モンゴル(公開日:2013.02.20)
【遊牧民の子どもたちのための小学校教育プロジェクト(2)】遊牧民の子どもたちの抱える問題〜ウブルハンガイ県支部より(2013.02.20)
こんにちは。サンチェラです。2012年6月に開始した遊牧民の子どもたちの小学校教育を支援するプロジェクトのウブルハンガイ県支部のチームリーダーを務めています。
ウブルハンガイ県は首都から約400Km離れていますが、道路が舗装されているため、6-7時間で着くことのできる大変アクセスのよい県の1つです。人口密度が高いので、一世帯当たりの放牧地が限られ遊牧には向いていない土地柄なのですが、他に産業もないため8割近くの世帯が遊牧民です。そのため、「雪害により自然の牧草がなくなる」といった自然災害の影響を受けやすい県です。加えて、首都へのアクセスが良いことが逆に、首都への移民を容易にしてしまった現状もあります。
今回は、このウブルハンガイ県の子どもたちの抱える問題をお話ししたいと思いす。
ウブルハンガイ県で子どもの問題を1つ挙げるとするならば、「正規の幼稚園に通う子どもが60%にも満たない」ということです。現在およそ7,500人の小学校入学前の子どもがいますが、その内およそ4,300人しか、正規の幼稚園に行っていません。では、3,200人の子どもたちは、全く就学前教育を受けていないのか?というとそう言うわけではありません。多くは、「代替教育(Alternative Education)」に参加しています。
(ウブルハンガイ県の幼稚園の子どもたち)
では、「代替教育」とは何でしょうか?これは、2008年に出された「就学前教育」に関する法律で「正規の幼稚園に通うことができない子どもたちが受ける就学前教育」と規定されている教育システムです。2006年に出された「モンゴル国教育マスタープラン」で、2015年までに99%の子どもが就学前教育を受けるようになることを目指しています。
しかし、この国での最も大きなチャレンジは、大草原を移動し続ける遊牧民世帯の子どもたちに、どのように幼児教育の機会を提供するのか?ということでした。そこで、「モバイル家族にはモバイル教育を!」と、2008年から「モバイル先生」「ゲル幼稚園」が、ユニセフや私たちのようなNGOによって推進され始めました。
「モバイル先生」とは、教科書や教材を片手に、オートバイタクシーをレンタルし、遊牧民家族を1つ1つ訪問してまわる先生です。通常、家族単位で1回1.5時間程度、先生は子どもたちに勉強を教えます。
(「モバイル先生」が子どもたちに勉強を教えている様子)
「ゲル幼稚園」とは、文字通りゲルを建て幼稚園を運営する方法です。通常10-15家族を集めて行われます。軽食・昼食も支給されます。カリキュラムは、1日6時間として21日間(126時間教育)をこなすことを最低の基準として設けています。 周辺に住む子どもたちが両親の馬やオートバイに乗せられて、毎日その期間集まります。周辺といっても20km以上にも及ぶ広範囲から来ることもあります。
(ゲル幼稚園の様子)
(ゲル幼稚園の中の様子)
「モバイル先生」とゲル幼稚園で教える先生は、公立幼稚園の現役の先生です。モンゴルでは、6-8月の3ヶ月、公立幼稚園は夏期休暇で閉鎖されますので、その期間を利用して行うということです。対象の子ども数に応じて、国から予算が下りますが、その金額は微々たるものですので、先生たちにとってはかなり大変な仕事といわざるを得ません。
この代替教育は、当時、小学校に上がる前に教育の機会に全く触れたことのない子どもの数を削減することには、大きく貢献したと思います。それでもやはり、小学校に入学すると、正規の幼稚園に通っていた子どもたちと、遊牧民の子どもたちとの学力の差は、まだまだ顕著です。また遊牧民の子どもたちが学校でいわゆる落ちこぼれとなり退学する事例を分析すると、学力の差が原因というよりも、両親から離れたことによる精神的なショックや、通常は両親によって行われる社会道徳教育を受ける機会が全くなくなったことにより、非行に走り易くなってしまった、という原因の方が多いように感じられます。
ですので、今後次のステップとして必要なのは、小学校に入学するための「子どもの準備」と同時に、「保護者の準備」が必要なのだと思います。例えば、寮に入れた後に親から子への教育をどのように行っていくのか、学校とはどのようにコミュニケーションを取っていくのか、といった具体的な方法を親に提示していくことが重要だと思います。そしてそのような若い保護者たちをサポートするコミュニティーづくりも必要だと考えています。
では最後になりましたが、私のチームスタッフを紹介します。この3人で、ウブルハンガイ支部を運営していきます。今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
(サポートオフィサーのオトゴンチェチェグ:私は家の中でじっとしているのが苦手な子どもでした。男のお祭りと言われているモンゴル国の三大祭の1つ「ナーダム」を初めて見たときの興奮は、今でもよく覚えています。)
