日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2018.11.01)
東北沿岸部における、経済的に困難な状況下の子育て世帯への調査結果発表−保護者の約7割が就学援助制度の周知方法、増額等へ要望−
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困問題解決への取り組みの一環として2018年春に実施した「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2018〜」*の受給世帯へのアンケート調査結果を発表しました。
本調査は、東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部において、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の現状、および子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握することを目的に実施し、その結果、以下5点が明らかになりました。(有効回答数:371件)
*経済的困窮に関する一定の条件を満たす岩手県山田町、宮城県石巻市の新小学生・新中学生・新高校生415人(383世帯)に、新入学に伴う制服・運動着の購入費用の一部を支給
これらの結果を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもの権利を保障するために、教育費をはじめとした子どもに関する公的支出を増やしていくことを中長期的に求めるほか、喫緊に対応すべき課題として、関係省庁や地方自治体が速やかに以下の対策を講じるよう提言しています。
<調査概要>
【調査の目的】
子どもの貧困という社会問題の中で、東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部において、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の現状、および子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握すること。また、子どもの貧困対策の充実に向け、本調査結果を社会啓発および国、地方自治体に対する政策提言につなげること。
【主な調査内容】
世帯の状況、震災前と過去1年の間の生活の状況、経済的困窮が及ぼす子どもの生活への影響、就学援助制度の利用状況と改善点、経済的に困難な状況下にある子どもや保護者に必要な支援について。
【調査の実施状況】
・調査地域:岩手県山田町、宮城県石巻市
・調査対象:「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2018〜」受給世帯(新小学1年生、新中学1年生、新高校1年生合計383世帯)の保護者
・調査方法:受給世帯に対し、アンケートを郵送し、自記式にて任意回答の上、郵便で返送
・回収期間:2018年1月23日〜2018年5月20日
・有効回答数:371件(回答率96.9%)
・調査結果レポート(全文)はこちら: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201811.pdf
※本調査は2016年、2017年に続いて3回目の実施
2016年の調査結果: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201612.pdf
2017年の調査結果: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201711.pdf
【「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2018〜」について】
【地域】岩手県山田町、宮城県石巻市
【時期】2018年1月〜4月
【対象者】本キャンペーン申請時および2018年4月以降に山田町もしくは石巻市内に在住し(住民票住所が山田町・石巻市内)、2018年4月に小・中学校や高校に進学予定で、次のいずれかにあてはまる世帯の子ども
?生活保護を受けている世帯
?生活保護が過去1年以内に停止または廃止された世帯
?保護者(ふたり親家庭の場合父母双方)の市町民税が非課税の世帯
?児童扶養手当の支給を受けている世帯
【内容】制服・運動着の購入費用の一部として、小学生上限1万円、中学生上限4万円、高校生上限5万円を支給
【受給者数】415人(383世帯)
<本調査結果を受けての今後の活動>
セーブ・ザ・チルドレンは、経済的に困難な状況下の家庭の子どもたちへ給付金を提供すると同時に、子どもの貧困対策の充実に向け、経済的に困難な状況下にある子どもや保護者の実態把握のための調査やシンポジウムの開催を通じた社会啓発、国・地方自治体に対する政策提言を引き続き実施していきます。
