日本/東日本大震災/教育(公開日:2013.03.10)
福島県立いわき海星高校 甲子園出場決定
「元気でプレーしている姿をぜひ見てほしい」(2013.3.13)
「自分たちに支援してくださった人は数えきれない。甲子園で元気にプレーしている姿をぜひ見てもらいたい」。福島県立いわき海星高校の野球部のメンバーは力強く話してくれました。
第85回春の選抜高校野球大会に21世紀枠で出場が決まった福島県立いわき海星高校野球部。同校はセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンとサントリーホールディングス株式会社が協働で実施している「サントリー・SCJ水産業復興奨学金」の対象校です。被災した沿岸部の漁業・水産業の復興をサポートするために設立された本奨学金。福島県で唯一の水産・海洋系高校である同校でも多くの生徒が受給しています。
いわき海星高校の野球部員の皆さんメンバー16名中4人が受給生です
いわき海星高校は小名浜港から車で5分ほど。校舎の窓からは雄大な海の風景が広がります。しかし東日本大震災では大規模な津波被害を受け、海側にある実習棟や体育館が大破、校舎も海水が1階部分まで達し使用不能になりました。野球部が使用していたグラウンドにも砂や瓦礫が流れ込んだため、現在、瓦礫の破片を取り除いた上で嵩上げの整備作業が行われています。
この整備事業でグラウンドの大部分には杭が打たれ、野球部の練習は一部のスペースしか使用できません。このため隣接する砂浜へ向けてボールを打ち上げフライキャッチの練習したり、壁が流されビニールシートで覆った実習棟の中でバッティング練習をしたりするなど、決して恵まれた練習環境とは言えません。
砂浜での練習と整備中のグラウンド
そんな厳しい環境の中でも野球部は工夫しながら懸命に練習に励んでいます。若林亨監督や齋藤道雄野球部長を始め、同校の先生方が少しでも練習環境を改善しようと漁網や廃材を利用して必要な機材を手作りし、限られた条件の中でも甲子園に向けて準備を重ねる選手たちを支えます。漁網を利用したネットや廃材を溶接した筋力トレーニングの機材など、一見手作りとは思えない設備を作り出す技術は専門高校ならではです。
ビニールシートで覆った実習棟の中でのバッティング練習ネットは漁網を改造したもの
齋藤道雄野球部長(左)と若林亨監督(右) 厳しく温かく選手たちを見守ります
「厳しい環境で練習している分、メンタル面は強くなりました。いただいたいろいろな支援や、廃材から練習機材を作ってくれた監督や先生たちに感謝しています」。「支援してもらって今があると思います。地元の方たちからも応援してもらっているし、家が流されてしまってまだ大変な人もいるので、その方たちの分まで甲子園で頑張って闘ってきたいです」。復興に向けて懸命な取り組みを続けているいわき市民の皆さんもメンバーたちにエールを送っています。
プレーヤー16人、マネージャー2人の計18名。「ここぞという時に団結力があり、ばらばらにはなりません」 ほぼ全員が地元出身で、普段から仲のよいチームです。
「サントリー・SCJ水産業復興奨学金」には、将来地元の漁業・水産業を担う生徒の皆さんが学業に明るい未来を見出せること、東北地方に受け継がれてきた豊かな水産業の伝統を未来につなげていく期待が込められています。SCJは、サントリーホールディングス株式会社の支援により、漁業・水産業を志す高校生たちへの支援を継続していきます。
(報告:東日本大震災復興支援事業部 清水)