(運転手のプレブ)
(報告:モンゴル事務所 サンチェラ )
この事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成金により実施されています。
ウブルハンガイ県は首都から約400Km離れていますが、道路が舗装されているため、6-7時間で着くことのできる大変アクセスのよい県の1つです。人口密度が高いので、一世帯当たりの放牧地が限られ遊牧には向いていない土地柄なのですが、他に産業もないため8割近くの世帯が遊牧民です。そのため、「雪害により自然の牧草がなくなる」といった自然災害の影響を受けやすい県です。加えて、首都へのアクセスが良いことが逆に、首都への移民を容易にしてしまった現状もあります。
今回は、このウブルハンガイ県の子どもたちの抱える問題をお話ししたいと思いす。
ウブルハンガイ県で子どもの問題を1つ挙げるとするならば、「正規の幼稚園に通う子どもが60%にも満たない」ということです。現在およそ7,500人の小学校入学前の子どもがいますが、その内およそ4,300人しか、正規の幼稚園に行っていません。では、3,200人の子どもたちは、全く就学前教育を受けていないのか?というとそう言うわけではありません。多くは、「代替教育(Alternative Education)」に参加しています。
(ウブルハンガイ県の幼稚園の子どもたち)
では、「代替教育」とは何でしょうか?これは、2008年に出された「就学前教育」に関する法律で「正規の幼稚園に通うことができない子どもたちが受ける就学前教育」と規定されている教育システムです。2006年に出された「モンゴル国教育マスタープラン」で、2015年までに99%の子どもが就学前教育を受けるようになることを目指しています。
しかし、この国での最も大きなチャレンジは、大草原を移動し続ける遊牧民世帯の子どもたちに、どのように幼児教育の機会を提供するのか?ということでした。そこで、「モバイル家族にはモバイル教育を!」と、2008年から「モバイル先生」「ゲル幼稚園」が、ユニセフや私たちのようなNGOによって推進され始めました。
「モバイル先生」とは、教科書や教材を片手に、オートバイタクシーをレンタルし、遊牧民家族を1つ1つ訪問してまわる先生です。通常、家族単位で1回1.5時間程度、先生は子どもたちに勉強を教えます。
(「モバイル先生」が子どもたちに勉強を教えている様子)
「ゲル幼稚園」とは、文字通りゲルを建て幼稚園を運営する方法です。通常10-15家族を集めて行われます。軽食・昼食も支給されます。カリキュラムは、1日6時間として21日間(126時間教育)をこなすことを最低の基準として設けています。 周辺に住む子どもたちが両親の馬やオートバイに乗せられて、毎日その期間集まります。周辺といっても20km以上にも及ぶ広範囲から来ることもあります。
(ゲル幼稚園の様子)
(ゲル幼稚園の中の様子)
「モバイル先生」とゲル幼稚園で教える先生は、公立幼稚園の現役の先生です。モンゴルでは、6-8月の3ヶ月、公立幼稚園は夏期休暇で閉鎖されますので、その期間を利用して行うということです。対象の子ども数に応じて、国から予算が下りますが、その金額は微々たるものですので、先生たちにとってはかなり大変な仕事といわざるを得ません。
この代替教育は、当時、小学校に上がる前に教育の機会に全く触れたことのない子どもの数を削減することには、大きく貢献したと思います。それでもやはり、小学校に入学すると、正規の幼稚園に通っていた子どもたちと、遊牧民の子どもたちとの学力の差は、まだまだ顕著です。また遊牧民の子どもたちが学校でいわゆる落ちこぼれとなり退学する事例を分析すると、学力の差が原因というよりも、両親から離れたことによる精神的なショックや、通常は両親によって行われる社会道徳教育を受ける機会が全くなくなったことにより、非行に走り易くなってしまった、という原因の方が多いように感じられます。
ですので、今後次のステップとして必要なのは、小学校に入学するための「子どもの準備」と同時に、「保護者の準備」が必要なのだと思います。例えば、寮に入れた後に親から子への教育をどのように行っていくのか、学校とはどのようにコミュニケーションを取っていくのか、といった具体的な方法を親に提示していくことが重要だと思います。そしてそのような若い保護者たちをサポートするコミュニティーづくりも必要だと考えています。
では最後になりましたが、私のチームスタッフを紹介します。この3人で、ウブルハンガイ支部を運営していきます。今後ともご支援のほどよろしくお願いします。
(サポートオフィサーのオトゴンチェチェグ:私は家の中でじっとしているのが苦手な子どもでした。男のお祭りと言われているモンゴル国の三大祭の1つ「ナーダム」を初めて見たときの興奮は、今でもよく覚えています。)
(運転手のプレブ)
(報告:モンゴル事務所 サンチェラ )
この事業は、世界銀行による「日本社会開発基金(JSDF: Japan Social Development Fund)の助成金により実施されています。