2018年夏には、宮城県石巻市在住の高校生に対し、経済的に困難な状況下にある高校生を対象とした「給付型緊急子どもサポート 〜高校生活応援キャンペーン〜」を行い、新入学応援キャンペーンと同様の方法で、受給世帯の高校生と保護者向けにアンケート調査を実施しました。2018年末を目途に調査結果を報告します。
また、東北地域では、来春、小中学校や高校へ入学する子どもたちを対象に、制服・運動着の購入費用の一部を給付する、「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2019〜」を継続予定です。さらに、2017年の調査結果を受けて実施している、ひとり親家庭の保護者に対するセミナーやひとり親家庭の子どもに対するレクリエーション活動の機会提供や、就学援助制度の利用促進およびさらなる充実に向けた周知や申請方法等の改善、就学援助の支給内容や金額の拡充等に関する社会啓発イベントや政策提言も引き続き行っていく予定です。
<セーブ・ザ・チルドレンの日本の子どもの貧困問題解決への取り組み>
セーブ・ザ・チルドレンは、2010年から日本の子どもの貧困問題解決への取り組みを開始し、現在、1)経済的に困難な状況下にある子どもや養育者への直接支援、2)子どもの貧困対策充実に向けた世論形成のための社会啓発、3)子どもの貧困問題に関する政策・施策のより良い整備に向けた政策提言という3つの柱をもとに、活動しています。
「給付型緊急子どもサポート」は、直接支援の一環として、東日本大震災発生直後から2015年末まで約5年にわたり実施してきた緊急・復興支援事業の知見・経験、行政や地域とのネットワークを生かし、東北地方沿岸部で実施すると同時に、熊本県においても、熊本地震復興支援の一環として実施しています。2018年は10月末までに、東北では874人、熊本では826人に給付金を通じて支援を届けました。
本調査は、東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部において、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の現状、および子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握することを目的に実施し、その結果、以下5点が明らかになりました。(有効回答数:371件)
*経済的困窮に関する一定の条件を満たす岩手県山田町、宮城県石巻市の新小学生・新中学生・新高校生415人(383世帯)に、新入学に伴う制服・運動着の購入費用の一部を支給
- 1.本調査において、過去1年の間で「赤字で、借金して生活」「赤字で、貯金をとりくずしている」と回答した世帯が212世帯存在した。そのうち、東日本大震災前は赤字でなかったが、過去1年の間は赤字だった世帯が135世帯(63.7%)である。また、そもそも震災前に赤字であった世帯が74世帯(34.9%)存在していることがわかった。
- 2.家庭の経済的困窮が子どもの生活へ及ぼす影響は多岐にわたり、子どもの成長に必要不可欠な医療へのアクセス、学校生活や学校外の活動への参加、進学機会にも負の影響があることが確認された。
- 3.本調査に回答した371世帯のうち、就学援助制度を利用していたのは282世帯(76.0%)であった。同制度の利用有無にかかわらず271世帯(73.0%)が「就学援助制度を利用するにあたって、改善してほしい点」があると回答した。また、「利用していない」「わからない」と回答した42世帯のうち、15世帯(35.7%)が「就学援助制度を知らなかった」と回答した。また、就学援助制度の利用が必要と考えられるにもかかわらず、「周囲の目が気になったため」という理由で利用していない世帯が存在することがわかった。
- 4.本調査に回答した世帯は、ひとり親家庭が316世帯(85.2%)、ふたり親家庭が48世帯(12.9%)であり、その回答からひとり親家庭だけでなくふたり親家庭も、経済的に困難な状況に置かれていることが確認できた。
- 5.本調査を通して、経済的に困難な状況下の子育て世帯において、保護者に対する支援として経済的支援が、子どもに対する支援として、子どもの学習や居場所、多様な活動への参加の機会を保障する支援が必要とされていることがわかった。
これらの結果を受け、セーブ・ザ・チルドレンは、すべての子どもの権利を保障するために、教育費をはじめとした子どもに関する公的支出を増やしていくことを中長期的に求めるほか、喫緊に対応すべき課題として、関係省庁や地方自治体が速やかに以下の対策を講じるよう提言しています。
- ■提言1:全国すべての自治体で公的支援を必要とする子育て世帯が安心して就学援助制度を利用できるよう周知や申請方法の先駆的な取り組みを参考に対策を講じるべきである。
- ■提言2:全国すべての自治体で、就学援助制度の準要保護児童生徒に対して、新入学児童生徒学用品費の入学前支給・増額がなされ、国・自治体で 就学援助制度全体の予算引き上げ、 支給対象費目追加などが実施、検討されるべきである。
- ■提言3:高校生に対しても、新入学に伴う費用の軽減や入学前支給が実施されるべきである。
