日本/東日本大震災/教育(公開日:2013.09.13)
自分たちで考えた商品を販売してみよう!〜相馬農業高校で経営・マーケティング授業を実施〜(2013.9.13)
最近、よく見かけるようになった「産地直売」、「道の駅」、「マルシェ」など、気軽においしくて安全な農産物や農産物を使った商品を購入できるようになりましたね。命の源、食を扱う農業は大切な産業のひとつ。そんな農業がさかんな福島で、農業を学ぶ高校生向けに、「自分たちが作った農産物をどう売るの?」「農産物を使った新しい商品を考えてみよう」「売れ筋商品に値段をつけてみよう」などなど、“農業のその先”を考える授業を、企業の経営やマーケティングにアドバイスをしている、アクセンチュア株式会社の皆さんとともに実施しました。
相馬農業高校食品流通コースの皆さん。アクセンチュア株式会社とセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2013年4月から、農業高校生を対象にした人材育成支援事業を協働で行っています。
多くの方々がご存じのように、東日本大震災と原発事故により、南相馬市をはじめとした東北の被災地では、農業・水産業などの第一次産業に大きな打撃を受けました。この様な背景を受け、アクセンチュア株式会社とSCJは協働で、福島県立相馬農業高校食品科学科食品流通コースの生徒12名を対象に、経営やマーケティングの授業を行っています。これは、打撃を受けた第一次産業の復興と農業の未来を担う高校生の皆さんを育成することが目的です。このプログラムは年間を通して行われ、相馬農業高校で10月に行われる「相農ショップ」と呼ばれる販売実習で、高校生たちが自ら考えた新商品を売り出すことをゴールにしています。商品企画・事業計画・販売・決算の一連の流れを学ぶことで、高校生達がより深く経営やマーケティングについて理解することができるように構成されていて、学生の皆さんがどんな新しい商品を作るのか、私たちもとてもわくわくしています!
今回は、この事業の1学期の授業内容をご紹介したいと思います。
★商品企画★
第1回目の授業では、まず4人ずつのグループ分けから始まりました。実はこのグループ、ただのグループではありません。彼らはこれから、協力して商品を開発・販売していく一つの“会社”として活動します。話合いの結果「Amosimanim」「Bands」「クワドリフォリオ」という3つの会社が誕生し、各社の中で社長・財務部長・商品部長・販売部長という役職も決めました。みんな早速「社長!」と役職名で呼びかけあっていました。
早速自分たちが売り出す商品の開発に取り組み始めた生徒たちは、色々なジャンルですでに売られている人気商品のアイディア発想の仕方を参考にしながら、個性あふれるオリジナル商品のアイディアを出せるだけ出していきます。「クッキーふりかけ」「フランスパンアンパン」「ご飯にかけるぶどうジャム」など、ワクワクするようなとてもユニークなアイディアがたくさん出てきました。
困った時には、講師や学校の先生からアドバイスをもらいます。
マーケティングについて考えるとき、「お客さんはどんな商品を買いたいと思っているのだろう?」という視点を持つことはとても大切です。第2回目の授業では、『より売れる商品ってどんな商品?』ということについてみんなで考えます。
そこで、今までの「相農ショップ」での売れ筋商品と、お客さんのデータを改めて見てみました。すると、生徒たちからこんな気づきの声が聞こえてきました。
「あんぱんが売れ筋だから、似ている商品を作ろう!」
「子連れの人もいるから、子どもにも売れるように、遊びの要素を入れよう!」
「年齢層が高いから、健康志向の人にも売れるように、野菜を入れよう!」
今まで何気なく関わってきた「相農ショップ」の中に、新発見がたくさんあったようです!
これらの気づきをふまえて、自分たちの商品の「セールスポイント」を決めた生徒たちは、いよいよ商品を生産・販売するための計画づくりに取り組みます。
自分たちの考えた商品をさらに売れるものにするためにセールスポイントを考えます。
★事業計画★
商品を作るには、商品を作ってくれる人の人件費、よりおいしい商品をつくるために試行錯誤をするためのテスト生産費など、原材料の費用以外にもいろいろなお金がかかります。第3・4回の授業では、生徒たちが、自分たちの考えた商品を生産・販売するのにどれくらいお金がかかるかを計算します。そして、計算した結果(=原価)と自分たちの商品の「付加価値」を合わせて、それぞれの商品をいくらで売るかを決めていきます。
「いくらなら買ってくれるかなあ?」仲間と話合い、似ている商品の値段や、事前に別の回の相農ショップで行った商品価格についてのアンケートも参考にして、自分たちの考えた商品の値段を決めます!
★伝わる資料の作り方・帳簿の付け方★
これまで生徒たちは、頑張って商品の生産・販売について計画を立ててきました。
9月に行われる計画発表の授業では、会社ごとにみんなの前で、自分たちの商品についての発表を行います。せっかく一生懸命考えた商品ですから、聞いてもらう人に分かりやすく内容を伝えたいですよね。そこで、第5回の授業では、生徒達に“言いたいことが伝わる資料の作り方”の授業が行われました。
まずは紙の上で資料作成。分かりやすい資料作りって案外難しい。。。!
このあと、パワーポイントでの資料作成の仕方を教わりました。
そして一学期最後、第6回の授業では、夏休みの商品のテスト生産に向けて、夏休みの計画の立て方と、使ったお金の管理をするために帳簿の付け方を学びました。
いよいよ10月24日の相農ショップにて、各社以下の新商品販売に向けて具体的に動き始めます。どれも名前を聞いただけでおいしそうな商品ばかりで、出来上がりがとてもたのしみですね!
★Amosimanim 「キャロットクッキー」
★Bands 「パンプキンまんじゅう」
★クワドリフォリオ 「手づクリずんだパン」
相馬農業高校で行われているこのプログラムは、9月の計画発表、10月の新商品販売、11月の決算と2学期も続いて行きます。わたしたちは、食品科学科食品流通コースのみなさんの活躍を、引き続きご報告していきたいと思います。
(報告:会津若松事務所 望月)