日本/東日本大震災/教育(公開日:2012.12.18)
気仙沼向洋高校講演会「夢のある生き方〜限界のふたを外そう〜」パラリンピック日本代表選手・佐藤真海さん(2012.12.19)
「神様は、その人に乗り越えられない試練は与えない」。パラリンピック3大会連続出場を果たした佐藤真海選手は、壇上から気仙沼向洋高校の生徒達に自身を支えてきた言葉を笑顔で伝えました。
気仙沼向洋高校同窓会創設100周年記念講演会の講師として招かれた佐藤さん。地元気仙沼市の出身で、サントリーホールディングス株式会社に所属しています。漁業・水産業・工業を専門に学ぶ同校には、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとサントリーホールディングス株式会社が協働で実施している「サントリー・SCJ水産業復興奨学金」の受給生が多く在籍しており、今年2月に実施された奨学金贈呈式では佐藤さんが受給生達に激励のメッセージを贈りました。今回はその縁で同校が節目の講演会に招待し、佐藤さんにとっては同校の生徒達を訪問する2回目の機会となりました。
佐藤さんは気仙沼の小中学校を卒業し、東京の大学では応援部チアリーダーズで活躍。そんな中、20歳の時に骨肉腫という病気で義足の生活となりました。治療とリハビリを継続する傍ら、陸上競技の走り幅跳びを開始したところめきめきと頭角を現し、パラリンピックに連続出場。アテネで9位、北京で6位、そして2012年のロンドン大会では自己ベストを更新し9位という成績を達成しました。
佐藤さんが大事にしている言葉 記録の変遷を説明する佐藤さん
今回の講演会で佐藤さんは、苦しかった時期から笑顔で記録の更新に挑戦し続けられるようになった自身の経験を交えながら「自分の限界のふたをはずそう。こう考えることで世界を広げていける。だから、皆さんに毎日少しでもチャレンジをしてほしい」というメッセージを伝えました。普段CSR活動で触れ合う子どもたちには「いのちを輝かせようね」といつも伝えているそうです。
最後に、佐藤さんが実際に競技をしている様子が映像で流れると、その力強いジャンプに聴衆席の生徒達から感嘆の声があがりました。
講演終了後、生徒と懇談 先生と生徒達に囲まれて
佐藤さんから気仙沼向洋高校へ贈られた言葉
佐藤さんの講演を受けて1年生の女子生徒は、「お話しを聴いていて、自分だったら途中で絶対挫折していたんじゃないかと思う。佐藤さんは本当にすごいと思います」と感想を伝えました。すると佐藤さんは笑顔で応じ、「いいえ、皆さんも今、その力を育んでいるところですよ」と厳しい部活や仮設校舎での授業に一生懸命に取り組んでいる生徒達を激励。また、「自分は気仙沼で育って本当によかった」と地元への想いをもらしました。気仙沼市は震災により甚大な被害を受けましたが、市民が一丸となって復興へと取り組んでいます。佐藤さんのパラリンピック3大会連続出場の業績は、気仙沼市民に勇気を与えたとして、講演に先立ち気仙沼市役所で菅原茂市長より市民栄誉賞が贈られています。
菅原茂気仙沼市長と市民栄誉賞を贈られた佐藤さん
気仙沼市は全国有数の水揚げ量を誇る漁業・水産業の町。これからの復興には、地域の漁業・水産業・工業を担っていく若い力が必要とされています。佐藤さんは「気仙沼魂」という言葉を使って、復興とより一層活力のある地域づくりを目指す高校生達にエールを送りました。この日播かれた種が高校生達の心の中でゆっくりと、そしてしっかりと実を結んでいくことが期待されます。
「サントリー・SCJ水産業復興奨学金」には、将来地元の水産業を担う生徒の皆さんが学業に明るい未来を見出せること、東北地方に受け継がれてきた豊かな漁業の伝統を未来につなげていく期待が込められています。SCJは、サントリーホールディングス株式会社の支援により、漁業・水産業を志す子どもたちへの支援を継続していきます。
(報告:東日本大震災復興支援事業部 清水)