日本/東日本大震災/子どもの保護(公開日:2012.10.23)
気仙沼の子どものための「cadocco」づくり推進事業(2012.10.23)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(以下:SCJ)は宮城県気仙沼市にある南町柏崎青年会(以下:青年会)とともに南町仮設商店街の一角に子どもが遊び、学び、成長するための安全で保護的な環境づくりを進めています。青年会とSCJの活動の始まりは、震災後、半年経った2011年9月頃に遡ります。
気仙沼市は、仙台市内から車で約2時間半の県の北東端に位置し、太平洋に面した港町です。その良港であった気仙沼湾周辺の港町も、東日本大震災の影響を大きく受けました。この地域では、震災以前より文化・伝統芸能活動が盛んで、10団体以上のブラスバンドや子ども太鼓クラブがありました。こうした太鼓やジャズといった文化・伝統芸能活動は、子どもたちの大切な日常の一部であり、また住民も地域の文化・伝統芸能を継承する活動として誇りを持ち推奨していました。しかし震災の影響により、半数以上の団体の文化・伝統芸能活動が中止となりました。また、公共施設や学校は津波による被害で使えない状況となり、十分な練習場所も確保できなくなりました。
震災後、南町商店街は青年会を中心に仮設店舗を立ち上げ、町の再建を始めました。そしてその一角に、子どもの文化・伝統芸能活動のためのスペースを確保しました。ところが、この建物は津波の影響で使用不可能となっており、修繕が必要な状況でした。気仙沼の人々にとって、町づくりとは商店街の再建だけでなく、気仙沼の文化・伝統芸能を守る活動を再開することです。この施設の設立は、文化・伝統芸能活動の再開を通じ、未来を担う子どもの教育へ寄与するだけなく、子どもを地域の中心に据えた再建により町に活気が取り戻されると考えられることから、SCJは建物の修繕をお手伝いすることとなりました。
こうして修繕を終えた2011年12月末に、「cadocco」はオープンしました。現在までのべ2,500人を超える子どもたちが利用しています。オープン以来、子どもたちはダンスや演劇の練習を再開しました。また、市内外の外部講師がcadoccoに訪れ、気仙沼の子どもたちを対象としたアートや工作を楽しむワークショップ等を開催しています。このような諸活動は「市内外の外部団体との交流を深めることが、再建に不可欠」という青年会の考えに由来しています。そして特に予定された活動がない時間帯には、子どもたちは自由に出入りし、cadoccoで思いのままに過ごすことができます。
青年会会長の坂本氏は「これからは、cadoccoでの様々な体験の機会を増やし、子どもたちの新しい発見の場としていきたい」と、お話して下さいました。まだまだ以前のように練習や活動を再開できていない子どもたちの団体がありますが、今後たくさんの子どもたちがcadoccoを利用することが期待されています。
上記の実現を目指し、SCJと青年会の協働事業が今年7月に開始しました。その第一歩として、cadoccoが中長期的に子どもの活動拠点として運営を続けられるよう、組織基盤強化の研修を今月から始めています。運営を維持・発展させていくためには、cadocco設立の意義や目的を広く伝え、寄付を募ったり、公民の補助や助成を申請したり、物品販売やサービス提供をしたりするなど、運営資金を持続的・安定的に確保など、ファンドレイジングを中心に強化する必要があります。第1回の研修では、将来的な活動の核となるべきミッションやビジョン(cadoccoを通して伝えたいメッセージ)を再確認することから始めました。この他、子どもが安心・安全に過ごせる環境づくりのための研修等も、随時実施していく予定です。
本協働事業では、まだ知らない人たちへも日々の活動からcadoccoの良さやその可能性が理解され、地域交流や子どもたちの文化・伝統芸能の活動拠点としてcadoccoが町の中心に存在し続けるだけでなく、子どもたちが遊び、学び、成長する日常のなかで、新しい発見の場となることを目指していきます。今後も青年会の方と共に考え、気仙沼市内外の多くの人たちに共感・応援していただける活動へと成長できるよう、SCJも努力していく計画です。
(報告:仙台事務所 阿部里佳子)