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モンゴル
(公開日:2014.04.28)

【幼稚園プロジェクト(18)】子どもにやさしい先生になるために幼児教育セミナーを開催しました!(2014.04.28)

 
日本の皆さま、こんにちは。モンゴル事務所の柴田です。モンゴルでは、日中、10度を越える日も出てきて、半そでのTシャツで街を歩く若者を見かけるようになりました。

私たちは、モンゴルの公立幼稚園では、子どもの主体性を尊重し年齢にあった適切な教育の場が提供されていないということを問題意識としてもち、事業に取り組んできました。その原因は、国の基準であったり、幼稚園管理であったり、教師の倫理観や保護者とのコミュニケーションであったりと多方面に渡りますが、先生たちによる指導法も主な原因のひとつと考えられます。

今回は、事業を開始した2011年から、この問題を解決するために私たちと共に活動に取り組んで下さった幼児教育専門の高橋生仁子(タカハシ キミコ)さんにお話を聞いてみました。


高橋生仁子さん ©Save the Children Japan

<質問1:モンゴルの幼稚園での指導法において、どんな課題があると思いますか?>

モンゴルの幼稚園では、教えられたことを覚えるという暗記中心の教育方法が主流です。例えば、詩でしたら、その詩を覚えることに焦点が注がれ、その詩の状況を想像して楽しむという事は少ないです。また絵画ですと、先生の見本通りに描かないと「間違っている。出来ていない」と子どもは評価されます。

発表会などがあると、上手に覚えられる子、上手に歌える子だけが参加するという事がよくあります。うまく覚えられない子、自信のない子に対して、「できなくてもいいんだよ、楽しく参加しようね」と声をかけるなど、その子の意欲を伸ばし、少しでも自信を持たせてあげるという働きかけが弱いように感じています。

また例えば、「野菜」というテーマでニンジンを取り上げる場合、3歳の子どもたちには「ニンジンはウサギが好きな食べ物」、「赤色の野菜」、「栄養のあるもの」と文章を暗記するようにして覚えさせます。「ニンジンは、いつ収穫できるかな?どんな風に売られているかな?どんな味かな?どんなふうに食べるとおいしいかな?」と、日常生活の中で、ニンジンがどのようなにでてくるのかといった実体験に基づいた話はありません。また、4-5歳でも、買い物ごっこやお料理ごっこをしてみる、というような理解を深めていくような指導方法は行われません。知的教育が中心で情緒教育が少ないですね。


高橋さんと教材を作成する先生たち © Save the Children Japan

<質問2:その原因は何だと思いますか?>

多くの先生は、教壇に立って指導する先生を見て育っています。自分が受けてきた教育方法を模倣したり、大学や学校で学んだ指導方法を使用したりしているということなんだと思います。日本の幼稚園のビデオ(お茶の水女子大学発行)を見せた時、日本の幼稚園の先生たちが運動靴をはき、子ども達と外で遊んでいて、モンゴルの幼稚園の先生はびっくりしていました。 自分にその経験がなかったからです。子どもと遊ぶということに感心もなかったように思います。
また教育省は最近、「遊びの中で学ぶ」という新しい方針を打ち出しました。しかし先生たちの中には、「遊び=自由」というイメージがあり、「子どもたちが自由に走り回ることで、何を学ばせるの?」と疑問に思っているのではないでしょうか。自由に遊ぶ中でも、仲間同士の規則は学べます。自然科学の発見もあります。おもちゃのメカニズムも学べます。しかし先生たちは、全て、実体験の中ではなく文章を暗記して覚えてきたので、それを理解することが難しいのだと思います。


新聞紙を使って帽子や船をつくる先生たち © Save the Children Japan


<質問3:それらの問題に対して、セーブ・ザ・チルドレンとどのような活動をしましたか?>

2013年から2014年にかけて行った「幼児教育セミナー」はその1つです。合計16回開催しました。その際に、お茶の水女子大学発行の「幼児教育ハンドブック」やそれに付随するビデオを教科書として使いました。たくさんの教材を、先生と一緒に作り紹介しましたが、その内の1つ、モンゴルでも大変有名なお話「大きなかぶ」を使った教材と指導方法を紹介します。

