インクルーシブ教育や障害のある子どもに対する考え方・態度が変わった」と教職員や保護者が主体的に述べる場面によくであいました。

政策提言についても、私たちの事業の注力活動の1つでした。いくら対象校で良い実践が生まれても、それが全国的に広がっていく素地を作らなければ、効果が限定的になってしまうためです。

この中で、個別指導計画や、リソースルームに配備すべき教材・資機材の内容などに関する数々の政策文書の立案・改訂に事業チームが影響を与えてきました。

さらに特筆すべき点として、2023年7月に教育一般法、就学前及び一般教育法が改正され、インクルーシブ教育についての条文が多く盛り込まれました。

これは、もちろん私たちの事業だけの成果ではありませんが、2018年からの6年間、中央・地方の教育行政関係者と密に連携し、政策提言を継続してきたことが、教育科学省内でのインクルーシブ教育に関する注目度の向上に貢献した部分はあるのではないかと思っています。

 
バヤンズルフ地区にある学校の8年生に在籍する、特別なニーズを持つバータルさん(仮名)と、クラスメート。バータルさんは社会貢献活動を積極的に行っている。
(ウランバートル市、2024年1月)


最後に、本事業は皆様からのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力からの支援で実施しました。皆様のご支援がなければ、これらの成果を出すことはできませんでした。改めて心より深くお礼申し上げます。


(海外事業部 プログラム・コーディネーター 松本ふみ)

[1] Inclusive Education Position Paper | Save the Children’s Resource Centre

[2] 本事業の詳細はこちらをご覧ください。【モンゴル 教育支援】中学校でも、すべての子どもが学ぶことができる環境を目指して:インクルーシブ教育推進事業の対象を小学校から中学校にまで拡大(savechildren.or.jp) こちらに記載の通り、モンゴルでは初等中等教育機関が12年制あるいは9年制であり、5年生までが小学生、6-9年生が中学生にあたります。しかし、本ブログでは便宜的に小学生/小学校、中学生/中学校という呼称を用いています。

[3] 学校環境の整備の一環として、リソースルーム(発達支援教室)の配置や機材・教材の配備、バリアフリー化工事(手すり・スロープの設置やトイレのバリアフリー化など)を実施しました。

[4] 事業対象16校のうち、2018年のデータが取得できた6校のみの結果。この6校では、個別指導計画を用いて特別なニーズを持つ子どもを指導する先生の数が、2018年に20人だったところ、2023年には74人に増加しました。


 

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