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日本/東日本大震災/教育
(公開日:2013.03.15)

「キリンSCJ『絆』奨学金」第2期受給生が学び舎を巣立つ(2013.3.15)

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下SCJ)は、キリングループのご支援により、返還義務のない奨学金『キリンSCJ『絆』奨学金』を設立し、岩手県・宮城県・福島県の県立農業高校などに在籍する高校生を対象に、2011年10月31日より奨学金の給付を開始しています。3月1日、宮城県農業高校、福島県立相馬農業高校、福島県立磐城農業高校にて、卒業生が母校を巣立ちました。
そのうち、第2期奨学金受給生は、宮城県農業高校では46名、相馬農業高校では52名、磐城農業高校では15名が卒業しました。当日は3校の卒業式に参加させて頂き、代表の奨学金受給生にお話を聞きました。卒業後の将来の夢や社会人となる意気込み、高校生活の思い出などを是非ご覧ください。

■宮城県農業高校
◎熊谷 雪路(くまがい ゆきじ)さん
在学中は馬術部に所属し、授業の実習を通じて学んだ酪農の知識や技術を活かして、
馬の世話に励んだ。これを契機に馬に関わる進路を模索し、北海道の競走馬を育成する
企業に就職が決まった。



Q. 震災の影響で仮設校舎で授業が行われていますが、学校生活はどうでしたか?
教室が足りなかったので、大変でした。特に農業系の実習をする時には、以前は
学校の近くに実習場があったのですが、仮設校舎は、元の校舎から離れた宮城県農業・園芸総合研究所の敷地内に作られたため、歩いて実習場に行くのが大変でした。
Q.仮設校舎での学校生活で一番の思い出は何ですか?
いろいろな方々からのご支援を受け、支えられているんだなあと感じ、とても
ありがたく思いました。中でも、宮農祭での他校とのふれあいでそれを感じました。
Q.宮農祭ではどんなことをしましたか?
自分たちで栽培した野菜の販売を担当しました。1年生の時には販売実習があり、震災で被害を受けた閖上地区まで一輪車に野菜を載せて売りに行きました。地元の人たちとふれあえたのが、良い思い出です。
Q.高校進学時に、どうして宮城県農業高校を進路として選んだのですか?
馬が好きで、小学校6年の春から乗馬を始めました。そのため、馬術部のある学校を
進路にしたいと考えていました。宮城県内では、仙台育英高校、東北高校にも馬術部
がありますが、宮城県農業高校が一番強かったので、進路として決めました。
Q.農業高校に入ってのイメージはどうでしたか?
生き物を相手にするので、やっぱり大変だなあと思いました。夏でも冬でも早朝の作業
があるし、春と夏の休業中でも決められた日に実習がありました。でも、卒業を迎えた今は、入学して本当に良かったと思っています。
Q.卒業後の進路と夢は何ですか?
競走馬のサラブレットを育成する企業に就職することが決まり、北海道で働きます。
大好きな馬に関われる仕事なので、立派なサラブレットを育成できるよう、頑張り
たいです。将来、自分が育成に関わったサラブレットが、競馬の大きなレースに
出てくれたら嬉しいです。

■福島県立相馬農業高校
◎蒔田 幸大(まきた ゆきひろ)さん

実家は専業農家であったが、震災で家や農地が大きな被害を受け、使用不能となった。会津地方に避難していたが、サテライト授業再開とともに相双地区へ戻る。震災後、農業クラブ活動に積極的に参加し、意見発表で県大会、農業鑑定競技で全国大会に出場している。東京農業大学短期大学部に進学して造園を学ぶ。将来は地元に戻り、造園の技術を活かして復興に貢献したいと考えている。



Q.学校生活で一番印象に残っていることは何ですか?
文化祭が一番楽しかったです。農業クラブの校内活動では、復興活動の一つとして、
花のモニュメントを作成しました。また、農業クラブ全国大会の農業鑑定協議に出場し、農業に関する知識や技能を競いました。例えば、水にささった枝を見て樹木名を
答える問題が出題されていました。
Q.全国大会に参加してどうだったですか?
他の学校の生徒と意見交換や交流ができて良かったです。各学校により、実習の内容が
異なっていて、自分の学校ではできないこと、例えば重機を専門的に学ぶ学校がある
など、農業を学ぶ高校でもいろいろあることがわかりました。
Q.造園を目指したきっかけは何ですか?
昔から庭の木の枝切りが好きでしたし、校庭の木の上に登って遊んでいたので、自然と
造園に関わる仕事をできればと思いました。当初は進学をせずに一日も早く地元の
復興に携わりたかったのですが、高校生活で様々な体験をしながら色々と考えていくうちに、しっかり勉強をした後に復興に貢献しようと思うようになりました。
Q.将来の復興の具体案はありますか?
人々を津波の被害から守り、しかも自然と共存できて、人間の手があまりかからないような防潮林をつくりたいと思います。日本には防潮林が数多くありますが、その多くは廃れています。次世代の防潮林は、人の手があまりかからないようなものにしたいと思います。南相馬には野馬追などの伝統行事も伝わり、良いところも沢山あります。自然が多い田舎としての復興を進めたいと思います。

■福島県立磐城農業高校
◎物井 恵太(ものい けいた)さん
緑地土木科に在籍。在学中は所属するバスケットボール部の活動に熱心に取り組み、
練習や大会で活躍した。チームの中で最も信頼が厚く、エース的な存在となった。
また、授業では実習の一環であるインターンシップに参加し、地元企業での就業体験をした。


Q.高校生活はどうでしたか?
クラスに男子が多く、行事ごとに盛り上がったので、すごく楽しかったです。
バスケ部を3年間続けられたのも、奨学金のおかげです。練習着を奨学金で買わせて
もらい、大変助かった。
Q.高校生活で一番印象に残っていることは何ですか?
一番の思い出は、3年生の球技大会です。2年生の時は震災でできませんでした。
3年生の球技大会は、全種目一位になることを目指して頑張りました。全種目一位に
なることはできずとても悔しかったが、みんなで団結してやれたのでとても良い
思い出になりました。
Q.進路と将来の夢は何ですか?
地元のガソリンスタンドで働きます。その経験を活かし将来は、お客さんに信頼して
もらえるような車の整備士になりたいです。県外に出るということは、今のところ
考えていません。地元に残り、福島県内で車の整備士を目指します。
Q.農業高校に入学して、農業に対する印象が変わりましたか?
農業高校に入学する前は、農業というと畑仕事のような土をいじる仕事だけだと
思っていました。実際に高校で農業について勉強するとそれだけじゃなく、道路の測量
も勉強できて、農業について学ぶ範囲が想像以上に広いと思いました。この3年間で、
農業に対する見方が広がりました。

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東日本大震災は、東北地方の農業にも大きな打撃を与えただけではなく、将来農業を志す高校生たちの教育環境にも大きな困難をもたらしました。そのような状況を受け、「キリンSCJ『絆』奨学金」は、キリングループの「復興支援 キリン絆プロジェクト」活動の一環としてSCJと協働で設立されました。将来、農業を志す生徒の皆さんが学業に明るい未来を見出せること、東北地方に受け継がれてきた豊かな農業を未来につなげていくことに期待が込められています。今後も継続して「キリンSCJ『絆』奨学金」は、農業を志す生徒さんのサポートを行ってまいります。

(報告:広報 三輪 喜則)


 

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