まずは3歳児を対象とした指導方法を紹介します。まず話を理解し、ストーリーを楽しむことが大切となります。子どもが「どうなるのかな?」と身を乗り出して話を聞きたくなるようなペープサート(紙人形劇)という教材を使い、先生には子どもの興味を引くことができるよう話し方も工夫するよう指導しました。


「大きなかぶ」のペープサート ©Kimiko Takahashi
次に4歳児を対象とした指導方法です。4歳児では、色塗り・切る・貼るといった製作活動を行います。そうして、自分の本を作成する経験から自尊心を育てます。またストーリーから、困ったときは互いに手伝うことは大切なんだという社会性も学ベることも紹介しました。


「大きなかぶ」の手作り絵本 ©Kimiko Takahashi
次に5歳児です。5歳になると、グループに分かれて演劇ができる年齢に達していることを話します。演劇を通じて、主人公の気持ちになって表現する楽しみを発見します。また、グループの仲間の意見を聞くこと、そして協力することは大切なんだという社交性も育てることができます。


ペープサートの使い方を説明する高橋さん © Save the Children Japan

全体を通じて強調したことは、「それは間違っています!」という否定的な言葉からは子どもの意欲は引き出せないため、先生の思った通りに子どもができなくても、子どもの気持ちを認めてあげる大切さです。「計画通りに行かないこともあります。立てた計画にこだわらず、その時の子どもの発想を汲み取っていくことで、更なる発想と意欲を引き伸ばしましょう」と話をしました。

これらの指導を通じて、先生たちからは「とても興味深く、面白かった」、「難しく考えすぎてしまっていたが、普段の生活の中に、ネタと材料はあるので、それを取り入れればいいとわかった」、「子どもに自由に過ごす時間を与えること、そして自由に過ごす中にも約束事はあり、それを伝えていくことの大切さを学んだ」、「これからは、動きやすい服装や靴で、子どもたちの遊びに加わりたいと思う」というコメントが聞かれました。

子どもたちの成長を促すための職員指導は、今後も継続して必要だと思います。先生が自分の指導方法に納得し、自信をもって子どもと接することができることで、更に新しい取り組みへと進めるのではないかと期待しています。 私にとっても勉強となる機会を頂き、ありがとうございました。これからも、子どもの生活の場が豊かなものであるよう、活動していきたいと思っています。

(以上、高橋さんのインタビューから)


先生たちに踊りを指導する高橋さん © Save the Children Japan 

さて、文中で触れました「幼児教育ハンドブック」ですが、お茶の水女子大学の許可と、モンゴル国立教育大学の協力を得て、モンゴル語完全翻訳版を1,000部発行し、ハンドブックに付随するDVDもモンゴル語の字幕を挿入し添付しました。これらの教材は、本事業の対象とする幼稚園だけではなく、教育大学、地方や私立の多くの幼稚園から要望を受け、配布され、使われています。


「幼児教育ハンドブック」モンゴル語完全翻訳版�・ Save the Children Japan

高橋さんが運営する「障がいがあることを理由に幼稚園や学校に通うことが出来ずにいる子どもの訪問保育を行う“Sujatashand”」は、以下のホームページで紹介されています。
http://sujatashand.wiki2.jp/


―子どもにやさしい幼稚園推進プロジェクト―
対象地区の幼児(2歳〜5歳)が、「子どもにやさしい」環境を整えた幼稚園において、養護、保護、教育、社会的しつけの要素を含む、包括的な権利基盤型のカリキュラムによる幼児教育を受けられるようになることを目指しています。
事業期間:2011年8月23日〜2014年9月8日
事業分類:【教育支援】
本事業は、外務省NGO連携無償資金協力の助成と、皆様からのご支援を受けて実施しています。

 (報告;モンゴル事務所 柴田)

 

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