日本/東日本大震災/教育(公開日:2014.11.13)
2014年度「おもしろびじゅつ教室in東北」がスタート!@仙台市立東六郷小学校(2014.11.13)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、昨年の2013年 からサントリーホールディングス株式会社が主催する『サントリー&日本工芸会「おもしろびじゅつ教室in東北」』(以下、「おもしろびじゅつ教室in東北」)の運営協力を行っています。
この出張授業は、サントリーグループの東日本大震災復興支援活動「サントリー東北サンさんプロジェクト」の一環として、公益社団法人日本工芸会の特別協力と公益財団法人サントリー芸術財団の運営協力によって実施されているものです。重要無形文化財保持者(人間国宝)をはじめとする一流の伝統工芸作家が被災地の小学校に直接赴き、ものづくりや伝統工芸、日本美術のおもしろさを伝えることで子どもたちの心のいやしと復興への活力に貢献することを願ったプロジェクトです。
■どんなことをするの?誰が来るの?■
今年のスタートを切ったのは仙台市立東六郷小学校。東六郷小学校では漆芸について学び、「地蒔き」を体験します。学校では、伝統工芸作家が学校に訪問する前に、学校の先生からどんなことをするのか、どんな方が来るのかなどについて、事前授業を行っていただきました。漆の歴史や蒔絵の制作工程のDVDを見て漆芸の技法「蒔絵」について学びます。
学校の先生方が、暮らしの中にある漆塗りのお椀などを子どもたちに紹介!
作家や作品の出会いへの期待が膨らみます♪
DVDを真剣にみながら「蒔絵」の技法を真似ている子どもたちもいました!
■作家と作品との出会い■
10月8日(水)は、授業参観日にあたり、東六郷小学校の子どもたちと保護者の方々も一緒に、出張授業に参加しました。蒔絵の人間国宝の室瀬和美先生をはじめ、当日は、現在活躍中の漆芸作家の方々計5名を講師にお迎えしました。はじめに、室瀬先生から「漆」や「蒔絵」についてとても興味深いお話がありました。
「漆」とは「うるし」という木の樹液で、いったん固まると水をはじき、酸やアルカリ、熱にも負けず、腐らず、強い接着力を持つ貴重な塗料。「漆」という漢字の「へん」は「きへん」ではなく水を表す「さんずい」で、「つくり」は「木に傷をつけて水が出る」という意味の組み合わせなのだそうです。「サンズイ」のついている木の漢字は「漆」だけ。昔から「樹液と採る木」として使われてきたのですね。みなさんご存知でしたか?
室瀬先生のお話の後はいよいよ体験実習がスタート!
最初に、蒔絵の文様に見立てた菊の型紙をスプレー糊で黒の手板に貼り付けます。型紙の文様は、国宝「浮線綾螺鈿蒔絵手箱」(サントリー美術館所蔵)の蓋裏の文様からとったものです。
講師の方々に教えていただきながら、それぞれ好きな場所に型紙を貼り付けていきます。
型紙を貼り付けた後は、文様の背景に筆で「蜜蛇油(みつだあぶら)を塗っていきます。今回は漆の代わりに「蜜蛇油」を使用しました。
子どもたちも保護者の方々も真剣そのものです。全体に均一に塗るのはなかなか難しいのですが、講師の先生方が一人ひとりに丁寧に指導して下さいます。
そして、いよいよ蒔絵の技法「地蒔き」の挑戦です!今回は金粉の代わりに「真鍮粉」(しんちゅうこ)を使用します。「粉筒」(ふんづつ)を使って、トントンと指でたたいて文様をよけながら真鍮粉を蒔いていきます。
講師の先生方の指導を受けながら、事前授業のDVDで見た蒔絵の方法も思い出しつつ挑戦!
キラキラした金の粉が蒔かれた作品。とても綺麗で上手にできました!
〜子どもの声〜
・金粉がどばっと出ないように少しずつ強くした。きれいに落とせたからうれしかった。うるしの字をおぼえた。
・わたしは、漆芸のことを知らなくてこの前先生から聞いた時初めて知りました。先生のお話も分かりやすかったです。なかなかできないことだったのですごく勉強になりました。蒔絵の授業も楽しかったです。
・楽しかったことはたくさんあります。特に油を広めるところです。理由は油がきれいにぬれて楽しいなと思ったからです。「漆」という字は木にきずをつけたら水がでてくるからさんずいになったと言っていたのがびっくりしました。
〜保護者の声〜
・どんな事をするのだろう…と参加させていただきました。蒔絵という物は何度も耳にしたことはありましたが、詳しく知りませんでした。今回の授業で体験させていただきましてとても良くわかりました。普段経験することが出来ない貴重な経験をすることが出来てとても楽しかったです。ありがとうございました。
・先生のお話がためになり興味深くもっともっと蒔絵のことを知ってみたいと思いました。ふだんなら手に取る機会もないでしょうし、それを体験できるということは、とてもすばらしいことです。日本の伝統のすごさ、あらためて日本人に生まれてよかったと思います。自然の力。私達はうけとめていかなくてはならないですね。失ったものより、あたえられているものの多さをもっと学んだり知っていくことも必要だと思いました。心がゆたかになる時間をありがとうございました。改めて心より感謝します。
〜学校の先生の声〜
「保護者・子ども・教員が、活動を通して同じ時間を共有できたことで、これから会話がたくさん弾むのではないかと思います。とってもすてきな時間をありがとうございました」
やさしく指導して下さる人間国宝の室瀬和美先生。(撮影:加藤英明)
子どもたちや保護者の方々、学校の先生にとって今回の貴重な体験の数々が、日本の美術やものづくり、伝統工芸について理解を深め、おもしろく「漆芸」体験授業をしていただけたのではないでしょうか。今後は、岩手県・宮城県・福島県の3県の6か所で「おもしろびじゅつ教室 in 東北」を実施します。次回は「金工」の授業の様子をお伝えします。お楽しみに!!
(報告:仙台事務所 菅原絵美)