- ■提言4:ひとり親家庭や生活保護世帯のみならず、経済的困窮を抱えるふたり親家庭の子どもたちへの経済的支援も講ずるべきである。
<調査概要>
【調査の目的】
子どもの貧困という社会問題の中で、東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部において、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の現状、および子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握すること。また、子どもの貧困対策の充実に向け、本調査結果を社会啓発および国、地方自治体に対する政策提言につなげること。
【主な調査内容】
世帯の状況、震災前と過去1年の間の生活の状況、経済的困窮が及ぼす子どもの生活への影響、就学援助制度の利用状況と改善点、経済的に困難な状況下にある子どもや保護者に必要な支援について。
【調査の実施状況】
・調査地域:岩手県山田町、宮城県石巻市
・調査対象:「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2018〜」受給世帯(新小学1年生、新中学1年生、新高校1年生合計383世帯)の保護者
・調査方法:受給世帯に対し、アンケートを郵送し、自記式にて任意回答の上、郵便で返送
・回収期間:2018年1月23日〜2018年5月20日
・有効回答数:371件(回答率96.9%)
・調査結果レポート(全文)はこちら: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201811.pdf
※本調査は2016年、2017年に続いて3回目の実施
2016年の調査結果: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201612.pdf
2017年の調査結果: http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201711.pdf
【「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2018〜」について】
【地域】岩手県山田町、宮城県石巻市
【時期】2018年1月〜4月
【対象者】本キャンペーン申請時および2018年4月以降に山田町もしくは石巻市内に在住し(住民票住所が山田町・石巻市内)、2018年4月に小・中学校や高校に進学予定で、次のいずれかにあてはまる世帯の子ども
?生活保護を受けている世帯
?生活保護が過去1年以内に停止または廃止された世帯
?保護者(ふたり親家庭の場合父母双方)の市町民税が非課税の世帯
?児童扶養手当の支給を受けている世帯
【内容】制服・運動着の購入費用の一部として、小学生上限1万円、中学生上限4万円、高校生上限5万円を支給
【受給者数】415人(383世帯)
<本調査結果を受けての今後の活動>
セーブ・ザ・チルドレンは、経済的に困難な状況下の家庭の子どもたちへ給付金を提供すると同時に、子どもの貧困対策の充実に向け、経済的に困難な状況下にある子どもや保護者の実態把握のための調査やシンポジウムの開催を通じた社会啓発、国・地方自治体に対する政策提言を引き続き実施していきます。
2018年夏には、宮城県石巻市在住の高校生に対し、経済的に困難な状況下にある高校生を対象とした「給付型緊急子どもサポート 〜高校生活応援キャンペーン〜」を行い、新入学応援キャンペーンと同様の方法で、受給世帯の高校生と保護者向けにアンケート調査を実施しました。2018年末を目途に調査結果を報告します。
また、東北地域では、来春、小中学校や高校へ入学する子どもたちを対象に、制服・運動着の購入費用の一部を給付する、「給付型緊急子どもサポート 〜新入学応援キャンペーン2019〜」を継続予定です。さらに、2017年の調査結果を受けて実施している、ひとり親家庭の保護者に対するセミナーやひとり親家庭の子どもに対するレクリエーション活動の機会提供や、就学援助制度の利用促進およびさらなる充実に向けた周知や申請方法等の改善、就学援助の支給内容や金額の拡充等に関する社会啓発イベントや政策提言も引き続き行っていく予定です。
<セーブ・ザ・チルドレンの日本の子どもの貧困問題解決への取り組み>
セーブ・ザ・チルドレンは、2010年から日本の子どもの貧困問題解決への取り組みを開始し、現在、1)経済的に困難な状況下にある子どもや養育者への直接支援、2)子どもの貧困対策充実に向けた世論形成のための社会啓発、3)子どもの貧困問題に関する政策・施策のより良い整備に向けた政策提言という3つの柱をもとに、活動しています。
「給付型緊急子どもサポート」は、直接支援の一環として、東日本大震災発生直後から2015年末まで約5年にわたり実施してきた緊急・復興支援事業の知見・経験、行政や地域とのネットワークを生かし、東北地方沿岸部で実施すると同時に、熊本県においても、熊本地震復興支援の一環として実施しています。2018年は10月末までに、東北では874人、熊本では826人に給付金を通じて支援を届けました。