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日本/東日本大震災/教育
(公開日:2014.03.25)

「キリンSCJ『絆』奨学金」第3期受給生が卒業(2014.3.25)

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下、SCJ)は、キリングループのご支援により、返還義務のない奨学金「キリンSCJ『絆』奨学金」を設立し、岩手県・宮城県・福島県の県立農業高校に在籍する高校生を対象に、2011年10月より奨学金の給付を実施しています。
この春、宮城県立亘理高校、福島県立相馬農業高校にて、卒業生が母校を巣立ちました。そのうち、卒業した第3期奨学金受給生は、宮城県立亘理高校は19名、福島県立相馬農業高校38名です。当日は2校の卒業式に参加させて頂き、代表の奨学金受給生にお話を聞きました。卒業後の将来の夢や、社会人となる意気込み、高校生活の思い出などをぜひご覧ください。

■宮城県立亘理高校
◎橋爪真樹さん(食品化学科)


Q.高校生活はどうでしたか?
演劇部の活動が一番楽しかったです。記憶に残っている配役は、おばあちゃんの役。この時は、県大会で良い成績を収めました。方言のなまり言葉を習得することや、どれくらい腰を曲げればおばあちゃんに見えるかなど、演技をする工夫を自分でいろいろ考えました。
Q. 高校生活で一番印象に残っていることは何ですか?
震災直後、入学式が遅れて、このまま入学できないかと不安でした。入学後、授業が始まっても体育館や実習室が使えなくて苦しい思いをしました。
Q.卒業後の進路は何ですか?なぜ、その進路を希望したのですか?
仙台にある、スイーツ&カフェ専門学校に進学します。農業クラブの意見発表会に参加した時、人の力、農業の楽しさについて実感しました。もっと自分の専門を伸ばしたいと思い、進学をしようと思いました。
Q.社会に出た後、どのような将来の夢を持っていますか?
学校ではフードコーディネーターの資格を取ろうと思っています。将来は、地元の荒浜に自分のお店を出して、お菓子を売りたいです。

◎小野和洋さん(普通科 園芸コース)


Q.高校生活はどうでしたか?
毎日が楽しく、充実した学校生活でした。3年生で行った、課題研究では、サツマイモを種から育て、米ぬかを使用した生育を研究しました。結果は甘み・旨味が増し、美味しく食べることができました。
Q. 高校生活で一番印象に残っていることは何ですか?
1年生の時です。震災の影響で入学が遅れ不安でした。体育館も避難所に使われていましたが、自分も被災者だったので、体育館が使えない制限があっても仕方ない、マイナスには感じませんでした。大変だったのですが、今では良い思い出です。失ったものより、得たものの方が多かったと思います。
Q.卒業後の進路は何ですか?なぜ、その進路を希望したのですか?
地元の精米企業に就職します。少しは、学校で習ったことを生かせると思ったので志望しました。
Q.社会に出た後、どのような将来の夢を持っていますか?
仲間と草野球チームを作りたいです。就職後も仲間を増やしたいと思っています。

■福島県立相馬農業高校
◎亀田祥平さん(生産環境科 作物班)


Q.生産環境科はどのような学科ですか?
畜産や野菜の栽培等を学べる学科です。作物班では本来であれば、田んぼで稲作をしていましたが、震災で使用できなくなり、ジャガイモ、サツマイモなどのイモ類、エダマメ等のマメ科の植物の栽培をしていました。
Q.枝豆の栽培の工夫は?
発芽したばかりの時に、土をはずして、芽に直接日光を当てる発育方法を試しました。結果、根の量が増え、ハウス栽培や露地栽培のものと比較し研究しました。収穫はたくさん出来て、駅近辺や駅のお店の人達に直接販売したり、相農ショップで販売したりしました。
Q.一番楽しかったことは?
枝豆を収穫して、食べた時の美味しさを感じられたことです。また、中学から続けてきた柔道です。震災直後は、相馬高校と合同で練習をしていて、胴着を用意するのも大変でした。
Q.卒業後の進路を教えてください?
自分が出来る事をやりたいです。できれば、地域農業の復興に貢献していと思います。本当は一度進学した後にと思っていたのですが、すぐにでも貢献したいと思い農業協同組合(JA)に就職しました。
Q.夢を教えてください?
地元の小高区で農業を再開したいです。父と一緒に農業をやりたかったのですが、米、野菜があと3〜4年は収穫できないようなので諦めました。JAに就職できて一安心しました。

東日本大震災は、東北地方の農業にも大きな打撃を与えただけではなく、将来農業を志す高校生たちの教育環境にも大きな困難をもたらしました。そのような背景から、将来農業を志す生徒の皆さんが学業に明るい未来を見出せること、東北地方に受け継がれてきた豊かな農業を未来につなげていくことに期待を込めて設立されたのが、「キリンSCJ『絆』奨学金」です。

「キリンSCJ『絆』奨学金」は、震災が発生した2011年当時1年生であった3年生が卒業する2013年度で、一区切りとさせて頂きます。これまで多くの奨学金受給生が、この奨学金を学びや将来の目標達成のため、活用して頂きました。

卒業した受給生は、体育館や実習室が避難所となりなかなか使用することができず、様々な制限が強いられる高校生活を送ってきました。そのような中で、「震災で失ったものより、得たものの方が多かった」と話してくれる受給生など、震災に負けず将来の目標に向かって歩む受給生の高校生活を側面からサポートできたことは、大きな喜びです。今後も、卒業という節目をゴールとするのではなく、新たなスタート地点として、夢や希望に向かい力強く前に進んでいくことを奨学金事務局一同、願っています。

(報告:広報 三輪 喜則)


 

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