日本/東日本大震災/教育(公開日:2013.12.19)
フリーカップをキャンバスに。~おもしろびじゅつ教室in東北@東松島市、石巻市(2013.12.20)
「伝統工芸ってなんだろう?」
日本には陶芸、染織、漆芸、金工、木竹工といった様々な伝統工芸がありますが、日常からは少し離れているように感じるかもしれませんが、東松島市立赤井小学校4年1組のある子は、「家で使っている茶碗!」と答えました。そう、日常使いのお茶碗は、「陶芸」に当てはまりますね。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、サントリーホールディングス株式会社が主催する宮城県東松島市立赤井小学校、石巻市立向陽小学校で開催された『サントリー&日本工芸会「おもしろびじゅつ教室in東北」』(以下、「おもしろびじゅつ教室in東北」)に運営協力しました。この出張授業は、公益社団法人 日本工芸会と公益社団法人 サントリー芸術財団の運営協力によって実施、著名な工芸作家の方々を講師に招き、作家との交流や作品の鑑賞、ワークショップなどを通じて、被災地の子どもたちに日本美術や伝統工芸のおもしろさ、ものづくりの楽しさや喜びを感じてもらうことで、子どもたちの心が日常性を回復していけるよう貢献することを目的としたものです。
■東松島市立赤井小学校
11月7日(木)、今回「おもしろびじゅつ教室in東北」が開催されたのは、東松島市にある赤井小学校。4年1組の子どもたちが思い思いのデザインをフリーカップに描きます。
描くといっても筆を使ったり、釉薬を使ったりという方法ではなく、赤・青・黄・緑・黒の5色の転写シートを、子どもたち一人ひとりが考えたデザインで切り貼りしていき、自分だけのオリジナルカップを作る授業です。
今回、工芸会の第一線で活躍されている3名の陶芸作家の方々を講師にお迎えしました。
前列左から 小山耕一 先生、前田正博 先生、佐藤典克 先生
陶芸の製作工程に触れる機会が少ない子どもたちのために、ろくろと粘土を用意していただき、小山先生が実際に子どもたちの目の前で湯呑茶わんを作ってくれました。
「ごはんを食べる茶碗とかもこうやってできるんだよ」と小山先生
子どもたちも興味津々です!!
出張授業に先立ち、小学校では事前授業を行い、子どもたちはこの日のためにデザインを考えていました。5色ある転写シートを最大限に使って、様々なかたちに切り取ります。
前田先生のレクチャーも真剣に聞いています。
切り取った転写シートを水に浸してから、白磁のフリーカップに貼っていきます。濡れているのでツルツル滑ってしまい、子どもたちは苦戦していました。
講師の先生方は子どもたちがつくっている様子を見て回り、優しくアドバイスをしてくれていました。滅多にない機会に子どもたちも熱心にアドバイスを聞いていました。
転写シートを貼って、こどもたちが考えた様々なデザインが出来上がりました! ただ、まだ完成ではないのです。転写シートを焼きつけるために陶器を焼く作業が残っていますが、残念ながら学校には窯がないので子どもたちの作業はここまで。このあと全員分のオリジナルカップは前田先生の工房に送り、前田先生に焼き上げていただきました。今頃はもう子どもたちの手もとに届き、自分がつくったオリジナルカップで何か飲んだり、飾ったりしていることでしょう。
■向陽小学校
11月8日(金)、前日に続き「おもしろびじゅつ教室in東北」を開催するため、講師の先生方もさらに4名お越しいただき、石巻市にある向陽小学校を訪ねました。参加するのは6年1組、2組、3組の子どもたちです。
6年生となると、事前に準備した下書きもとても細かく丁寧なデザインになっていますね。下書き通りにデザインする子、切り貼りを失敗しながらも上手に修正してデザインする子。そんな時も、講師の先生方は子どもたちの声に耳を傾け、子どもたちが考えるデザインに近づけられるようにアドバイスしていました。
子どもたちからは、「デザインをするのは難しかったけど、出来上がりが楽しみ」「いつか湯呑やお皿をつくってみたい」「陶芸に使う道具の名前や使い方、焼く回数や温度等勉強になった」という嬉しい感想がたくさんありました。
「もっとやりたい! 来週も来てくれないんですか?」?2時間続きの授業でしたが、子どもたちはとても集中していて、本当に短く感じたようでした。ひとつのフリーカップをキャンバスに、子どもたちが思い思いのデザインを描くことができ、図工の時間とは一味違う貴重な体験が出来ました。
(仙台事務所:早坂貴文)