日本/東日本大震災/教育(公開日:2012.03.16)
「夢に向かって頑張ります!」
〜「キリンSCJ『絆』奨学金」を受給する高校生が卒業〜(2012.3.16)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下SCJ)は、キリングループの支援により、返還義務のない奨学金「キリンSCJ『絆』奨学金」を設立し、岩手県・宮城県・福島県の県立農業高校などに在籍する高校生を対象に、2011年10月31日より奨学金の給付を開始しています。3月1日、南相馬市にある福島県立相馬農業高校にて卒業式が行われ、奨学金を受給している高校3年生67名を含む、79名が母校を巣立ちました。
卒業式では渡邉芳広校長が、「震災後の厳しい勉強環境の中、奨学金など多くの支えがありました。社会に出ても、周囲への感謝の気持ちを常に忘れないでほしい。そしてどんな困難にぶつかっても負けないように、志を高く持ち信念を貫き社会に貢献してくれることを願っています。」と、激励のメッセージを送りました。
それに対し卒業生代表は、「震災後避難を余儀なくされ、皆と離ればなれとなりました。しかし、再び一緒に学校生活を送ることができるようになり、当たり前の生活がどれだけ有り難いか身を持って感じました。学校生活で築いた友人との友情は、かけがえのないものです。」と、学校での思い出を声を詰まらせながら話しました。
各クラスの代表生徒が卒業証書の授与を受けました。
卒業生代表生徒が答辞を述べました。
退場の様子。卒業生にとって学生生活最後の勇姿です。
式の終了後、卒業生の奨学金受給者代表の亀岩郁哉さんとお母様にお話を伺いました。亀岩さんは、ご自宅は兼業農家で在学中は環境緑地科に所属し、希望通り北海道の酪農学園大学へと進学を決めました。
亀岩郁哉さん(右)とお母様
亀岩さんは、「学校生活で思い出深いのは、弓道部の活動です。5人で活動し、団体の全国大会への出場を目指しました。しかし夢は叶いませんでした。弓道部で活動することで精神が鍛えられ、しっかりするようになりました。大学では、農産物の流通に役立つ農業情報処理について学びたいです。そして将来は教員として相馬農業高校に戻り、農業の後継者を育てつつ、弓道部の顧問として生徒たちと一緒に全国大会をもう一度目指したいです。」と、夢を話してくれました。
お母様も、「震災後、農業を続けていけるのか不安でした。農業の収入が減りましたが、農機具購入費など必要なコストは変わらず、経済的に苦しくなりました。そのため、奨学金で学費を補うことができ、とても助かりました。子どもは、震災を通じて逆に成長したと思います。頼もしくなり、男らしくなりました。目の前に津波の海水が流れ込んだ震災当時、家の様々な荷物を進んで持ち出すなど、周囲に気を配れるようになりました。農業を進路として選んだのも、父親の背中を見てきた自然の成り行きだと思います。」
安田修久教頭は、「亀岩くんは成績優秀で、推薦入学で進路を決めました。『相農魂』を持ってこれからも頑張ってほしいです。」と、話されていました。
東日本大震災は、地元の農業にも大きな打撃を与えただけではなく、将来農業を志す高校生たちの教育環境にも大きな困難をもたらしました。「キリンSCJ『絆』奨学金」は、キリングループの「復興応援 キリン絆プロジェクト」活動の一環としてSCJと協働で設立されました。将来、農業を志す生徒の皆さんが学業に明るい未来を見出せること、東北地方に受け継がれてきた豊かな農業を未来につなげていく期待が込められています。SCJはキリングループのご支援によって、子どもたちの支援を継続していきます。
(報告:広報 三輪)
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